帰還
△ 帰還 ▽
「これで奴らからの不当な要求はされなくなるだろう。しかし、汝らについても、我からすると童の敵にあたる。どんな理由があるかわ知らぬが、彼女たちの扱いをよしとは思わないからだ。なぜ、遠ざけている?」
村長が恐怖に慄きながら、自分の心臓をおさえる。
「そ、それは、彼女たちが忌子だからでございます。忌子の特徴は、その眼にでます。まだ、ルナは発現しておりませんが、姉のルカについては、すでに瞳にその兆候がでております。紅に輝くのでございます」
忌子とは、魔人と人のハーフをさすのだ。
姉妹の母親は、『鬼』だったらしく、姉妹を産んだ時は正体を知られていなかったが、二年前盗賊の集団が村を襲った際、男衆として駆り出された夫が殺されると、怒りのあまり、正体を曝してしまった。
その後は、残党を含め一人で、多くの盗賊を倒して回っていたようだが、道半ばで力尽きてしまったらしい。
そのため、村の英雄の子供であるが、忌子である姉妹の取扱いに困っていた。
そこで、新興勢力(有力盗賊が、母親の手で刈り取られたため)であるガルムが、女と金を寄越す事を条件に、村には手を出さないと言ってきたので、多数決の形で、ルカを差し出す事にした。いい厄介払いができると思ったのだ。
多数決は、既に裏で根回しをしていたのだろう。
幸か不幸か、ルカは非常に美しい娘であったので、その役回りにはピッタリだったのだろう。
「それでは、これからはその必要もないのだな?」
「ええ……しかし、忌子が子を宿すのは非常に不吉ですので、どうかお社様のお力で孕めぬ体にしてもらえないだろうか?」
「魔族との子供とは共存できないということなのか?」
「まあ、村を守る為です」
村を守る為、現状を維持する為の選択。
その非を説いても良いのかもしれない。
ここの人は、俺をただの引き篭もりと思ってはいない。
しかし、その選択を変えさせて、その後この村が栄えるとも限らない。
ルカとルナの方を見やる。
「子供は好きか?」
ルカは無言で頷く。
「なにか未練はあるか?」
ルカは無言で頷く。
「その未練はこの村でなければ、晴れないか?」
ルカは、首を横に振った。
「子供が好きなら、他人の子よりも、汝自身の子を産めばよい。その未練も、この村以外でも晴らせるものなら、ここに留まる必要も無い。この娘たち、我が引き取ろう」
村長が唖然としている。
ルカは、察しが良いのか特に驚いてはいないが、何故か顔を紅くしている。
ルナは、口を大きく開けて笑い、はしゃいでいた。
「汝らの面倒事の一つを肩代わりしてやったのだ。こいつらの処理は任せた。取られた分を取り返すも良し。我は、決して善なる者では無い。咎めたりはせん」
ルナの手を握り【転移門】にてルカのもとへ移動。
ルカの腰に手を回し【転移門】で彼女達の家の前まで移動した。
「持っていくものがあれば、手に収まるものだけにせよ」
ルカとルナは、あばら屋に入っていく。
ルナは元気いっぱい、あれやこれやと言っている。
ルカは、親の遺品だろうか?木の小さな箱を抱えてでてきた。
「この度は、妹を救っていただき、ありがとうございます」
仮面をつけていなかったら、目を見て話せないほど、綺麗だった。
「かまうな、成り行きだ」
「どうこの恩を返せばよいのか分かりませんが、よろしくお願い申し上げます」
「まずは、生活基盤を与えよう。その後は自由にすればよい」
「貴方様への直接的にできる事はございませんか?」
潤んだ瞳で言ってこられると非常に悩ましいのだが……。
「そうだな。神にも死があるのは知っているか?それは、忘れられてしまう事だ。願わくば、無理の無い範囲で構わない。思い出して、祈りや願いを捧げてくれ。この度の様には全ては救えない。でもその願いや祈り、ちょっとした報告でも良い。我は、それを与えられる事で意味を持つ」
少し驚いた顔をしてから、ルカは笑いかけてきた。
どちらかというと、ルナに見せる笑い方だ。
「ええ。そうさせてもらいます」
「お姉ーちゃん!」
ルナは両手いっぱいに、ガラクタを抱えていた。
それを一個づつ置いていく様に、ルカに説得せれていた。
最後に残ったのは、ボロボロの熊の人形のみ。
それは、母の思い出らしくルカも説得できなかった。
二人を傍らに置き、また【転移門】を使う。
社に戻ったのは、夕方すぎであった。
最近は、近隣のご厚意で、篝火をたくことができるようになり、俺が見ても少し神秘的な雰囲気が漂っている。
パチパチと心地の良い音がなっている。
社の中の生活区域まで案内。
風呂とトイレ、布団の使い方を教えて、風呂に入ってもらう事にした。
その間、クーに服をつくらせる。
ルナのはしゃぐ声が聞こえる。
ルカも肌なのだと考えると、少し緊張してしまう。
引き篭もりが、自分の城の人を招くということは、かなり勇気がいるのだ。
今回は戦力不足で、俺がでざる負えなかったが、もう少し戦力を充実させるべきだろう。
《ガテン系クー》を十体召喚する。
茶屋の近くに、まずは土壁の家を作ろう。
木材が不足していることと、日本と違い乾燥しているので、土壁の家でも快適に生活できるはずだ。
早急に工事に取り掛からせた。
二、三日で完成できるだろう。
少し床に転がり、瞳を閉じる。
スキルポイント【4000】
【戦士系】《500》取得
スキルポイント【3500】
【戦士】《500》
【収集家】《500》
【盗賊】《500》
【格闘家】《500》解放
【農夫】《500》取得
スキルポイント《3000》
【農夫レベル2】《1000》
【山師】《1000》
【魚業者】《1000》解放。
基盤がまだ固まっていないのは俺も同じか。
もっと力を付けなくてはな。
欲望だらけの神は、更に高みを目指す。
連続の魔術使用、自分がどれだけ精神力を使っていたのか理解できなかった。
酷い目まいと恐ろしい疲労感から、意識が飛んでしまった。




