オキテガミ。
明日は結婚式ということもあり、俺と明日彼女から奥さんになる唯はいつもより早めに床についた。
時計を見ると21時を回っていた。ふたりとも明日が結婚式ということもあり、緊張というかドキドキしているというかでなかなか寝付けない。
それでも30分くらい経った頃、唯の方から
すーっ…すーっ、という寝息が聞こえてきた。
唯の毛布がはだけているのに気づいて、起こさないようにそっと直してあげた。
(俺の奥さんになってくれてありがとう)
心の中でそう言いながら唯の頭を撫でた。
間違いなく俺は今、幸せの絶頂にいる…。
唯とこれから先もずーっと側にいて、幸せにしてあげる。
そう思いながら俺は眠りについた……。
カーテンの隙間から漏れる光とスズメが鳴く音で俺は目をこすりながら起きていた。
「唯おはよう…。」
そう言いながら俺は隣にいるはずの唯の寝顔を見ようと横を向いた。
その時、俺の目に映ったのは唯ではなく、おそらく唯が書いたであろう置き手紙だった。
「手紙…か?」唯は普段よく置き手紙をする子だった。
内容は特に重要なものではなく、「かいものいってくる!」とか俺が仕事で遅くなった時に「おかえりなさい、ごはんあっためてたべてねっ。」
よくある置き手紙よりもメモに近いような感じのものだった。
だからこの置き手紙もそういう類いのものに違いないって…、心のどこかで思ってた。
だから置き手紙をすぐには見ずにとりあえずお風呂と歯磨きを済ませることにした。
「どーせ唯のことだから、『結婚式じゃ緊張してあまり食べられないだろうからなんかかってくる!』みたいなことだろーな笑」
「すぐ帰ってくるだろっ」
5年以上一緒に過ごしているとこれくらいのことは以心伝心かのように置き手紙を見ずとも伝わってくる。
風呂と歯磨きをいつもより念入りに済ませ、置き手紙を見ずにスマホゲームをしながら唯の帰りを待っていた。
10分、20分、30分、1時間……………。
「唯のやつどこで道草くってんだ?」
ゲームをやめスマホの時計を見ると10時を回っていた。
結婚式は13時からの予定。準備も色々とあるから11時には式場にいなければならない。
「唯に電話かけてみっか」
そう思い電話をかけてみたがつながらない。
何度もかけなおしてみたがつながることはなかった。
「なんで出ないんだよ……、ったく…。」
その時初めて俺は置き手紙を見てみることにした。
そこには…………。
「ごめんね……。私にはこうするしかなかった…。幸せになってください。」
そう書かれていた置き手紙は涙のようなもので濡れていた…。