表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワイン

作者: 蟹地獄

ある日、ワイン愛好家のジョンは、特別なワインを手に入れた。

彼は「このワインは寝かせるほど美味しくなる」と聞いて、早速実践することにした。


まずは一年寝かせると、確かに味がまろやかになった。

次に五年、十年と寝かせると、ますます熟成が進み、美味しくなった。


友人達も「飲む時が楽しみだね」と楽しみにしてくれた。


そして二十年、五十年と続けるうちに、彼のワインセラーはまるで宝物庫のようになった。


しかし、百年、二百年と寝かせると、さすがに周りの人々は「もう飲むべきだ」と言い始めた。


しかしジョンは「いや、まだだ!」と頑固に拒否。

五百年、千年と経つと、もはや彼はワインの守護者のようになっていた。


一万年後、ついに彼はワインを開ける決心をした。


しかし、蓋を開けると、ワインはただの酢になっていた。


驚愕するジョンに、天から亡き父親の声が響く。

「おまえ何やってんだよ、長生きしすぎだよ。早くこっちに来いよ。だからワインは酸化させておいた。」


ジョンは驚愕(きょうがく)した。

そして憤怒(ふんど)した。

地団駄(じだんだ)を踏みながら怒りを()()らした。


「はぁ~?!このワインを熟成(じゅくせい)させるのに一万年も(つい)やしたんだ!ふざけんなよ!」


そんなジョンを亡き父親はさらに(あお)り倒す。


「ハハハハハ!お前はワインを寝かせることに夢中になりすぎて、飲むことを忘れていたな!ザマァ見ろ。」


その後も亡き父親の(あお)りは続く。


あまりのしつこさとワインを失ったショックでジョンの精神はついに壊れ、気がつくと少し、はにかんでいた。


「ふ、ふっ、ふっ、ふふふふ、ハッハッハッハ!親父よ!見ろ!これで酢も楽しめるじゃないか!」。


すると、天の声は続いた。


「なら次は酢を一億年寝かせてみろ!」


結局、ジョンはその酢を一億年寝かせることにして自身も今日は寝ることにした。


そして後年彼のワインセラーは「酢の宝庫」として名を馳せることになった。


ジョン自身も酢の王様と呼ばれるようになった。


そこでジョンは思った。


俺は今まで何をしてたんだろう…。


そして一言こう言った。


「時にはワインは寝かせすぎない方がいいんだな。」


そう言い残して彼はワインを飲むことなくポックリと死んでいった。


教訓を得るには遅すぎたのかもしれない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 鉄は熱いうちに打て。  ワインはすっぱくならないうちに飲め。  ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ