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ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻した二人と一緒に彼らの家にお邪魔する


「改めまして自己紹介をさせて頂きますね、私はシグナディア伯爵家令嬢ヘレナ・ブレッツ・シグナディア、隣に居るのが兄のウーヴェ・ブレッツ・シグナディア次期当主ですわ」


すっかり角が取れたと思っていたパメリはどうやら私達を貴族家の使いの者だと思っていたみたい、別の意味でガッチガチになってしまった


そりゃあそうだよね、いくら綺麗なおべべを着てると言ってもお貴族様の子息それも後継ぎとその妹が直接来てるなんて普通想像しできないわ、しかも八歳と七歳だしお使いだと思われても仕方がない


落ち着くのを待って水精草のはずの水草を持って来てもらう


「こちらがお探しの薬草ではないでしょうか?」

テーブルの上に置かれた水草を確認する

「これです!…ですがあれほど拒否されていたのによろしいのですか?」

「息子を人間扱いして頂いた方にこれ以上失礼は出来ません」

そうは言いつつも心配そうな顔

「安心して下さいませ、ご子息のご病気の治療に必要なのでしょう?根こそぎ全部持って行こうなどとは思っておりませんわ」


「そうだったのですね、勝手な思い込みで重ね重ねご無礼をはたらいてしまいました…」


事情を聞けば息子のヒースはあの容姿と上手く言葉を発せない所為で虐められていたのだという


ズタ袋を手放せないのは顔を見られた時に石を投げつけられ恐怖がフラッシュバックしてしまうから


「くだらん!ヒースやパメリの事ではないぞ石を投げる様な輩のことだ」

気に入らないといった顔のお兄様


「もし宜しければなのですけれど、この水草の栽培に成功したら領都に来ませんか?」


「領都に?」

パメリの眉間に皺が寄る

「はいここよりも薬剤も多く薬師も優秀です、ご子息の治療をしませんか?もちろん衣食住はこちらで保証します」


「何故そこまで…」

「こちらにとっても理があるのです、治験…言い方は悪いですが実験台です」

実験台という言葉にびくりとパメリの肩が揺れる


「病状は違いますが私どもの姉も病に臥せっています。同じ材料を使う過程でテスターになってもらいたいのです」


「それは危険は無いのですか?」

「嘘をつく気はございません、細心の注意は払いますが危険は有ります。これは強制では無いのでご子息とよく相談し」


黙っていたヒースが口を開く

うで(おれ)…うーヴェじゃま(さま)好き役…立ち()い」

「ヒース…」


「私どもはこの水精草の解析でまだ何日かこの街に滞在します、もし覚悟が決まりましたら別邸に来て頂いても良いですし帰る前にこちらからここに寄って返事をお聞かせて頂くのでも構いませんゆっくり考えて下さいそれでは」


別れ際兄様がパメリに向かって声を掛ける

「ヒースに会いに来ても良いか?」

「勿論でございます」

パメリが笑顔で返事を返すのをみて私のお兄様は凄いんだと無い胸を張った


======


持ち帰った水精草も無事に栽培成功しパメリ、ヒース親子が領都にやってきた


ヒースはズタ袋ではなく顔を隠せる兜をかぶっている


「どうせ隠すのならば格好好い方が良いだろ」


ウーヴェ兄様がそう言ってウッズボロウの別邸に置いてあった物を滞在中に渡したのだ


「こ()好き、お()もり誰もいじ()投げない」

顔は見えないけど嬉しそうなのが伝わってくる、兄様にそこまでの考えが有ったのか解らないけど領主家の家紋の入った兜に石を投げる愚か者はそうそういないだろう、正にヒースの言う通りお守りにぴったりだわ


逆にパメリはアポを取って有るとは言っても領主家の応接間になれないのだろう明らかに緊張している、両親との顔合わせでは私に見せた母親としての強さは何処へやらといった感じ



顔合わせを済ませ応接間には私とお兄様とパメリ親子が残る、廊下が騒がしいのは双子の弟妹が聞き耳を立てようとして注意されているからだろう

「衣食住はお約束しましたけれどお二人にはお仕事に就いて頂きます」

「それは勿論でございます。それで私達はどのような事をすれば良いのでしょうか?」


「パメリは薬師様に見習いとして仕えて下さい、ヒースは治験の被験者と兄様たっての希望で従者を指名です。」


「わ、私が薬師見習い…ですか?それにヒースが従者などと恐れ多い事でございます」

「お()じゅしゃ(従者)?」


「薬師様からは貴方がヒースの為に調合した薬草に大変興味を持たれたと報告が有りました。それに市井で仕事をするよりもヒースに投薬される薬を確認できるこちらの方がよろしいのではなくて?」


「それは…お心遣い痛み入ります、ですが息子は…」

いくら素顔を隠せるといっても兜を着けっぱなしはそれはそれで目立つもんね、心配になるよね


「駄目か?どうしても駄目なのか?」

悲しそうな顔をする兄様にパメリも困る

があ()()ん、うで(おれ)やり()いうーヴェじゃま()じゅしゃ(従者)、頑張れる!」


「一ヶ月、いや一週間でも良いのだ試しにヒースにやらせてみては貰えないだろうか」

ぐいぐい来る兄様にパメリが根負けして従者採用…ウーヴェ兄様は人(たら)


ヒースのことは兄様に任せ、私はパメリと一緒にターニャ姉様の部屋へ


「前にも話しましたが、私の本当の目的を覚えていますか?」

「はい、姉君の病を治すためですよね」

姉様を身内以外に見せるのは抵抗がないといえば嘘になる、けれど…

「ヒースに協力してもらう以上貴方にも姉様の現状を知ってもらいたいの」


「解りました」

汲み取ってくれたのだろう、パメリの顔が深妙な面持ちに変わっていた扉を開けベッドへと近づいて行く


「姉様よ」

「…」


「パメリ?」

「失礼いたしました。その…なんと言葉を掛ければいいのか」

「触って貰えるかしら」

「宜しいのですか?」


肌というには硬すぎる石膏の様な質感にまるで生気の感じない冷たい手、そして体中に走る亀裂の様な線

「どうしてこんな事に…」


「私のせいなの…ヒースのこと無茶な話だっていうのは解ってる!でももう残された時間は少なくて!お願い私達を助けて…助けて下さい…お願いします」

気が高ぶって感情がコントロール出来ないこれも身体に精神が引きずられている所為?涙が溢れて止められない


「ヘレナ様、ヘレナ姫様…私もヒースも貴方がたに救われました、受けた恩に全身全霊をかけて報います。大丈夫…だからどうか泣かないで」


私が泣き疲れて眠ってしまうまでパメリは抱きしめ続けてくれた

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