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第9話 星と塔と、混乱する相談室〜笑野はなえ、タロットの塔に登らされる〜

こんにちは、笑野はなえです。

前回、論理で殴られるような研修を終えた私に与えられたのは――

次なる研修、通称「タロットの館」でした。


「カウンセリングに、カード……ですか?」


登場人物メモ

◆タロットセラピスト:塔木 星夜とうき・せいや

肩書:公認心理師/タロット占術ガイド/元劇団員(自称・魂の語り部)

年齢:30代後半。性別を超えた中性的な雰囲気。

特徴:黒のタートルネックに、星と月の手刺繍入りカーディガン。指には常に5本以上のリング。


実は、刺繍男子な先生なんです。

刺繍は癒されます。が口癖です。


次の研修場所に指定されたのは、

駅前のビルの一室。


ドアを開けると、そこにはーー

アロマの香りと、間接照明。

布がふわりと垂れた空間。

そこに現れたのが、塔木先生。


黒のタートルネックに、星と月の手刺繍入りのカーディガン。

指には、5本以上のリング。

まるで夜空がそのまま歩いてきたような存在感。


「どうも。塔木です。星と塔の“塔”です」

名乗り方が、すでにもう怪しい。

怪しいの塊だ。


「今日は、“あなたの問い”を1枚のカードに託しましょう」


そう言って、塔木先生はタロットのデッキを目の前に差し出した。


私は、おそるおそる1枚を引いた。


——『塔』。ですね。

先生が呟いた。


え……なんか、崩れてる建物が描かれてますけど。

雷落ちて、吹き飛んでませんか?これ。


塔木先生がカードを見つめる。


「これは、“破壊と再構築”を意味します。古い構造が壊れるとき、新しい視点が生まれるんです」


私は心の中で、(それって、上代大先生のことですか!?)

と叫んだ。


先生はさらに、神妙な顔で続けた。


「このカード、今のあなたの心の中にもあるんですよ。

問いを持っている人にしか、塔は現れません」


問い……?

私が、何か“問い”を持っている……?


(……なんだろう)

はなえは考えた。


「今、何が壊れかけてる気がしますか?」

塔木先生は、静かに問いかけた。


はなえは、少し黙った。


その静けさが、思った以上に……

何だか、優しかった。


セッションのあと。

タロットの意味は正直、よくわからなかった。

でも、

誰かに“問いを差し出してもいい”と許された気がした。


ふっと心が軽くなった。

答えは出なくても、問いを持っていていいんだと思えたから。


ーー今日の研修無事終了


☆研修後の感想☆

塔木先生の

“あの沈黙”が、

“あの問い”が、

私の中の声を聴いてくれた気がしました。


毎週月曜日 17時ごろ投稿中です。

読んで頂けると嬉しいです。



「共感って、定義できますか?」


そう聞かれたら、きっと私はこう答えます。


「聴こうとしてくれること。

それだけで、もう十分です」と。


笑野 はなえ   


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