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俺は千彰との関係を朱音たちに話していった。


「俺が千彰と始めて会ったのは中学3年の始業式の日で、同じクラスになったんだよ。その午後に、春奈姉さんと千彰のお姉さんの十香とおかさんに改めて引き合わされたの。話してみて気が合ってさ、それから千彰と一緒にいるようになったんだ。成績も似たり寄ったりで自然と高校も同じところを受けたんだ。合格して3年間一緒に過ごしたよ。高3になる時におじさん達に言われたことで進学か就職か迷った時に、千彰は俺の夢を応援してくれたんだ。俺のやりたいことはなんだって言ってくれて、俺の背中を押してくれたんだよ」


俺は千彰と過ごした日々を思い出して目を細めた。


「千彰は大学で真琴の双子の兄である司と親しくなったんだよ。司の家は割合大学に近くて、遊びに行くようになったんだって。そして真琴さんと会って一目惚れしたって言ってた。それまでゲームなんてやったことなかったのに、真琴さんと話したいがためにゲームをやりこんだりしたんだよ」


千彰が必死になって真琴さんに合わせようとしていた時のことが思い出されて、自然と笑みがこぼれた。


「実はさ、千彰が告白して真琴さんにつき合うのをOKして貰ったという話を、聞いてるんだ」

「うそ~! あれのどこがつき合っているになるのよ~」

「本当よ、昴さん。全然甘くないじゃない、あの二人」


俺の言葉に朱音が不満そうに声を上げた。野崎さんまで・・・。まあ、確かにそうだよね。


「一応理由があるけど知りたいかな?」

「もちろんよ、昴君」


朱音、食いつき良過ぎだよ。だけど、会社内でフォローを頼むなら理由を話しておいた方がいいよね。・・・千彰も真琴さんも怒らないよね?


「俺が聞いているのは真琴さんの20歳の誕生日にデートして告白したんだってことなんだ。だけど初めてのお酒に酔った真琴さんが醜態を晒して、翌日には告白自体を忘れてしまったんだって」

「まこちゃんが~? 嘘だ~。だって、昴君。まこちゃん、飲み会の時に潰れたことないのよ。酔いつぶれた人の面倒を見たりしているのよ」


ああ~。そうだろううね。真琴さんや千彰からも聞いているものな~。


「まあ、ねえ。そう思うよね。だけど実は真琴さんはお酒に弱いんだ。ビールをコップに1杯飲んだだけで酔うって聞いてるよ」


俺の言葉に朱音と野崎さんが絶句して顔を見合わせた。


「そんなに森崎はお酒に弱かったのか」

「らしいよ」

「えっ? でも・・・」

「えー、続き話していいかな? 朱音」


混乱してブツブツ呟きだした朱音に声を掛けた。ハッと気がついた朱音が頷いた。


「まあ、信じられない気持ちはわかるよ。俺も一度真琴さん家で飲んだ時の彼女の様子を見てなきゃ、何のジョークだと思ったもん」

「・・・まこちゃん家に行ったの、昴君」

「朱音、俺は森崎家で開かれたゲーム大会に参加しただけだから。その後、千彰と一緒に迅さんと司と飲んだの。その時に真琴さんがビール飲んでフニャフニャになったのを見ただけだから」


朱音が少し不満そうに俺のことを見ている。そんなに信用ないの。俺って?


「ちょっと信じがたいけどそう言うってことは、昴さんはしっかりしている真琴のことも見ているのよね」

「もちろん。大学の仲間の飲み会に参加させてもらったことあるよ。その時は見事に仕切っていたよね」


俺の言葉に野崎さんは朱音の顔を見つめた。朱音も眉間にしわを寄せて考えているようだ。


「あのさ、話しが進まなくなるから真琴さんのギャップについては後で考えてくれないかな。でね、その後も何度か千彰が告白しているけど、その度に真琴さんは忘れちゃうんだよね。お酒が入るせいで。あまりに忘れられるもんで千彰が意地になっちゃって、告白して酒を飲み次の日に忘れられる、っていうパターンをこの4年繰り返しているんだ」


俺の言葉に三人が呆れた視線を向けてきた。うん、俺も呆れたもん。酒さえ飲まなきゃ今頃うまくいってるのに。


「でさ~、これは千彰の事情なわけ。真琴さんにも素直に告白を受け入れられない理由があるんだよね」

「「ハァ~?」」

「なんで昴君がまこちゃんの理由を知っているの?」


三人の疑問は最もだよね。


「真琴さんからも相談を受けたのさ。最初の醜態のせいで素直になれないけどどうしたらいいのかって」

「・・・いつ」

「ん~? 最初の告白から半年くらいだったかな? その時はまさか4年も拗れると思わなかったから、告白されたらお酒を飲まないで、翌日から恋人としてつきあったらって言ったんだよ」


俺の言葉に三人は溜め息を吐いた。


「なんか見えてきたかも。福沢君はお酒を飲んだ後でも覚えていてほしくて・・・」

「まこちゃんはお酒を飲まないで翌日を迎えたかったと・・・」

「それで、お互いに意地を張り合ってあの状態なわけなんだな」

「まあ、そういうこと」


今度は俺も含めて四人で溜め息を吐いた。


「ねえ、でも真琴が晒した醜態って何なの。・・・待って、真琴は覚えているのね」

「そうだよ。最初の日のことが恥ずかしくて忘れた振りしてんの」

「そんな忘れたくなる醜態って何なの?」

「ま、まさか、まこちゃんのほうが福沢君を襲ったとか?」


朱音? なんでそんな楽しそうに言うのかな?


「違うよ。それだったらとっくに二人は籍をいれてるから」

「なあ~んだ」


つまらなそうにしないの、朱音。


「えーと、その、20歳の誕生日って言ったじゃん。お酒を飲むのも初体験で・・・ビール一杯で酔うとは思わなかったから、ワインやカクテルを何杯か飲んだらしくてね。結果酔いつぶれて千彰の部屋に連れて行ったそうだけど、タクシーに揺られたせいか、部屋に着いたらリバースしたんだって」


そう言ったら「あー、飲みすぎた時にはあるよなー」という声と頷きが返ってきた。


「なんかまこちゃんらしいというか・・・」

「福沢君に同情するというか・・・」


なんか微妙な空気が流れているよな・・・。


「事情はわかった。昴、福沢が自分でどうにかするって言ってるのなら、見守っていればいいんだな」

「うん。だけど、さっきも言った通り金曜日にプロポーズするつもりらしいから、真琴さんが逃げださないように見張ってあげて欲しいかな」

「それだけでいいの?」

「余計なことをすると上手くいくものも行かなくなっちゃうよ」


俺の言葉に三人は頷いた。その後、宏司兄さんと野崎さんは合同での挙式を考えておいてくれと言って帰って行ったのだった。


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