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金平糖缶

虚無

作者: 羽黒鷹丸
掲載日:2026/03/01

「これは・・・・・・?」

「どうでしょうか? お気に召しましたか?」

 天と地が逆さとなった大都市に、男は立っていた。燕尾服を着た自称、願いを叶える魔人と。

 

 彼はこの不夜城に挑み、敗れ、金も女も信用も何もかもを失い持たざる者になった。

 何も無い彼が(生きてても仕方ない、自殺しよう)と、こう考えるのに時間は掛からなかった。

 彼は早速高層ビルの頂上に上った。そして(もし人生コンテニューできたら、いやこの世界の常識が違っていれば、今度こそは)と考えながら飛び降りようとした。

 しかし直前に怪しい燕尾服の優男に腕を掴まれ止められた。

「何しやがる!」

「まぁ待ってください。1枚、私の持つ5枚のカードから引いて貰えませんか?」

「はぁ・・・・・・まぁいいよ、もうどうでもいいし。はい、引いたぜ」

「jokerですか。ふふ・・・・・・いいでしょう、貴方の願いを叶えて差し上げましょう」

「え? うわっ・・・・・・」


「何で俺達が空に浮いてて街が逆さになってる!? そしてアンタは誰だ?」

「私は願いを叶える魔人です。この世界はもう一つの現実、貴方が飛び降りようとする間際に心に願った、世界の常識が元居た現実とは違う世界です」  男は狼狽していた。

「貴方はもう一度チャンスが欲しかったのでしょう? さぁ私が出来るのはここまで、後はご自分でお好きになさって下さい、それでは」

「おい!」

 自称願いを叶える魔人は消え、男は茫然として俯いた。

(ありえない、でも夢とも思えない。じゃあアイツはマジの魔法使いってコトかよ。でももしそうなら――)

 男はネオン眩しい大都市を再び見つめ、不敵な笑みを浮かべた。

「俺はあの嘘と欲に塗れた魔都市に喰われた。だがもし俺の知ってた現実とは勝手が違う世界なら俺も、成り上がって勝者になれるかもしれない」

 男はそう考えると眼に妖しい光芒を宿らせ笑い、走りながら叫んだ。

「さあ、SHOW TIMEだ!!」

 男は街へと消えた。そして二度と街から出てくる事は無かった。

 成功したか失敗したか、そんな事は誰にも分からない。

 ただ、己の欲の為に他人を食い物にして成り上がろうとした人間が一人消えても、気に留める者などおらず、世界は回る。

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