何者でもない何か
誰かに望まれるというのは
幸せなことだ
望まれて生まれてきた
親にも周りにも
だが望まれずに生まれてきた
それを取り囲む環境に
期待されて生きてきた
親にも周りにも
だが期待されず生きてきた
それを取り囲む環境に
ごく限られた範囲の中で
守られながら生きてきて
ごく限られた範囲の外で
責められながら生きてきて
それでも
誰かに望まれるというのは
幸せなことだ
望まれて生まれたはずだった
親にも周りにも
だから排除されてきた
それを取り囲む環境に
期待に応え続けたかった
親にも周りにも
だけどそれは適わなかった
環境などには関係もなく
それだから
誰かに望まれるというのは
幸せなことだ
それを知っている
異物だ
私はおそらく
異物なのだ
内と外を繋ぐ架け橋足り得ず
周りを率いる指導者足り得ず
何が出来るわけでなし
守られるものも
守るべきものも
気付けばどこかで失って
なのに今更力を手にして
これで何が出来るというのか
これで何を望めというのか
それでも
誰かに望まれるというのは
幸せなことなのか
自らを取り囲む環境に
望まれて力を手にさせられた
だが自らを囲む環境の中には
その力を望むものがいた
望むものが使えばいい
手にした力を見てそう思う
けれど失えば身の破滅だと
それぐらいのことは承知している
自分は自分だけのものじゃなく
望まれている誰かと共に
それがこれまで望まれていたことと
それぐらいのことは承知している
それだから
誰かに望まれているのなら
そう演じることが幸せなのか
それならばせめて
望まれなかった者たちからすら
望まれるように生きてみよう
何者であるかも分からないから
何者でもない
ただ望まれたものであるように
そうすれば
誰かに望まれることの幸せが
自分で望む幸せとなるかもしれないから
自分が自分でいられる時は
自分が思っているよりも短くて