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異世界大統領選出戦、前半戦

 対戦場。といっても対戦フィールドは一片が1キロメートルもあるので、まわりに観客席を設けられない。そこで対戦フィールドと離れたところにモニター付きの観覧席が設けられ、兵器の魂たちで盛り上がっていた。

 対戦フィールドはまるでウユニ塩湖のように白い地面に薄く水が張ってある。背景には青空以外に何もなく、まさにウユニ塩湖そのものだ。そして前述のとおり、対戦フィールドの両端中央にターゲットになるそれぞれの首都シンボルが設置され、その回りだけ陸地になっている。

 早速、対戦フィールドでロシア県と対面する。御多分に漏れず、多くの記憶を失い予備知識のない少年にロシア県側の兵器の魂の外見を予想することはできなかったが、実際に見ると雪国の兵器だけあって、銀髪に慧眼の外見の兵器の魂たちだった。

 まあ大和たちにとっては数十年来の旧知の仲なので、メンバーの紹介などもせず早速対戦が開始される。


 大和が説明を開始する。

「まずロシア県側の戦力ですが、Su-27やMiG-29など比較的新しく性能の高い戦闘機がいます。海軍も性能が高い艦が多い。一方こちらは旧式ばかりなのでまともに行ったら負けてしまいます」

 少年は「そだね」と相槌を打つ。

「戦術についてですが、まずこちらが電子戦機EC-1で敵のレーダーにジャミング(妨害電波)をかけます。ジャミングを受けたら兵器の視界は狭くなります。なので、敵は分散配置して視界を確保して、こちらの攻撃を受けたら集結して迎撃するものと思われます」

「それしかないよね」

「こちらの作戦ですが、陽動を繰り返し、隙を突きます。E-2C早期警戒機(空飛ぶレーダーサイト)、EC-1は後方から警戒とジャミングを実施してください。潜水艦『はるしお』は潜航状態で可能な限り前進してタイフーンを警戒してください」

 一同は「ラジャー」と答える。

「そして敵にこちらが一点突破しようとしていると思わせるため、F-1戦闘機は敵右翼へ攻撃を仕掛けてください。艦隊は敵左翼を目指してください」

 面々は「了解っ」と言って配置に向かった。

 

 ついに対戦が開始される。といっても兵器そのものに変身したり、兵器娘のように兵器のパーツをつけたりするものではない。ただ人間の形をした兵器の魂が、空を飛んだり海を泳いだりするだけだ。

 そしてEC-1がジャミングをかける。敵は霧が掛かったように視界が狭められる。

大和の読み通り敵は分散配置している。そこにF-1戦闘機が敵右翼へ突撃を開始する。ロシア県側もSu-27とMiG-29のロシア戦闘機が迎撃してきた。

「F-1、こちらが質的に不利なので撃破されたら終わりなの。陽動が主眼であることを忘れずに撃破されないようにして」

「ウィルコ」

 大和から通信を受けてF-1はそう了解の符丁を発する。

 F-1の魂は人間の外見のまま大空をかけ、同じく人間の格好をしたロシア戦闘機の魂と互いに、空中戦のセオリーである背後を取り合う「ドッグファイト」を始めた。

「大和より艦隊へ、敵左翼へ突入を開始してください」

その大和の号令一下、空母飛竜、護衛艦「たちかぜ」が突入を開始する。といっても時速千キロメートルの超音速で駆ける戦闘機と比較して、艦隊は時速五〇キロメートル程度しかないのでなかなか進まない。まあそれを考慮して艦隊はかなり前方に初期配置されていたが、なかなか接的(接敵)しない。

「艦隊へ、敵も艦隊を差し向けてきました。近づくと長射程の対艦ミサイルを撃ってくるので近づきすぎないでください」

「イエスマム」

 大和からの指令で艦隊はそう返答する。


 日本側の攻撃を受けて、敵の両翼はそれぞれに分割されていった。そしてさらに敵を分断するべく距離を取っていく。すると両翼の間に空白が生じる。

「今よっ。F-4EJ戦闘機とEC-1電子戦機は中央突破してっ」

 大和はそう言ってすぐさま指令を出し戦闘を進める。

 指令を受けた兵器の魂は「ウィルコ」と発する。

 ジャミングは、より敵に接近することで敵の視界をさらに縮小させることができる。EC-1が中央を進んだことにより、これと両翼の敵との距離が縮まり、ジャミングの効果が上がった。F-4EJはそれを利用して前線を突破、ロシア戦闘機の後方に回り込み、エネルギー弾のようなものを放ち、これを屠った。

 ロシア戦闘機の魂は「ニェットっ」と言って墜落し、そのままダウンした。

ただ問題はロシア県側の艦隊だ。空母(航空母艦)キエフと巡洋艦(水上戦闘艦の一種)ウシャコフはともに長射程の対艦ミサイルや対空ミサイルを満載していて、戦闘機で近づけないし護衛艦でも手が出せない。

「ここは私の出番のようね」

 満を持して登場したのは他ならぬ、日本の主将である戦艦大和だ。

 そこに首都シンボルでお留守番の少年から通信が入る。

「大和さん、ロシア艦隊は長射程の対艦ミサイルや対空ミサイルを搭載しているんだよね。手が出せないんじゃ……」

「ここは私が被害担当艦になるわよ」

「被害担当艦ってなに?」

「もちろん私が艦隊の前に立って敵の攻撃を一手に引き受けるのよ」

「って、そんなことしたら大和さんが撃沈されちゃうよお」

「大丈夫。私の防御力は兵器史上最大、空前絶後の防御力を誇るから、核ミサイルでもない限り一発では沈められない。これは私にしかできないわ」

「でもお……」

「『たちかぜ』も対空ミサイルで対艦ミサイルを迎撃してくれるから」

「って言うか、潜水艦の『はるしお』さんは何やってんの?」

「彼女はタイフーンが前進してきて、こちらの首都を核攻撃しないように牽制しないといけないから手が離せないの」

「戦闘機に対艦ミサイルとかないのかな?」

「少年、忘れたの。ロシアの艦には長射程の対空ミサイルがあるってことを。日本の旧式戦闘機がいったら瞬殺されるわよ」

「うう……まあ、死ぬわけじゃないからまあいいかな……」

 少年は思うようにいかず少し膨れているが納得したようだ。

 大和は「いざっ」と気合を入れて前進していき、あとに護衛艦「たちかぜ」が付き従う。当然ロシアの艦隊はこれをチャンスとばかりに、一斉に対艦ミサイルを乱射して来た。上空からもTu-22爆撃機が対艦ミサイルを撃ってくる。しかもかなり距離があるのに。

「大和さーんっ」

 少年はそう叫ぶが大和は動じない。「たちかぜ」も黙ってはいない、対空ミサイルを発射して対艦ミサイルを迎撃する。が対艦ミサイルの数が半端ない。40発近い。一方「たちかぜ」は対空ミサイルを2発ずつしか撃てない。

「私が行きますっ」

 救援に駆けつけたのはF-1とF-4EJの両戦闘機だ。機関砲……だと思うエネルギー弾で対艦ミサイルを模したエネルギー弾を撃墜していく。が、この対艦ミサイル、かなり耐久性が高い。なかなか墜ちてくれない。

 しかもロシア空母キエフが艦載機(空母搭載機)Yak-38を発進させてきて混戦となる。艦載機と言っても兵器の魂は一機種に一つしかないので単機だが。

 迎撃を掻い潜って対艦ミサイルが大和に接近、大和も対空射撃を開始する。しかし大和の砲は戦前の物であり、命中精度は低く連射も遅く、なかなか命中しない。

 そしてついに大和は被弾した。大和は「くっ」と短く発する。ヒットポイントゲージが表示され一気に三分の二まで減った。

 しかし大和は負けない。艦名に日本の古称である「大和」を冠する艦に負けは許されない。再度前進する。

 そして再度援軍が駆けつける。今度はEC-1だ。敵の対艦ミサイルにジャミングをかけて、無効化した。

「さあ、ここからよっ」

 大和はそう言うと力強く走り始めた。そしてついに大和の46センチ主砲が火を噴いた。巨大な発砲炎と、空気を引き裂き海面を割らんばかりの轟音とともに巨大なエネルギー弾が放たれる。

 逃げ惑うロシア艦隊。しかし大和は敵に接近するのにつれて命中精度が増してくる。そしてついにロシアの巡洋艦と空母を海の底に叩き込んだ。

「さ、ここからが正念場よっ。タイフーンに核ミサイルを撃たれたらすべてが終わるわ。空母飛竜、対潜ヘリ(潜水艦を捜索して攻撃するヘリ)を発艦させてっ」

 大和の号令一下、空母飛竜の甲板から対潜ヘリHSS-2Bが発艦していく。とカッコよくは書くが実際には、手のひらサイズに縮小されて飛竜の胸につけてあった対潜ヘリの魂を空に投げると、兵器形態に戻って飛んでいくだけなのだが。

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