第７話 マザーサーバーとつながる日
☆今日のセラピスト☆
名前：八雲 悠
性別：女性
年齢：40代前半（自称・年齢に縛られない存在）
肩書き：公認心理師／瞑想ガイド／波動調整士（※独自資格）
口癖：「情報は“光”なんですよね」「この水晶、昨日から微振動してます」
特徴：アースカラーのローブ風ワンピースを身にまとい、髪はゆるく三つ編み
目を閉じて語りだすことがあり、「マザーサーバーとつながりました」と真顔で言う
「今、マザーサーバーとつながりました。」
一度は言ってみたいそのセリフ。
混迷の現代を生きるあなたに、銀河からのバックアップを。
☆今日のクライアント☆
名前：石川みのり（いしかわ・みのり）
年齢：29歳
職業：IT系の在宅ワーカー（リモートワーク歴4年）
性格：真面目で頑張り屋。感情をあまり外に出さないタイプだが、
実は感受性がとても強い。理論と感情のはざまで揺れがち。
主な悩み：自分では淡々と生きているつもりだったけれど、ある朝、泣きながら目覚めた。
理由がわからない。でも、それを誰かに話さなければ、壊れてしまいそうだったので、
セラピーを受けることに。
みのりはこの頃、本当に体調が悪かった。
いつまでも続く倦怠感、焦燥感、それはまだ始まりだった。
ある朝、泣きながら目が覚めた。
自分の頬が涙に濡れていることに気づいた時
これはやばい。と思った。
誰かに聞いて欲しい。その一心でネットを検索し
ここを見つけた。
こういう所に来るのは初めてだ。
でも、話しを聞いてもらったら、何か道が見えるかもしれない。
みのりは祈るような思いで、ドアをノックした。
「……はじめまして。石川みのりです」
そっと、囁くように呟いた。
薄暗い照明と、ユーカリの香りに包まれたその部屋は、
オフィスというより、どこかサロンのような空間だった。
正面の椅子には、アースカラーのローブを纏った女性が座っている。
彼女が「八雲先生」なのだろう。
「どうぞ、お座りください」
ゆっくりとした口調。声は心地よく、妙に低音が響く。
みのりは少し緊張しながら、椅子に腰をおろした。
「何か、お悩みがあると伺いました」
八雲先生の声が部屋の中に響き渡るように聞こえた。
みのりは、自分の心の声を丁寧に外に出してみた。
「……最近、自分が空っぽに感じるんです。
SNSもやめて、ずっと家で仕事して……
人と繋がってない気がして……」
みのりはそう言いながら、涙がにじむのを感じた。
八雲先生は、そっと目を閉じた。
そして、少しの沈黙のあと、ゆっくりとつぶやいた。
「……はい。今、マザーサーバーとつながりました」
みのりは呆気にとられ、開いた口が塞がらなかった。
「……え？」
何ですって？マザー？母？
みのりの驚いた様子など気にすることなく
寒川先生は続けた。
「あなたの“情報”……魂の記憶層が、波動レベルでアクセスされました」
先生はそう言いながら、水晶を手のひらに乗せ、軽く振る。
（え？波動？マザーサーバーって……何？）
動揺するみのりをよそに、先生は続ける。
「情報は、光なんです。
そして、あなたの“孤独感”は、“更新されていない自分”を感じている状態です」
「……“更新”……？」
あの・・仕事では聞きなれた言葉だが
ここで耳にするとは思ってもみなかった。
寒川先生は続けた。
「そう。あなたの“魂のOS”が古いままなんです。
でも、大丈夫。マザーサーバーがバックアップしてますから」
いや、バックアップが大事なのは知ってる。
いつも仕事でやってるし。・・しかし・・
（……バックアップって、魂もするんですか……？）
そのあまりにも電波な――いや、壮大な言葉に、
みのりは相談しに来たことも忘れて、
思わず小さく笑ってしまった。
「……八雲先生、もしかして、ちょっと変わってます？」
「よく言われます」
にっこりと微笑んで、全く気にしてない口ぶりで
先生は言った。
「でも、つながりたいと思った“あなた”が、
ちゃんと今ここにいる。それだけで、すばらしいことですよ」
先生は、落ち着いた声で、みのりの目を見てそう言った。
みのりはふっと、肩の力が抜けるのを感じた。
情報も、光も、マザーも……よく分からなかったけれど。
この人は、ちゃんと“わたし”を見てくれている。
たとえ回線が銀河でも、それは確かだった。
そして今日、みのりは「心のアップデートに成功しました」とログを残した。
ーーセッション終了ーー
ご覧いただきありがとうございます！
まさかの“魂のOS更新”回、いかがでしたでしょうか？
セラピーなのに電波？むしろ光波？そんな世界でも、誰かに“見てもらえる”ことの力ってすごいですね。
ちなみに作者は本日、Wi-Fiの調子が悪く、
Googleに「マザーサーバーが応答しません」と言われました。
みのりのセッションだけでも、ちゃんとつながっていてほしいです。笑
次回も、ことのは町でお会いしましょう♪
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