権能
△ 権能 ▽
「ドラゴン?いやワイバーンか……」
数体のベルセルクを丸のみにしている。
ベルセルクに町を襲わせて、死骸を捕食していたのだろう。
「しかし、本当にワイバーンなのか?ドラゴンの様な破壊力じゃないか。それともドラゴンは更に凄いのか?捕食そのものも、そんなに暴食ではないはずだが」
そんな事を考えていると、更に二体舞い降りて数体のベルセルクを捕食する。
「そうか数がいるのか」
【占術師】を召喚して、能力を感知させた。
すると、どの個体も、能力の平均値は100くらいある。
防御力だけやや低く80くらいだった。
その中で【身体改造】という項目があり、能力を二割向上させているようだ。
「当然ではあるが、野生ではないな」
北に向かい駆け出す、後何体いるか分からない。
しかし、奴らを倒さなければ、一向にこの町を取り戻す事はできない。
延焼により、酸素の薄くなった北側の地区。
走っている中で呼吸は苦しくなり、肺がやけてしまいそうだ。
「それでもーー!」
気合とともに、火を吐いたワイバーンへ、攻撃を加える。
よろけて、バランスを崩す。
すかさず、腹部に蹴りを、顎に拳の一撃を決める。
「やれるか?」
そう考えた瞬間、他の二体のブレスが迫り【転移門】で回避する。
俺の立っていた所は、レンガの焦げる匂いを発しながら、黒く焦げあがっていた。
「ギャーー!ギギアアア」
攻撃を加えたワイバーンが苦しみだした。
俺の攻撃は、確かに有効打であったが、絶命させるまでには至らなかった。
違う何かで苦しんでいるようだ。
首輪が紅く輝いていた。
遠くで待機している【占術師】に様子を見てもらうと、【薬物投与・活性剤レベル5】
とういう項目が増えており、その能力値を250%増加されている。
「くそっ!」
【虚空門】
羽を狙って動きを止めようとしたが、マナの被膜により、【虚空門】は発動前に霧散する。
恐らく跳ね上がった魔力抵抗によって、阻まれてしまったのか。
物理防御にはめっぽう強い【虚空門】だが、魔術である以上魔力抵抗には勝てないのか。
ワイバーンの尻尾での反撃。
見えなかった。
そして、本当に幸運だったようで、直撃はしなかった。
しかし、衝撃波だけで、俺は遠く吹き飛ばされてしまった。
衝撃のダメージと、壁に激突したダメージで、生命力がごっそり持っていかれた。
直撃していたら、絶命していた可能性もある。
怒り狂ったワイバーンは、仲間を食いちぎってしまう。
首から鮮血を振りまいて、丁度首輪付近を食われているので、他の仲間たちは、投薬されなかった。生命力がある程度の値になった時、投薬される仕組みなのだろう。
あさっての方向へブレスを放つ。
先ほどの閃光以上の光を発して、その炎の色が青みがかっていた。
家を焼き払い、ベルセルクたちも多くが焼却された。
「怪獣映画でも見てる気分だ」
召喚したクーたちを戻す。
さすがに勝機はないか。
【投擲士】
【共感覚】
【転移門】
【氷結瓶・高濃度】
マナを最大限に使用する。
背後に転移させる。
薬の投与をされたワイバーンは、背後の影に気が付かない。
瓶を投げつける。
効果は抜群のようだ、しかし威力が足りない。
ワイバーンの足から氷結が始まる。
ダメ押しだ。
ソーマを四本飲み干す。能力値25パーセント低下。
【転移門】
【氷結瓶・高濃度】
マナを最大限に使用する。
【転移門】
背後に回り込み、投げつける。
羽から氷結しだす。
【武術家】
【共感覚】
連撃をワイバーンにお見舞いする。
「うぉおおおぉぉぉおおおぉ!」
獣の様な咆哮で、ワイバーンを殴り続ける。
ワイバーンの呻きが、空を木霊する。
氷結による固定。
反撃する事も上手くできず、サンドバッグ状態になっている。
拳からは、殴りすぎて血が流れている。
それでも痛みより、ワイバーンを沈める事に集中しており、殴る事を優先している。
思考は血の様に固まり、黒く変色する。
殺せ!自分自身に仇をなすものを、やられる前に、やってしまえ!
しかし、氷結していない口から、ブレス攻撃を仕掛けてくる。
こちらも、直撃はしなかったが、熱が服を燃やす。
面は焦げあがり、視界を妨げることから、途中で捨てる。
熱い皮膚が焼けあがり、体の一部を溶かす。
激痛が走る。
悶絶しながら、地面を転がる。
「あああががあぁぁ」
痛い、痛い、痛い。
誰だ!俺を苦痛へ落とす奴は、憎い、憎い。
俺を苦しめるものは、消してしまえ!
痛覚が鈍感になっていく、重い微睡が、自分の目の前に現れて、意識を飲み込もうとするその闇は、あらゆる感覚を奪う。
残されたこれは、なんなんだろう?
「お……教えてくれ……俺はどうして、ここにいる?」
そして、最後の閃光が目に焼き付く、自分の存在が消えるのを感じる。
マナへ帰る。
その感覚が本物だったのかさえ疑問であるが……。
神の消滅。
無力の罪がまた東の地を血で染めた。
ある社の巫女は、その命の最後に、自分の死では無く。
愛した者の死を悼み、その涙が、彼から貰った小瓶を潤したと伝わる。
その身はマナへと還元され、小瓶は淡く緑に光り消え去ったという。
――そして、軍神の進撃は続き、各国は戦火に巻き込まれた。
次第に弱小国家は統合を果たし、帝国を築いていった。
各帝国は戦力保持の為、召喚を行い異世界から男子を呼びだし、子を増やす事により、自国の戦力を整えた。
いつしか、強い神は、各帝国で崇められ、逆に、弱い神は、忘れ去られていった。
ワイバーンごときにやられる主人公でした。




