第3話 開示の嵐
こんばんは。
アイスでも食べながら、どうぞ。
私のお勧めは、小豆バーです。(生協の)
☆本日のセラピスト☆
千波 せいこ(ちなみ・せいこ)
特徴:スピリチュアル系のベテランセラピスト。
雰囲気:オーラ強めで、“すべての悩みには因縁がある”系の語り口。
名セリフ:「私の母は……月に帰りました(?)」
好きなもの:天然石
☆本日のクライアント☆
名前:広瀬 澄
年齢:28歳
職業:会社員(経理部所属)
背景:実家暮らしの一人娘。静かに過ごしたいタイプ。
相談テーマ:「夜が怖くて、眠れない日が続いている」
最近の心の叫び:「職場の歓送迎会、誰も欠席って言ってなくて怖い」
この日は、いつもの笑野はなえが体調不良でお休み。
澄が、笑野はなえさんと、どう違うかな?
今日の人の方が合いそうだったら、担当替えてもらおうかな・・
などと考えていると、ノックの音がした。
はなえの代打に登場したのは、千波さん。
名刺に「千波せいこ(スピリチュアルケア心理士)」と書かれている。
背中まであるロングヘアがゆるく巻いてあり
毛先はラベンダー系のグラデカラーが施してある。
左手首にはパステルカラーの天然石ブレス。
オフホワイトのロングワンピースに淡いターコイズ色の
麻のストールを羽織っている。
千波は優しい声で尋ねた。
「今日は、どうされましたか?」
少しテンションは高めだが、その優しい声を聞いて
澄は一瞬、救われる気がした。
だが、それは
嵐の、はじまりを告げる声だった。
澄が、
最近、夜が怖くて。眠れないことが多いと話すと
水を得た魚のように、ダンスを踊っているかのような
手ぶりで
「ああ、それ、エネルギーの流れが停滞してるのね〜。
実はね、私も一時期そうだったの。前世の記憶が夢に混ざるのよ。
あとね、満月が近づくとチャクラが疼く体質で」
澄は凍り付く自分を感じた。
(……はい?チャクラ??)
澄が凍り付いているなんて思ってもない、せいこは
高めのテンションで話し続ける。
「それでね、私、小さい頃から人のオーラが見えてて、
姉が二人いるんだけど、一人は宇宙系で、もう一人は地の系統なの。
それぞれの波動が全然違ってて、家庭内はエネルギーが渦巻いてて、もう本当に大変だった〜!」
澄は再び凍り付いた。
(なにこの“ファミリーオブエレメント”?)
宇宙系と地の系統・・・・って。何?
せいこはまだ続ける
「あなたからはね、“翠の波動”を感じるの。
繊細で、第六チャクラが閉じかけてる。
こういう人ほど、今世での学びが深いのよ」
せいこは納得したかのように、宙を見つめる。
天使でも見たかのように。
すみは絞り出すように
「あの~
……私、何も言ってないですけど」とやっとの思いで訴えた。
せいこは自分の世界に陶酔中で、澄の言葉が全く耳に入ってないと
言わんばかりに続ける。
「これはね、魂の進化のステージに入った合図なの。
つらい出来事は、ソウルミッションの一環。
これは、魂からのギフトなのよっ♡」
「こんなギフトいらない。なんなら、返品したい。」
澄は小さな声で呟いた。
今、せいこには呟き声など聞こえない。
聞こえてくるのは、天使ミカエルの声だけだ。
「そういえば、私も昔すっごく落ち込んでて。
スピ仲間と滝行に行ってね、そしたらその夜……夢に大天使ミカエルが現れて。
“浄化完了”って言ってくれたの。あれはすごかった〜!」
澄は心の中で、
(誰が浄化したんだよ……なんだよそれ。
私の時間、返して~!)と叫んだ。
30分後。
せいこの語った話:13分前世、9分オーラと姉妹の話、5分チャクラと夢の浄化。
澄の語った話:冒頭の2分だけ。
せいこは、すっきりした顏で
「また、いつでもいらしてくださいね。
あなたの魂の声、お聴かせいただける日を楽しみにしています♡」
と澄に言った。
「……はい。ありがとうございます」
澄はそう言うだけで、精一杯だった。
(※次の予約は、していない)
ーーセッション終了ーー
今日の一言。
語ることで癒える人もいる。
けれど、語られることで疲れる人もいる。
読んで下さって、ありがとうございます。
まだまだ続きます。
よろしければ、またお立ち寄りください。
作者が癒されます。