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Crafter  作者: 絶英
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絆は固かったと思える日(1)

 絆は固かったと思える日(1)

木曜日まで4人で分担して行った。バリケード制作と城門の修復チームと水堀制作チームで分担作業で効率を高めたのだ。夜は作業ができない。というのもモンスターは夜に湧き作業中に襲撃されると危険だからだ。矢を集めなければならないから夜は4人で郊外を警備して回った。ほぼ全ての作業が終了し矢も十分に集まったのは水曜日だった。城壁の上から見ると一段と国らしくなったと思う。

 そして今は木曜日の午後7時半。4人はギルドホームに集まっていた。今日もShiroはいない。何度か尋ねてみると、外出したような痕跡がありそろそろ出てきてくれるのだと安心していたのだが予想は当たらなかったようだ。

「準備はいいな?」

 俺は問う。

「はい」

 3人はそう返事をした。全員全身ルビー防具のダイヤモンドの剣と弓と矢を64本ずつ、食料などを持っている。全装備を強化しており、例えば俺のダイヤモンドの剣と弓には炎属性付与効果がついている。

「じゃぁ配置まで移動するぞ」

 配置は、バリケードで近接攻撃で応戦するのが俺とココロ。城壁からの弓矢での支援攻撃がWanKAとBeBeだ。

 配置に着くとお知らせが流れてきた。

≪お知らせ:暗黒軍Lv5 精鋭攻略部隊??個小隊が城に接近中です。迎撃してください≫

「Lv5って……」

 俺は絶句した。前のがLv1だ。あれでも十分強かったのにLv5となるとどうなるか分かったものではない。

「見えてきましたよ!」

 ココロがそう叫んだ。ココロにつられ俺も前方を確認する。

 前と同じように隊列を乱す侵攻してくる暗黒軍。さらに驚くべきは、暗黒軍の隊列の中に投石機や攻城櫓が見えることだ。視認できるだけでも攻城櫓は10台、投石機は5台はある。また、暗黒軍の装甲や武器も強化されているように見える。前は軽装兵だったがLv5になると重装兵になっている。また騎兵も投入されてるのが分かる。

「明らかに強くなってるってことか……」

「そうですね……。あっそろそろ来ますよ」

 俺はもう一度前方に注意を向ける。そろそろ弓矢の射程範囲内に入るのだ。俺は弓を装備して矢をいっぱいに引く。そしてカウントダウンを始める。

「……3」

「……2」

「……1」

 そう言った瞬間に矢を離した。同時に敵の方からも矢が飛んでくる。さらに、膨大な量の足音が聞こえてくる。俺とココロは互いに頷き、そして立ち上がる。

「バリケードを盾に応戦するぞ!」

 ココロからは返事は返ってこない。足音でかき消されてしまったのだろう。

 俺は、突撃してくる騎兵の足を掻っ切る。転ぶ兵士に剣でとどめを刺して騎兵は何とか対処した。波状攻撃のようで3波に渡って騎兵攻撃が押し寄せてきた。

 またその間にも投石機による城壁への攻撃は止まなかった。

「次が来るぞ」

 さらに押し寄せてくるのは歩兵の大軍だ。数を見ると一斉攻撃だろう。また、攻城櫓も一緒に連れてきている。

 さっきの調子ならいけるかもしれない。そう思った束の間城壁の上からBeBeさんの声が聞こえてくる。

「上がってください! 囲まれてしまいます」

 それを聞いてハッと全体を見渡した。既に歩兵右翼隊と左翼隊は両側から俺たちの方に向かってきている。前方からももちろん剣を構えた歩兵隊が突進してきている。

「ココロ、ひくぞ!」

 俺は、足音にかき消されないよう大声で叫ぶ。

「わ、分かりました」

「俺が足止めしながら行くから先に行って援護してくれ」

「分かりました……」

 渋々とココロは頷く。

「ココロは門に向かって一気に走れ」

 そう言って俺はココロの背中を強く押した。その勢いでココロは門に向かって走った。

 俺は少しずつ後退しながらも剣を振る。包囲からは逃げられたので後は後退しながら門に向かっていくだけだ。だが、俺が逃げるには足止めをする必要があるのだ。

「ユウさん、援護射撃しますから逃げてください!」

 BeBeさんが城壁の上から叫ぶ。俺は頷き、後ろを向いて走った。それを追撃するために歩兵隊もついてくるが弓の援護射撃で辛うじて足止めされている。

 BeBeさんとWanKAさんのおかげで何とか城内に入ることができた。その後橋を上げ門を固く閉じ、城壁に上がった。

「とりあえずはこれで安心だな」

 俺は一安心してホッと一息つく。

「見てくださいあれ!」

 ココロが城外の敵に向かって指をさす。歩兵隊は水堀で足止めされておりこちらに来るに来られない状況になっていたのだ。水堀の前でぴたっと止まっている。攻城櫓も後方の方で止まり微動だにしない。

「とりあえず今のうちに攻撃だ」

 その様子に唖然としていた3人は頷き弓矢で攻撃を始める。が、攻撃を始めた瞬間に一斉に歩兵隊は撤退していく。

「どういうことだ……?」

 これは勝ったということになるのだろうか。

「やりましたね」

 ココロは嬉しそうに笑った。

「いやだけど、なんか変だ。警戒を緩めたらだめだ」

 何かがおかしい。この侵攻イベントはつまり生存者を減らすための――いわば殺人システムに過ぎない。その敵AIがこんな簡単に撤退するだろうか? 歩兵隊は水堀の前で止まり何かを考えているように見えた。それも気になる。

 歩兵隊が撤退して5分が経った。やはり何もないのかと思った瞬間だった。

「来ますよ」

 WanKAはそう呟いた。俺たちは前方に目を向ける。

 そこには、さっき撤退したと思われた暗黒軍が一斉に進軍してきていたのだ。その暗黒軍は何かを持っている。

「土だ」

 WanKAはまた呟いた。

「土? どういうことなんだ」

「つまり埋めようとしてるんですよ、この水堀を。敵はこちらの攻撃能力が低いと見たんです。だから水堀を埋めて攻城櫓を使っての効率の良い攻撃をしようとしてるのだと自分は考えます」

 俺は唖然とした。まさか、こんなにAIの知能が高いだなんて思わなかった。

「と、とにかく攻城櫓への攻撃に集中しよう……」

 一番攻城櫓が厄介になってくるだろう。攻城櫓というのはかなり厄介なものである。現実でもそうだ。城壁に板を渡して兵を城に乗り込ませる。また攻城櫓最上階には弓兵隊が積まれておりそこからの射撃で防衛側を苦しめるものだ。ロドス包囲戦と言われる歴史上の戦いでも強力な攻城櫓が用いられている。ロドス陥落には至らなかったがロドス防衛軍を苦しめたであろう。デスゲームの間勉強は一切していないが歴史のことについてはかなり覚えている。何せ現世では歴史は得意分野だったからな。

「攻撃開始!」

 俺は弓で攻城櫓に攻撃を開始する。それに対抗するように攻城櫓最上階に積まれている弓兵隊が矢を射てくる。

 やっぱり……。燃えない……。

 そう攻城櫓には火矢の対策として、生皮が側面に張り付けられている。流石に壊れないというわけではなく、攻城櫓にも耐久値が存在しているようで攻城櫓の頂上にちょこんとHPバーが表示されている。俺たちが矢を放つと減っているのを見ると間違ってはいないようだ。

 やっぱり駄目だ……。

 攻城櫓の耐久値は確実に減ってはいるのだが時間が足りない。既に歩兵隊は水堀の埋め立て作業に入っている。攻城櫓は埋め立てを待つように少し後ろの方で待機している。集中攻撃で1台は壊せるものの残り9台は新品同様全く傷ついていない。

「とりあえず数は減らせってことで……」

 埋め立てが終わったのか、終わりそうなのかは知らないが奥の方で待機していた攻城櫓が前線へ移動してくる。

 間違いない。来る……。

 今のうちに1台でも火矢で壊したいのだが、敵からも矢が飛んでくるためそれを避けるので必死であまり狙えないのだ。何とか、敵の矢の隙を見計らい水堀を見る。今まであった水堀の姿形は既にない。殆どが埋め尽くされている。

「来るぞ!」

 俺は叫んだ。その数秒後、攻城櫓と城壁の間に板がかかる。その板を渡って攻城櫓から大量の暗黒軍が乗り込んでくる。

 一応防衛策は用意してある。ある程度固まることだ。4人である程度固まることで1人対多人数を避けることが出来る。また、援護しあうことで生存率を高めるのだ。これが吉と出るか凶と出るかは分からないが、やってみるだけやってみる。

 俺は剣を構える。勢いで襲いかかってくる暗黒兵士の腹に剣を突き刺そうとする。だが、剣が弾かれる。不意を突かれた俺は敵の剣を直に受ける。

「一筋縄ではいかないってことか……」

 俺は顔をしかめた。強い……。比べものにならないぐらい強い。剣を振るうが、糸も容易く弾き返してしまう。何とか倒せるものの疲労と敵は増える一方だ。さらには、門も破壊され、兵は突入し城壁を城内階段から上り俺たちを攻撃してくる。さらには、城壁を上ってくる始末だ。

「くそっ、これまでか……」

 俺は覚悟した。他の3人も覚悟したようだ。これは強すぎる。

 一対一ならまだしも4対多だ。いくら重装備をしても疲労には勝てないし、数にも勝てない。この人数からすると300体はいる。

 何とか戦えていた体にもとうとう限界が来る。突然と視界が歪みだしてくる。何だよこれ。まだ戦いたいのに……。もう終わりかよ。

 俺の腹に剣が迫り、そして突き刺さる。バリンと言う音ともにポリゴンの欠片が飛び散る。同時にHPの3割は消失する。さらに、剣が迫る。さらにHPの3割が消失する。このまま終わるのか。

 その時、少し離れた所――城壁と市内に続く階段があるところで金属音が鳴り響く。これは剣と剣がぶつかる音だ。AIの誤作動で同士討ちでも始めたのだろうか。止まりかける思考でそう考える。が、違った。誰だろうと気力を振り絞り音のする方を向いた。

「あっ…………」

 そこには、shiroがいたのだ。

 Shiroが来てくれた。やっと来てくれたんだ。

 嬉しかった。

 嬉しかった。

 嬉しかった。

 ただ、それだけだった。

 なぜだか、力がみなぎってくる。

「うおおおおおおおおおおおお!」

 最後の力を振り絞り、剣を振るった。その剣の狙いは定まっておらず弱弱しい物だったが幸運にも敵1人に命中。ポリゴンの欠片となり四散する。

 倒れそうになりながらも、剣を振るい、道を無理やり開ける。

「シロ……! シロ……!」

Shiroも俺を見つけたようで、応戦しながらも俺の方に近寄ってくる。

 あとちょっと……。あと、ちょっと……。

 ――その時。

 俺は、腹に違和感を覚えた。ゆっくりと腹に顔を下げる。俺の腹には矢が刺さっていたのだ。

「く……そ……」

 矢を引き抜こうとも力が出ない。しだいに目の前が歪みだす。足には力が入らず、地面に膝と手をつく。なすすべなく俺はその場に倒れた。


 




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