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第一章 旅立ちの村 第3部

空を裂くような叫びとともに、村の外れから武装した影が雪崩れ込んできた。

黒い外套、無機質な仮面。背には不気味な紋章――「0(ゼロ)」を刻んだ男たち。

ArcZERO。


「……やはり噂は本当だったか」

長老が震える声でつぶやいた瞬間、先頭の敵が叫ぶ。

「抵抗するな! この村に眠る“継承の炎”を渡せ!」


拓翔の耳に、その言葉が突き刺さる。

――継承の炎。

父が命を賭して守り抜いたもの。それが狙われている。


「そんなもん、渡すわけねぇだろ!」

拓翔の炎が爆ぜ、敵の足元を焦がす。


「チッ、ガキか……!」

男が刀を抜いた瞬間、空から雷光が落ちた。

地面が砕け、白煙が舞い上がる。


「相手が誰だろうと関係ねぇ。村を狙う奴は、俺たちが撃つ」

雷是が拓翔の隣に立つ。瞳に雷が宿り、全身から殺気が迸る。


「拓翔」

「わかってる」

二人は言葉を交わすより早く動き出した。



拓翔の焔が敵を押し返し、雷是の雷が一撃で武装兵を弾き飛ばす。

だが数は多い。

刃が迫り、矢が飛び交い、炎と雷の壁をかいくぐる者もいる。


「クソッ、数が多すぎる!」

拓翔が吐き捨てる。

雷是は低く笑った。

「だから面白ぇんだろ」


雷が弧を描き、敵兵の甲冑を貫く。

炎が渦を巻き、進軍を飲み込む。


それでも、ArcZEROの精鋭は止まらなかった。

一人、仮面の男が前に出る。

他とは違う気配――圧倒的な殺気を纏っている。


「子供の力で、この我らに抗うつもりか」

声は低く、仮面の奥から響く。

その男の腕から黒い術式が広がり、空気を歪めた。


「……来るぞ!」

雷是が叫び、拓翔は炎を構える。


黒い衝撃波が放たれる。

瞬間、拓翔の炎と雷是の雷が重なり合い、壁を成す。

轟音とともに大地が震え、爆風が村を薙いだ。


村人たちは震えながらも、目の前の二人の背を見ていた。

炎と雷が交わる光景は、絶望の中の唯一の希望だった。


「拓翔!」

「応ッ!」


雷是が拳に雷を纏わせ、敵の術を打ち砕く。

拓翔が炎の刃を生み出し、突き込む。

二人の力が合わさり、黒い術式を押し返した。


仮面の男は呻き、後退する。

「……この子供ども……!」


その瞬間、村の人々の間から歓声が上がった。

「拓翔だ! 雷是だ!」

「村を守ってくれている!」


拓翔は汗に濡れながら、振り返らずに言った。

「絶対に……守る。この村も、みんなも!」

雷是が笑う。

「その意気だ、炎馬鹿」

「なんだと、雷頭!」


敵の増援が迫る中、二人は再び肩を並べる。

炎と雷――その輝きは夜明け前の闇を切り裂き、

村を襲う黒の影を退けていった。



戦いの終わり。

ArcZEROの残党は撤退し、村には静けさが戻った。

だが長老は険しい表情を浮かべる。


「これは始まりに過ぎぬ……狙われているのは“継承の炎”だけではない。お前たちの運命そのものだ」


拓翔と雷是は互いを見た。

炎と雷。

共に戦ったことで、もう逃れられぬ宿命を背負ったと悟っていた。


――それでも。


拓翔は拳を握り、焔を宿す。

雷是は雷を散らし、口角を吊り上げる。


「行こうぜ、雷是」

「ああ、拓翔」


旅立ちの時は、すぐそこまで迫っていた。


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