ワイン
ある日、ワイン愛好家のジョンは、特別なワインを手に入れた。
彼は「このワインは寝かせるほど美味しくなる」と聞いて、早速実践することにした。
まずは一年寝かせると、確かに味がまろやかになった。
次に五年、十年と寝かせると、ますます熟成が進み、美味しくなった。
友人達も「飲む時が楽しみだね」と楽しみにしてくれた。
そして二十年、五十年と続けるうちに、彼のワインセラーはまるで宝物庫のようになった。
しかし、百年、二百年と寝かせると、さすがに周りの人々は「もう飲むべきだ」と言い始めた。
しかしジョンは「いや、まだだ!」と頑固に拒否。
五百年、千年と経つと、もはや彼はワインの守護者のようになっていた。
一万年後、ついに彼はワインを開ける決心をした。
しかし、蓋を開けると、ワインはただの酢になっていた。
驚愕するジョンに、天から亡き父親の声が響く。
「おまえ何やってんだよ、長生きしすぎだよ。早くこっちに来いよ。だからワインは酸化させておいた。」
ジョンは驚愕した。
そして憤怒した。
地団駄を踏みながら怒りを撒き散らした。
「はぁ~?!このワインを熟成させるのに一万年も費やしたんだ!ふざけんなよ!」
そんなジョンを亡き父親はさらに煽り倒す。
「ハハハハハ!お前はワインを寝かせることに夢中になりすぎて、飲むことを忘れていたな!ザマァ見ろ。」
その後も亡き父親の煽りは続く。
あまりのしつこさとワインを失ったショックでジョンの精神はついに壊れ、気がつくと少し、はにかんでいた。
「ふ、ふっ、ふっ、ふふふふ、ハッハッハッハ!親父よ!見ろ!これで酢も楽しめるじゃないか!」。
すると、天の声は続いた。
「なら次は酢を一億年寝かせてみろ!」
結局、ジョンはその酢を一億年寝かせることにして自身も今日は寝ることにした。
そして後年彼のワインセラーは「酢の宝庫」として名を馳せることになった。
ジョン自身も酢の王様と呼ばれるようになった。
そこでジョンは思った。
俺は今まで何をしてたんだろう…。
そして一言こう言った。
「時にはワインは寝かせすぎない方がいいんだな。」
そう言い残して彼はワインを飲むことなくポックリと死んでいった。
教訓を得るには遅すぎたのかもしれない。