表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常華  作者: タナトス
Episode1
6/10

Scene4

来た道とは別の道をたどって表通りに戻ってきた。白の身分証もできたのでこれで大っぴらに出歩ける。行きにも通ったとはいえ、未だこのように活気のある通りは新鮮なようで、心持はしゃぎ目に周りを見ている白に声をかける。

「とりあえずお前の生活必需品を買うか」

「いいの?」

平静を装っているがだいぶ期待をしていたようで、うずうずした感じが伝わってきた。どうやら傍から見ている分にはわかりにくいだけで精神年齢も見た目相応なのだろう、などと考えている自分に苦笑する。どうやらこの短期間で俺は自分で思っていたより白に慣れてきているらしい。

「ガキが遠慮なんかすんな」

そういって白の頭をクシャッと撫でる。

「まあ、お前が服はずっとそれでほかの日常用品も一切使いたくないというならば止めはしないが」

「……(ブンブンブン!!)」

「わかったわかった。まず服から行くか?」

「ん」

必死になって首を振る白宥めながら服屋へとむかった。


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


約3時間後、山となった荷物を前に少々途方に暮れていた。

「こりゃ一回ねぐらに戻んないとな……」

「ごめんなさい……」

初めに服屋に寄ったとき、かなり興奮した様子の白に『この範囲なら自由に買っていいぞ』といって金を渡したのだが、それが失敗だった。自由に買っていいといわれ張り切りだした白は店探し、まとめ買いによる割引、値切り等を徹底的に行いその結果、予想よりはるかに多い量の荷物が発生することになった。

「謝らなくていい、自由に買っていいといったのは俺だからな。ただ次からは気を付けてくれ」

「……はい」

まだ少し落ち込んでいるようだがまあそれぐらいなほうが同じミスを繰り返さないだろう。

「じゃあ一度ねぐらに戻るか。荷物置いてから飯でも食おう」

「うん」

とりあえず服をいくつか白に持たせて残りを担ぎ上げ、ねぐらに向かう。途中では白と話しながらのんびりと帰ってこられたのだが、ねぐらまであと10分ほどのところで街の気配が変わった。

「白、止まれ」

「ん」

驚いたことにというべきか、やはりというべきか白は特に理由を問うたりもせず、すぐに止まり気配を消した。あの落着き様からなんとなく予想はしていたがどうやら白は俺が思っていたより荒事に慣れていたようだ。だから気配を消したところまでは驚きはしても予想ができていた。しかしその精度には本気で驚かされた。

「(コイツ、どんな環境で生きてたんだ?なんでこんな歳でここまで気配を消せる)」

正直動きはお粗末だし筋肉も大してついていない。しかし気配を消すことに限ってはきちんと訓練を積んだ者をはるかに超えていた。

「(才能か、でなけりゃ……いや、今気にすることじゃない)」

益体もない思考を振り払って気配を探り、気配のもとへ風下から向かう。いやな予感を感じながらそのまま気配を追っていくと案の定ねぐらにたどり着いた。

「やっぱりか……白、身の危険が迫った時以外は絶対に大声を出すな。あと絶対に離れるなよ、常に俺が見える位置にいろ」

「わかった」

白が頷いたのを確認してねぐらの廃ビルの様子をうかがう。

「(ねぐらの中に4,5人ってとこか、ただの命知らずか?)」

などと考えながらねぐらの中の相手を見ていたのが災いした。

「っ!後ろ!」

白の言葉に反応して白を抱き上げてそのまま裏路地に飛び込む。

「気づかれてたか?」

「わからない、結構距離はあったけど……っ!」

「っ、ちっ!」

明らかにこちらを目指してくる足音から気づかれていると判断し、とりあえず

「舌噛むなよ」

「? わっ!?」

白を抱きかかえて壁をけって屋上まで駆け上がる。

「とりあえず隠れてろ。安全を確保したら呼ぶ、それまでは絶対に顔を出すな」

「ここら辺に隠れてればいいの?」

「いや、お前が安全だと思うところでいい」

「わかった」

白がまた気配を消して動き始めたのを見ながらさっきまで自分たちがいた路地に入ってきた敵を観察する。

「(2、3……6人か。武装が結構充実してるな。突撃銃(アサルトライフル)、手榴弾、服は防弾か?それにしちゃあ被覆部位が少ないが……)」

一通り確認してそのままこちらを見失っている敵の真上に飛び降りた。

「上!?」

「(ちっ、思ったより早いな。まあいいか)」

「うろたえるな!落ち着いてたいし」

その勢いのままに相手の指揮官と思しき奴の首を蹴り折る。

「貴様ぁっ!」

そう叫んだ奴の肌が蠕動し始める。

「ちっ!亜人か!」

被覆部位が少なかったことから気づくべきだった。擬装を解いた際に邪魔にならないようにしていたのだろう。しかし5体はまずいので、

「んなっ」

とりあえず数を減らすことにした。まず一番反応の遅かった奴のもとに踏み込んで、

「ガハッ」

右手で抜いたナイフで首を叩き落としてそのまま頭を近くのやつに投げつける。

「なんだこの程度でひるむのか。練度が低いなっと」

ついでにもう一人の頭と喉もとを左手に持った拳銃で打ち抜いた。

「ひぃぃぃッ!?」

「おい待て逃げるなっっ!?」

その勢いのまま、頭を投げつけられて昏倒した奴と逃げるやつを無視してまだ落ち着きがあったやつの頭を壁にぶつけて蹴り潰し、三角とびの要領で逃げるやつの前に回り込み、

「ひぃっ た、たすけ」

「安心しろ、まだ殺しはしねぇよ。ま、とりあえず寝とけ」

顎を蹴りぬいて気絶させた。

「たぶん持ってると思うんだが……おおあったあった……よし、近くにいる残りはねぐらの奴だけだな、とりあえずこいつらを縛っとくか……白!」

初めに殺した指揮官と思しき奴の懐から見つけたPDAで敵の配置と数を確認し、とりあえずの安全を確保したので隠れている白を呼んだら、

「ん、終わった?」

すぐそこの窓から出てきた。

「ああ、しかし随分と近くにいたもんだな」

「見つからなければ近くにいるほうが安全」

「まぁそうだが……」

普通は壁一枚挟んだ隣にいたら気づかれるんだが……

「まぁいい。俺はこれからねぐらの中の奴らを一掃する。すぐ戻ってくるとは思うがその間こいつらを見張っておいてくれ、一応縛ってはおくがもし身の危険を感じたら即座に殺して構わない」

そういって拳銃を渡す。

「ん、わかった」

「頼むぞ」

そう言って気絶させて縛り上げた敵兵二名を白に預けてねぐらに向かい、入り口のあたりから気配を探る。

「(一階に見張りが二人、二階にさらに二人か……何かを探している風だが……まぁ何をしてたかはあとでじっくり聞けばいいか)」

そう決めて

「なんだきさ ガッ」

「なっ、くそっ、死ぎゃぁぁぁぁぁぁッ!?」

片方の額にナイフを投げて殺し、それに反応してこちらに銃を向けた男の腕を取り、そのまま腕をねじ切った。

「腕っ、俺の腕ぇぇぇぇっ!!?!?」

「うるせぇ」

あまりにうるさいのでねじ切った腕で横殴りに頭を殴り飛ばして気絶させる。

「さて、一人は生かしておきたいんだがこいつはどうするべきか……」

血止めしてやらないと死んじまいそうなんだよな、などと考えてきたら上から声と足音が聞こえてきた。

『なんだ、どうした!』

『敵襲か!』

「やっぱりばれたか。派手に喚かれたしな。しかしこれでは血止めをしている時間はなさそうだな……まぁ上から来るやつを生け捕りにすればいいか。」

そう決めて目の前で気絶している奴の頭を踏み砕く。そして降りてくる奴らが踊り場にさしかかったところで一気に飛び掛かった。

「ッ!死ねぇ!」

「おい待て!今殺すのはまずい!」

おやどうやら向こうも生け捕り狙いらしい。すぐに気付いて銃を向けたやつをもう片方がとめている。しかしそんなことをしていれば、

「隙だらけだな」

手すりを踏んでいい気に加速し、さっきちぎった腕で隙だらけな方の首をたたき折り、

「んなっ」

「おやすみ」

呆気にとられているもう一人の頭に振り下ろして気絶させた。

「さてこいつも縛って白と合流するかね」

いったん離れないと不審に思ったこいつらのお仲間がやってこないとも限らない。死んだ奴らの懐を探って通信機器を壊し、気絶させたやつを縛り上げて白のもとへ戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ