おばちゃまの勝手に相談室。〜若い娘の悩み〜
今日もいつもの相談室。
おばちゃま先生のマンション。
「なずなさん? 今日の予定は?」
いつものセリフ。
「はい。 えーと、 四時にお一人来ます。
あ、 女性です。 若い……」
「お嬢ちゃんね。 分かったわ。 いらしたら
呼んでちょうだい」
そう告げると、書斎へ。
若い女性。
先生は、大人な男性が好みだ。
しかし、中々いらっしゃらない……。
不満? 別にいいではないか。
カウンセラー。 色好みはしないで頂きたい。
私はお茶の支度やら、雑務を粉しながら
来客を待つ。
午後四時。
マンションのチャイムが鳴る。
私は若い女性を相談室へ案内した。
「暫くお待ち下さい。 今先生がいらっしゃいます」
こういうのにも段々慣れ、助手らしく振る舞える様になった。
「先生、いらっしゃいました。 若い女性の
方が……」
書斎のドアをノックした。
書斎から先生が出て来て、私に一言。
「いちいち、若いはいらなくてよ?」
少し冷めた目で私を見る。
先生の言動も、何と無くスルーできるので、
気にしない。
「お嬢ちゃんは、どんなお悩みがあるの
かしら……」
ブツブツ独り言を言い、相談室へと向かった。
私は紅茶の準備をしにキッチンへ。
「失礼します。 お茶をお持ちしました」
オウムが話すのと変わらない。
毎回同じセリフ。
私はテーブルにティーカップを置き、ドアの
近くの椅子に座った。
気まぐれカウンセリング。
それでもまあ、社会勉強?
私は椅子に座り、今日の相談者さんを見た。
私より年上であろうが、若い女性がちょこんとソファに座っている。
……どんより系?
うつむいたまま、顔を上げない。
「お嬢ちゃん? お話があるから、今日いらしたのよねぇ。 黙っていたら、困るわ」
若い女性には、少しばかり厳しい先生。
どんより雲が、漂う。
はあっとため息をつき、先生はじっと彼女を
見つめた。
「私……。 男運悪いんです。 こないだまで
付き合っていた人に裏切られて……」
ありがちな相談……。
まあまあ可愛い感じの女性だが、意思が何と無く弱そうな。
「はっきり言っても宜しくて? まあ、初対面でも何と無く分かるわねぇ。 貴女、自分を
持ってないもの。 彼氏の言いなり……。
大体そんな感じするわ」
ズバリ。先生が言い放った。
ますますどんより……。
「その通りです。 彼氏にお金貸したりして、 結局浮気されて……。 しつこくしたら、
嫌われてしまうって」
物凄くため息をつき、先生がティーカップを
手に持った。
「昭和初期の女性……。 男に貢ぐ。 言いなりになる。 貴女、現代っ子でしょ?
男の人の後ろを三歩下がって歩くタイプ?
男の人に貢がせても、 貢いだらダメよ?
宜しくて? 男の人はね、 手のひらに乗せるものよ。 自分が乗ったらダメ」
紅茶を飲んだ。
「私にはそんな事……」
ためらいがちに言った。
「……お嬢ちゃん、 貴女おいくつ? 寝言はね、 お布団で言いなさい。 それなりに場数踏んでるんでしょ? 古い考えはお捨てなさいな。 振られる。捨てられる。 そんな事ばかり考えてるから、 態度に出るの。 いーい?
堂々としてなさい?」
女性は何かを考えているのか。黙ったまま、
先生の話を聞いていた。
「私に、 できるのでしょうか……?」
食いつくように先生に尋ねた。
「貴女次第よ。 やるかやらないか。 貴女の
心次第。 こんな自分嫌だ。 そう思うなら、
自分が変わらないと。 貴女の人生よ?」
先生はにこやかに言った。
「私、 次第……? 」
「あなたしだい。 ね? 」
女性が帰った後、お決まりに先生に質問。
「あの女性、 変われますかね……」
「さあ。 分からないわ。 誰にもね。彼女の心は彼女しか変えられないのよ。 でも……。
自分で理解しているから、 大丈夫なのかも
知れないわね。 まさか、 男の人に貢ぐ子が
いるとは、 本当新鮮だわ」
新鮮……ですか。
好きな人に振られるのが怖い。
だから、言いなりになってしまう。
でも、そんな自分が嫌。
先生は適当カウンセリングをする。
でもそれは、答えが分かっている人の背中を
そっと押してる……?
少しずつ、先生の事が分かったかも。
おばちゃまカウンセラー。
適当カウンセリング。
それだけじゃ、ないのかな?