起
今日もまた、俺は魔女子に起こされる。
「坊ちゃま、お早うございます。とっても良いお天気ですよ」
凛とした声が耳に心地良い。
部屋のカーテンを一気に開け、魔女子は窓を全開にする。
高級羽毛布団から顔を覗かせ、俺は薄目を開けて声のする方を見た。
魔女子は真面目に働く気のようだ。
首元まできっちりボタンを止めた白いレースのブラウスに、襟の前には水色のリボン。その上に着た膝下丈の黒色のワンピースは我が家のメイド服だ。腰まである長い黒髪は後ろで二等分にして左右対象の三つ編みに。軽く白粉を叩いただけの薄化粧だが楚々としていて品がある。
魔女の女の子だから魔女子。
「まじょし」ではない。
「まじょこ」と呼ばれる魔女。
この屋敷につかえている。
我が家に、メイドとして。
またある日、俺は魔女子に起こされる。
「坊ちゃま。お早うございます。今日は学園に行く日ですよ」
高級羽毛布団から顔を覗かせ、薄目を開けて声のする方に視線をやる。
魔女子は真面目に働く気のようだ。
首元まできっちりボタンを止めた白いフリルのブラウスに、襟の前には水色のリボン。その上に膝下丈の黒ワンピのメイド服。腰まである長い黒髪は後頭部の下の位置で一つに括り団子状に巻いて纏めている。軽く白粉を叩いただけの薄化粧。しずしずとした清楚な魔女子の姿を見ると、日々繰り返し訪れる眠たい朝が、爽やかで新鮮なものに感じられて不思議に思う。
またまたある日、俺は魔女子に起こされる。
高級羽毛布団は中にヒヨコかアヒルでも紛れ込んだのか、もぞもぞと何かが動いている。ギシギシとベットが軋み、体が少し揺れる感覚がある。ママレードのような甘い香りが鼻腔をくすぐる。俺の頬に生温かい吐息がかかる。
耳元に吹き込む柔らかな微風に、小さくそっと囁く声。
「坊ちゃま。ふふっ」
目を開けると、小悪魔のような不敵な笑みを浮かべた魔女子の顔が間近にあった。
今日の魔女子は不真面目のようだ。
魔法で色を変えたのだろう。
光の粒子を集めたような、透き通るような金髪のポニーテール。溢れた金糸の髪がパラパラと俺の顔にかかる。
上から見下したような、誘うように挑発する目。(実際、ベットに仰向けに寝転ぶ俺に魔女子が覆い被さっているため見下ろされている)
ブラウスの首元のボタンは……まるで止めておらず、白い胸の谷間がちらり……ぼちぼち……見えた。
魔女子は時々、俺を色香で誘惑する。
男なら普通に嬉しいし喜ぶだろう。
性別が男で健全なる16才であるならば、間違いなく嬉しいし、普通に喜ぶ。
もちろん俺も、もれなく嬉しい。
なので、俺は男としての本能に抗うことなく、魔女子によって仕掛けられる、魔女子とのプチ甘い朝の目覚めの時をただ堪能するのだった。