女神リクシエール
△ 女神リクシエール ▽
ベルセルクの軍は、取りあえずは、先日壊滅させた町に滞在している模様。
戦闘後は、皆抜け殻の様に動かない。
どうやら、再度戦えるようになるまで、インターバルが必要なようだ。
一体のクーを配置させて動向を探らせている。
簡易的な家を建築させる部隊と、周辺の村や町に、クーを派遣する。
その地域に伝わる知名度の高い神や、それにまつわる場所を文献で探し、その周辺の村や町にどのように神の伝承が残っているのか調べる。
周辺地域に、英雄や有力者を導く女神の伝承があり、商売や戦争に行く若者に人気であり、多くの信徒がいる。出世。女神の名前は、リクシエール。最大勢力を誇っているが、最近は新興勢力のパルソニという男神に勢力を奪われているようだ。パルソニは軍神、常勝不敗、支配、貪欲。今回、町に攻め込んできた軍隊も、彼の男神の信仰者たちの様だ。
岩戸に訪ねてきた神の情報は得られなかったが、仕方がない。
男神の情報を得られただけでもいい。
それに勢力を侵食されている女神とコンタクトをとってみるのも良いだろう。
帝都アムステルダム。
【転移門】を使ってもクーではそこまでいく事ができない。
少し社を開けるのは不安だが、俺が行かなければならないだろう。
また外にでるのか……。
ルカを呼び出す。
「少し社を空ける。ルナや周りには気取られないように頼む」
「分かりました。お気を付けて」
物分かりの良い娘だ。
社の事は彼女に全て任せた。
【転移門】の連続発動により、半日で帝都まで到着した。
人がいっぱいいるので、夜になってから城壁を超える事にした。
昼のうちに、クーを潜入させて、帝都の全体像を把握しておこう。
皇帝が住まう宮殿が真ん中に配置されており、その周辺を貴族が住む地区、それから商人や下級の兵士がすむ商業地区、一般人が住む居住区に分かれており、それぞれに壁が設けられている。
また、帝都の周りは、堀になっており防御力の高さをうかがわせる。
四か所からしか入る事ができず。それぞれに門番が数十人配置されている。
多くの物資や人が流れている。活気があるようだ。
夕方をむかえると、日没を合図に城門はしまり、桟橋は上げられる。
帝都を囲む壁の上に、篝火がたかれ、門番が巡回している。
昼間にクーに探索させてあったので、帝都の内部の構造は理解していた。
宮殿のすぐ傍らに、控えめなレンガ造りの教会だろうか。建物があった。
【転移門】でその教会前まで飛ぶ。
教会には鍵が掛かっておらず、木戸のギシギシという軋みと共に、開ける事ができた。
下駄で歩くと、カランコロンという音が内部に響きわたる。
祭壇のようなものがあり、蝋燭で、女神をかたどった像を神秘的に照らしている。
兜を傍らに、槍を携えた甲冑姿の像は、まるでワルキューレの様な勇ましさを感じた。
ロングヘアで美しい顔立ちだ。
少し見とれてしいまった。
「どうじゃ。工芸家が、あまりに美化して作ったせいで、儂が帝都を散策していても、誰も気づいてもらえぬのじゃ」
その声は像の裏から聞こえ、声の主が現れる。
像ほどの身長は無いが、非常に顔と体のバランスがよく、決してただのチビではない。
しかも像は、西洋風の女性で作られているが、東洋顔の女である。
髪も黒く少しだけ赤みの入った色、バレッタで後ろでまとめている。
確かに像とは、大分感じが違う。ただ、かわいらしく、時折見せる表情によっては、像より神々しく感じる。
「いや、今の君の方がかわいいかな」
少しあっけにとられていたが、すぐに表情を戻し、笑う。
「いいよるわ」
「俺がきた理由を説明しようか?」
「よい、パルソニの動きが活発化しておるのじゃろう。今日も多くの者が報告にきたようじゃからな。して、儂に何を望むのじゃ?」
「まずは、俺は東に社を構えている。パルソニの攻撃を抑える代わりに、攻め込まないでほしい」
意外な顔でこちらを見やる。
「用心深いのう。既に儂を味方と判断して、物資や力を請求してくると思って居ったが、前提の確認からかのう」
「性分でね」
「よかろう。主の勢力の拡大も含め認めよう。ただし、西方への武力的な進出があった場合は、儂も全力で答えざる負えない事は肝に銘じるのじゃ」
「分かった。それとパルソニとは、どんな神なのだ?」
「軍神、今回は、狂戦士を各地に派遣しているようだが、どうやら【人体改造】が彼の権能のようじゃ。強化人間もしくは魔獣を送りこんできておる」
「成程分かった。軍備は整えなければならないな」
「帝都からも人を派遣できなくはないがのう。各地でこのような事が起きているので、限りはなるが……」
「必要ない。ただし、俺が敗れるようであれば、民の救援だけは依頼したい。難民の受け入れレベルでいい」
「援軍を出すことまで要求せんとは、どこまで無欲なのじゃ?それとも、民はどうでもよいのか?あるいは、自信があるのか?」
「自信かな?」
「慢心の神め。お主の世界のネトゲとは違うのじゃぞ」
驚く俺をよそに、少し楽しそうに笑う。
「君何者だ」




