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 ぱんぱらぱっぱー!時間だよー!冒険にでよう!冒険に出よう!冒険にでよう!


「んっ⋯うるさいアラームだ⋯毎回毎回、さっさと行け感が凄いな」

 まぁおかげで寝過ごさないで済むけど。


「うぅー⋯⋯あぁ、早く行きたい。けどベッドから出たくない⋯このベッドが1番てごわい魔物だ」


  ダンジョン最大の強敵はキングサイズのフワフワベッド、これで間違いない。俺が制覇した暁には教科書にそう書いてもらおう。⋯⋯かっこ悪いかな?


「⋯くだらない事を考えてないで、さっさっと行くとしますか」


 その前にストレッチしてトイレ行って⋯ふぅ、これで準備は万端だ。


「待ってろ1000階!行くぞ999階!!」


 ワクワクする気持ちを叫び声に変えて俺はセーフティールームを飛び出した。



「⋯近っ。」


 セーフティールームを飛び出した俺は少し直進した後、すぐに曲がり角を曲がった⋯曲がったら目の前に階層主のいる部屋がありました。


「⋯感傷にひたらなくて良かった。ひたってたら絶対に落ち込んでた」


 頂上がゴールだとすると、最後の最後の階であろう999階が、こんなに狭いなんて考えてもみなかった。


「⋯しかも階層主が見えないし⋯ここに来て罠か?⋯考えても仕方ない、階段まで走るだけだ!ギアチェンジ!トリプルブースト!行くぞぉぉぉぉ!!!」


 部屋の中に階層主の姿は見えなかったけど、罠だとしても突っ込むしかない。まぁ倒されたとしても入り口からやり直しになるだけだからな。とりあえず突っ込んじゃえっ!て感じで右足を踏み込んだ。


「まじで階層主いないの!?⋯どう言う事なんだ?正直テンションガタ落ちなんだけど⋯はぁ⋯登るしかないか」


 部屋の中には本当に誰も何も居なかった。それでもゴールは目の前だ。自分を奮い起こして階段目掛けて走り出す。


「うぉぉっつぃぃぃ⋯なんだよ!いったいなぁもう!!」


 階段の一段目と階層主のいる部屋の境目に、透明な壁がある。思いっきり走り出した俺は、思いっきり突っ込む事になった。


「なんなんだ、この部屋?こんなの初めてだぞ」


 階層主もいなけりゃ階段も登れない。どうしろってんだろ?


『ようこそ、挑戦者。長い、とても長い時間、ここまで辿り着く者を待ってたんだ⋯キミのやり方は予想外だったけどね』


 ハハハハッと笑いながら現れたのは小学校高学年くらいの男の子だ。これは⋯もしかしてダンジョンの声の主か?


 この階段を上がればゴールなんだけど⋯正直迷ってるんだ。キミのやり方は間違いじゃない。むしろ、よく思いつき、それを実行できるまで頑張ってきたね!って褒めたいくらいなんだ」


 ⋯こそばゆい気もするけど⋯素直に嬉しかった。だけど、それなら何を迷ってるんだろう?


「僕がダンジョンを地球に繋げた時、『立ち塞がる障壁を乗り越えて頂上まで辿り着いた者に、何でも一つ望みを叶えてあげる』って言ったんだ。キミたちの世代には後半だけしか伝わってないみたいなんだけど」


 確かに、最初の文章は知らなかった。俺が習った教科書にはその後に、『途中で倒れた者は入り口まで戻してあげるから安心して挑戦しに来てね』って言葉が続いていた。ダンジョンを進むには闘う事が常識になった今、重要な方を強調して子供達に教えてきたのかも知れない。

 

「キミたちに伝わっていない、『立ち塞がる障壁を乗り越えて』ってところが問題なんだ。僕としては勿論、全ての階層の主達や道中で出会う魔物達を倒してって意味だったんだけど、キミのやり方でも言葉の意味は通るんだ」


 ⋯まぁ文字通り乗り越えては来たからな。飛び越えたり、股の下くぐったりしてだけど。


「間違えでもないし、正解でもない、僕が思いつきもしなかった方法で上がって来たキミにはご褒美をあげたい気持ちもある。そこで、キミには今からここの階層主であるエンシェントドラゴンから1分間逃げ切って欲しいんだ。」


 エンシェントドラゴン⋯漫画やアニメ通りならば相当やばい、古代龍のはずだ。しかも1分⋯あまりにも短い時間設定が、その強さを物語っている。


「慌てないで。一方的に新しいルールを追加したんじゃ公平じゃないからね。この勝負をキミが受けないと言うなら、今すぐ階段を登れるように魔法を解くよ。その代わり、キミが受けてくれて1分間逃げ続ける事が出来たならば望みを三つまで叶えてあげる。もちろん、何でもね」


 なるほど⋯受けなくても望みは叶うし頂上に行く事もできる。受けた場合は、倒されたら入り口からやり直す事になる代わりに成功できれば三つも望みを叶えてくれる、って事か。


「あっ、これも言っておかないと公平にならないね。キミのやり方で、もう一度一階からやり直す場合は階層主たちもそれなりの対策をとるはずだから今回みたいに上手くはいかないと思う」


 確かに、前半はともかく後半の階層主達に二度も同じやり方では通用しないだろうな。


「それも踏まえた上で、キミにはどちらかを選んで欲しいんだ。僕としては勝負を受けてもらいたい気持ちが強いんだけどね。キミがどうやってエンシェントドラゴンから逃げるのか見たいからね」


 どちらかを選ぶ⋯うん、これは迷う必要もない選択だ。もちろん、


「やるに決まってるー!ここですんなり頂上まで通してもらっても制覇した事になんないじゃん!そんなの、つまらないにもほどがある!」

 

 正直、望み云々(うんぬん)よりも階層主を振り切ってゴールしたい!!


「ハハハッ、そっちかぁ!やっぱり面白いね、キミは⋯もしかしたら、もうここまで来れないかも知れないんだよ?」

「ずっと過程よりもダンジョン制覇って結果だけを求めて来たから、このままゴールしてもいいんだけど⋯このままゴールしても、その先が楽しくなさそうじゃん!」

 

 俺はその先も楽しみたい!


「ハハッ、もう頂上まで辿り着いた後の事を考えてるのか!油断しているわけじゃなさそうだし⋯それなら僕も楽しみにしているよ。⋯楽しませてくれるんだろう?」

「そんなこと聞かれても分かんないけど⋯楽しんでくれたら嬉しい!」

「⋯⋯そうか⋯ふふっ、そうか。それなら期待だけさせて貰うとするかな。それくらいはいいだろう?」

「それは嬉しい!期待と、出来れば応援してください!!!」

「あははっ、古代龍君。申し訳ないけど、そう言う事になってしまったよ」


 声の主⋯ダンジョンの主は虚空に向かって話しかけている。


「⋯この雰囲気で勝ったら我は悪者ではないか?」


 何もなかったはずの空間から現れたのは誰がどう見ても強大な力を持つであろう雰囲気を放つドラゴンだ。


「⋯えっとエンシェントドラゴン⋯さん?ですか??今日は宜しくお願いします!」


「そうではあるが⋯調子が狂う」


 まぁそうなるか⋯これから二人で闘わなきゃいけないんだもんなぁ。


「よろしく⋯でいいのか?⋯これ以上、話が進む前に我としては闘いたいのだが」

  

 エンシェントドラゴン⋯古代龍の顔は、困ったような、疲れたような、何とも言えない表情になっていた。


「⋯じゃ、そろそろはじめようか!2人とも準備は⋯よさそうだね!それじゃぁ、、ゲームスタートォォ!」


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