第15話
ヴェスタ家当主ライズ・ヴェスタ。
六歳の時両親を亡くし、親戚を回りまわって、祖父であるヴェスタ家前当主ファラドに引き取られる。
人形師としての成績は群を抜いていて、若くして軍隊長まで上り詰めた男。
パサッ、と音を立てて机にその資料が投げられた。
暗い部屋の木の上に、白い紙は静かに横たわる。
「サーファ。」
「はい。」
「ライズの両親が亡くなった原因が報告されていない。」
深い青のローブを揺らして窓辺に近寄ったその男は静かに言った。
その言葉に真っ黒のスーツの男はその背を眼に焼き付けるほどに見つめて答える。
「それなのですが。・・・原因不明となっておりまして。」
「原因不明だと。」
「家は焼き払われ、そこにいたのは母親の死体と、その隣で立っていたライズ様、それから父親の死体。そして、人形だそうです。」
「・・・人形。」
「はい。家が焼けた理由も、ライズ様の両親を殺したのが誰かもはっきりしていません。」
青いローブは揺れることなく、その男はずっと窓の外を見ていた。
「お前はどう思う。」
「何がですか。」
「誰が殺ったと思う。」
「・・・。一応、それとなく調べた結果ですが。」
「何だ。」
「そこに残っていた人形以外の人形の仕業かと。」
「つまり、人形に殺された、と?」
「はい。」
窓の向こうの景色に映るのは広い屋敷の芝生ばかり。
鳥の姿は男の眼には映らなかった。いや、その空さえ映っていなかったのかもしれない。
「リーク様。」
「・・・」
「貴方はそれを知ってどうするおつもりですか。」
「どう、とは?」
「・・・もしやヴェスタ家に、と。」
「はっ。俺がそんな馬鹿に見えるか?」
バサッと重い音が風を起こし、男はスーツの男に笑って見せた。
眼の色が蒼い、蒼き風遣いの名を持つ男。
「いえ、そんな!」
「サーファ。俺は計画を邪魔する奴を減らしたい。それだけだ。」
「ライズ様が、その壁になると?」
「いや。もしかすると、」
「?」
ギィと古びた音を立て、椅子は回る。
「追い風となるのではないか、と。」
白い紙にはライズについて細かく報告されていた。
そしてそれと同時にライズの作った『L』の存在について。そのメンバー一人ひとりの詳細なデータが綴られている。
あのパーティーの日、ライズと初めて会った後リークはライズに興味を持った。
翌日、その後すぐに人形が屋敷に襲いこんだのをたった一人で収めたと聞き、より一層興味をそそった。
―――コンコン”
「誰だ。」
「ミーナです。」
「何だ。」
「ロッカの街はずれで、人形達が現れました。」
壁にかけられていた青い球がカタカタと揺れた。
リークはそれを見て、サーファに眼を配らせ無言の指示を送ると球を腰にくくりつけた。
サーファは扉を開き、そこに立っていた女に馬の準備を伝えリークのために扉を引いた。
「・・・邪魔をするものは全て潰し、必要な者は力を持って繋ぎとめる。それがシャンベルシュ家のやり方だ。」
「はい。」
深蒼のローブには金の大鳥が優雅に舞う。
そのローブを見つめ、サーファはローブを劣らせるほど優雅で美しい男の後をついて行くのだった。




