仲間
このゲームでLvを上げると体力、スタミナなどの基礎値が一定間隔上がっていく。Lv上限は無制限で、プレイヤーはステータス振り分けに介入することはできなかった。会社の意図としてLvという要素は不必要で追加要素という部分が強かったのだ。
Lvを上げるには経験値を得なければならない。その方法としては、希少鉱石を採掘したり物を作ったり、製錬したりモンスターを倒したりと色々ある。その中にプレイヤーを倒すというのがある。つまりはPKである。
デスゲーム開始以前のこのゲームでのLvは殆ど必要なかった。死ねばLvは“1”に戻ってしまうからだ。
だがデスゲームが開始してからその風潮は消え去った。Lvは高くなければならない。高ければ生存率が上がる。そう考えるプレイヤー次々に現れたのだ。何十とLvを上げるのは難しい。そこでPKが活躍するのだ。Lvの高いプレイヤーを倒すとそれだけ多くの経験値を得ることが出来る。それを狙って高LvプレイヤーのPK時の経験値を得ることに執着するプレイヤーが現れはじめたのだ。
――俗にいうPKだ。
初めは少ない規模だったが、ゲームが開始して月日が流れるごとにその規模は増していった。終いにはPK集団というのがどこかに作られたらしい。
PKと、通常プレイヤーはプレイヤーネームを見て判断することができる。PKは赤く光っているのだ。
ゲーム開始から2ヶ月が経った。だいぶここでの生活にも慣れを感じていたころだった。それが訪れたのは不意だった。
俺とShiroが少し遠出して洞窟探検に行った時の事である。
順調に湧いているモンスターを倒し鉱石を回収していたときの事。俺とShiroの物ではない別の声が聞こえた。それも叫び声だ。
「なんだ!?」
採掘中だった俺は不意を突かれ少し驚く。同じく採掘中だったShiroも同じようだったようでビクッとしていた。
俺は採掘を途中で止めた。
「行ってみよう」
白カニさんのようにスポーントラップにかかってしまったのかもしれない。声は複数だったためそんな簡単に死なないとは思うが一応のことがある。
「そうだね」
いつもの口調で言い、アイテム覧から剣を取り出し装備する。俺も剣に装備しなおし声のする方に走って向かった。
「大丈夫か!」
少しだけ明かりが見えてきた。数人のプレイヤーが遠くの方に見える。赤色のネームのプレイヤー――PKが複数で3人の通常プレイヤーを取り囲んでいた。
俺の声に気づいたようでPKがこちらを振り向く。
「数は5人。体力が危なかったらスイッチするね」
そう言いShiroはアイテム覧から弓を取り出す。俺はPKに突撃する。
5人のうち3人は鉄製装備を身に着けている。後の2人は後方支援だろうか毛皮装備に弓を装備している。対してこちらはルビー製装備を強化と合成をした強化版装備だ。
初めに接触したプレイヤーに突撃の勢いのまま剣を突き刺す。刺し口から機械的なポリゴンが零れ落ちている。
「お前らか……!」
俺が剣を突き刺したプレイヤーが苦しそうに言う。
すぐに剣を抜き隙を与えず3回斬撃を食らわせる。相手はHPが危険域に入ったようで地面に倒れこむ。これで反撃が出来ない状態にした。
「くそっ!」
相手の1人がやけくそに剣を振り回してくる。もちろんそんな攻撃は喰らうはずがない。今まで何度もモンスターと死闘を繰り広げた俺にとってそんなものを避けるのは余裕だ。
俺は相手の腹に剣を勢いよく突き刺しその勢いで石の壁にぶち当てる。あれだけで体力が危険域に突入するはずはないが、気を失っていた。
生き残った近接系のPKは腰を抜かし地面に座り込んでいる。
戦力として残っているのは後方支援の2人は俺と距離をとり矢を放っている。が、後方支援は近接攻撃で畳み掛ければ相手にならない。別のMMOでもそんな感じだった。
「当たれ、当たれ!」
やはりこちらもやけくそに矢を放っていた。
俺はすぐに距離を詰め斬撃を叩き込む。HP危険域に入ったようで立てなくなり倒れこむ。
PKは壊滅した。
「もう、私の出番がなかったね」
少し拗ねているのか頬を膨らませている。
「また、こいつらなんだね」
Shiroは軽蔑の視線を倒れているPKに向ける。
「また」というのはこのPKと俺たちが何度か戦っているからだ。さっきの戦いではこちら一方的に攻撃していたが前戦ったときは互角だった。一応実力はあるのだ。前戦ったときは結局相手が撤退して戦いは終結した。今回で一応決着をつけたことになる。
「結構しつこいな」
「くそっ……! 邪魔ばかりしやがって!」
悶え苦しんでいるうちの1人が言う。俺はそれを無視して怯えて3人で固まっているプレイヤー達のところに向かう。
「大丈夫?」
装備は殆どしていない。見る限り初心者と言ったところだ。というより、2ヶ月も経っているのにどういうことなのだろうか。
「リーダーが……リーダーが……」
3人のうちの1人がぽろぽろと涙を流し遠くを指さしている。そこにはアイテムが散らばっていた。どうやらリーダーと呼ばれるプレイヤーをPKに殺されたらしい。何とも許しがたい話である。
落ち着きを取り戻した1人が俺たちに「ありがとうございます」と深く頭を下げ礼を言った。
「当たり前のことだよ。それより、何で洞窟に――それもこんな奥深くに来たの? 装備的には浅い所で良かったのに」
俺は問うた。
「実は僕たちリアルで友達で4人でデスゲームが始まる少し前にこの世界に来て座標を教え合ってお互いに会ってプレイしてたんですが、デスゲームになって怖くてみんな、僕も家に引きこもってたんです」
つまりは、雑木林さんと同じ感じだ。ただ死んではいないが。
「それで、掲示板を見てたらギルドがあるっていうのを聞いて海を渡ってやってきたんです。でも用意した持ち物とかでは足りなくて採集のためにここまで来たんです。それであのPKと会って……」
「なるほど」
俺は相槌をついた。俺が先程のPKに目をやるとそこには姿はなく、自然回復して立てるようになり逃走したのだ。
「行くあてはあるのか?」
「とりあえずはギルドに行く予定です」
この近くにギルドがあったなんて俺も初耳だ。もしかしたらプレイヤーがたくさんいるかもしれない。
「じゃぁそこまで行ってみよう」
「は、はい! ありがとうございます」
俺たちは洞窟を出てギルドに向かった。
洞窟を出てかなり歩くと、だんだんと国の城璧が見えてきた。俺が今歩いているのは整備された歩道。近くの山には見張り台のような物がある。
「……えっ?」
城門の前で俺はぽかーんと口を開けたまま固まってしまった。俺とShiroはお互いの顔を見合い笑った。
「ようこそ我がギルドへ!」
3人の顔は驚きに満ちていた。
「なるほど……。そういうことだったんですね」
さっきまでのことを一通り整理しなおして3人に言いなおした。何とか納得したようで満足げな表情だ。また、自己紹介も済ませた。近接系で、3人をまとめて、自分のことを「僕」と言っているのがココロ、紳士っぽくて自分の事を「自分」と言うのがWanKA、唯一の女性で、遠距離系のBeBe。
「3人ともよろしく!」
3人は笑顔で「はい」と答える。
「とりあえず今空地がないから、領土を拡張しようと思う。そこに家を建ててくれればいいから」
実は、発展前はもう少し空地があったのだが発展していくにつれていつのまにか空地がなくなっていたのだ。国の建造物の殆どがAIの住人の家である。
5人はさっそく作業に入った。
このゲームの建築は、意外と簡略化されておりブロック(石ブロックや木ブロックなど)を原料から作りそれを積み上げていくだけなのだ。ブロックは重力に反し落下しないため現実では建築が不可能な複雑な建築でも可能なのである。因みに城壁も石ブロックを積み上げて作っている。
領土を拡張するため、拡張する所だけの城壁を取り壊していく。それが終わると、拡張後城壁を建てる部分に印をつけ、そこより内側を整地していく。整地機械というのもあるらしいが作り方が分からなければ、それを作るために必要な資源もないだろうと思う。どこかの情報で機械を作るには機械世界にあるものが必要になると聞いたことがあるのだ。整地が終わると、また城壁を建てていく。
作業は5時間かかった。
「やっと終わったぁ……」
地面に座った途端溜まった疲れが解放されたようで体の至る所が痛くなる。
「あ、ありがとうございます」
BeBeが駆け寄ってきてお礼を言う。
「じゃぁとりあえずここに家を建ててね。今から建てても良いけど18時にはギルドホームに来てね」
Shiroと計画して3人の歓迎パーティをすることになっているのだ。BeBeは「分かりました」と言って他の2人のところに走っていった。
「ひと眠りするかなぁ……」
今日はかなり疲れがたまっている。まだまだ時間はあるし寝ても構わないだろう。寝過ごしてもShiroが起こしに来てくれるはずだ。
俺は欠伸をして家に帰った。
それから家が建ち、3人が来て1ヶ月が経った。
何もなかった日常を一遍させる出来事が起こった。
≪ようこそプレイヤー諸君。ゲーム内での生活は楽しんでもらえているかな? 第二の世界として受け入れてもらえたかな? まぁそんなことはどうでもいい。運営の方は何かと忙しいようだし今日は直接僕がアップデートお知らせをしにきた。きっと楽しんでもらえると思うよ。まず1つ目だが今日午後6時から君たちの体系、顔が現実の物に変換される。2つ目は侵略イベントが発生するようになった。侵略イベントについては別途メールを送っているからそっちを見てほしい。今日は以上だ。≫




