ナツノオワリ。
夏も終わりに近づいていたある日のこと……。
俺は彼女の家のベランダで彼女の唯と線香花火をしていた。
「ねぇねぇ、線香花火で勝負しようよ!先に落ちたら負けね!いい?」
「子供の頃よくやったなぁ、唯も子供の頃やってた?」
「んーとねぇ…、やったことあると思う!今思うと子供の時って花火やりたーい!ってよくお母さんとかに言ってたのに大人になったら花火とか売ってるの見かけてもな~んとも思わなくなっちゃった……。なんでだろね?笑」
「大人になると毎日色々なことが目まぐるしく起こってるからじゃないかな?」
「なにそれぇ笑いみふー笑」
そう言って笑う唯のことが大好きだし心の底から愛してる。唯と付き合ってもう5年の月日が過ぎていた…。
5年目の記念日に俺は唯にプロポーズをし、彼女は「待たせすぎだぞっ!笑」ってちょっぴり冗談まじりに怒っていたけど、「不束者ですがよろしくお願いします笑」と、俺のプロポーズをOKしてくれた。
そう…、この線香花火が終わって明日を迎えれば、僕らは恋人という関係から夫婦になるんだ。
「あっ…!なーんだもう落ちちゃったぁ、ショックぅ…、勝負は私の負けかぁ……。」
残念そうな表情をしている唯。「最後の1本だよ。唯がやりなよ」
「えっ!いいの?!じゃあさ!一緒に持とうよ!一緒に持てば2人分の運で最後まで落ちないかもよ?」
そう言って唯は最後の1本の線香花火を持つ手を俺に差し出し、「手をゆっくり重ねてね」と言った。
ゆっくりと手を重ね、火をつける。バチバチと音を立てたと思ったらすぐに火種が落ちてしまった。
「あーあ、落ちちゃったかぁ……。ざんねんっ、片付けて寝よっか!」
「そうだな。明日の結婚式の準備は終わったのか?」
「もちのろんだよ!」ニコニコと笑顔を見せた。彼女のウェディングドレス姿を想像してニヤニヤしてしまった。
「なーにぃ?ニヤニヤしちゃってぇ、変なこと想像してますな?」
「んなわけあるか!さぁさぁ寝るよ!」
ニヤニヤを誤魔化すように布団に入り目をつむる。
「結婚式、楽しみだねっ。」ニコニコしながらそうつぶやく唯。
「幸せになろうな。」と返した。
まさに幸せの絶頂そのものだった。
このときの俺はまだ知るよしもない。あんなことが起こるなんて…。