第2話 異世界転生の転生?
夜にもう1本投稿予定です。
――数時間前。
『……起きるのだ』
誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくり目を開けると真っ白い空間に佇んでいた。
(あぁ、僕は死んだのか……)
確かコンビニに寄った帰り道、信号無視の車にはねられたんだ。
最後の1個だったお気に入りのお弁当が買えてラッキーだと思ったのに。
(ところでここはどこなんだ? 天国にしては変だし……)
しばらくすると僕の目の前に淡い光が集まり出す。
驚いていると人の姿にも見えるが輪郭だけでよくわからない。
『目覚めたか、ミオ。突然ですまぬが時間が無いので手短に話す』
さっき頭の中で聞こえた声だった。
たぶん声の主は僕の目の前にいる人の姿をした何かだろう。
(えっと……?)
何が起きているのかわからない僕を無視して話を進める謎の声。
『我は光の神アラミオン。お主は元々こちらの世界の住人であったが事情により別の世界へ転生していたのだ。お主は今後こちらの世界で生活しながらやってもらいたいことがある。そのために我の加護を授けよう』
あれ、僕ってこのまま死ぬんじゃなくて生き返れるの?
まさかの急展開に頭が追い付かない。
『その力を使って世界中を巡り女神像を探し出すのだ。最初の女神像は近くの街にある古い教会にある。そこで祈りを捧げ人間族を増やし――』
ここで急に声が聞こえなくなる。
真っ白い世界が広がったまま何の音もしない。
しばらくすると真っ白だった空間が突然黒く塗り潰される。
『助けて……、お兄様』
さっきの声とは違う若い女性の声が頭の中に聞こえる。
そして意識が急激に遠のいていった。
☆☆☆
「う、うーん……」
目を覚ますと見慣れた天井では無いことに気付く。
気怠い体を無理やり起こして周りを見渡すと小さな石室だった。
火の点いた松明が数本、頭のない石像を照らしている。
「……ここはどこだ?」
静かな石室でパチパチと松明の弾ける音だけが聞こえる。
今のうちに記憶を整理するか。
僕の名前は由井光旺、25歳。
お笑いが大好きで今はピン芸人として活動している。
頭に「売れない」の文字は必要だが。
地方の営業へ行った帰りに女性マネージャーから言われたのだ。
「頑張ってね」
黒い髪に黒い洋服と全身黒で統一された女性。
新人マネージャーなのか事務所では1度も見たことがなかった。
まさかあの言葉が今の状況の答えなのか。
「そう言えば最後に聞こえた声に似てた気が」
あれは何だったんだろう。
それにアラミオン様は僕が元々この世界の住人だと言っていた。
「僕って日本人だよな?」
一瞬、大掛かりなドッキリかと思ったけれど僕に仕掛けても視聴率が取れるとは思えないので却下だ。
考えても仕方がないので石造りの台座から地面に下りる。
「おっと……」
地面までの距離が思ったより高くてバランスを崩して倒れそうになった。
「この恰好って何だ?」
コンビニへ行った時はジャージ姿だったのに今は薄汚れた布を頭からスッポリ被ったような状態で足元を見ると裸足だった。
そこで自分の足を見て違和感を感じる。
「僕の足ってこんなに小さかった?」
片足を上げながら触ってみると確かに僕の足だ。
頭を掻きながら手を見ると足と同じように手のサイズも小さい。
慌てて自分の体をペタペタ触って最後に下半身を確認……子供だった。
「ここって本当に異世界なんだ……」
アラミオン様から授かった加護のおかげで魔法やスキルの使い方は何となく理解している。
ここでゲーマーの知識が役に立つとは思わなかったよ。
まずは自分自身を調べるためにステータスの確認をする。
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名前 :ミオ(人間族)
職業 :なし
魔法 :創造
スキル:鑑定、収納
ギフト:女神の加護
加護 :光の神アラミオン
===============
目の前に透明なスクリーンが現れて文字が表示されている。
「これが今の僕自身ってこと?」
名前はフルネームから短くなっていた。
親しい人にはミオと呼ばれていたので問題ない。
職業が「なし」なのはこの世界で仕事に就くのか?
せっかく異世界なんだから勇者や賢者を目指すのも悪くないね。
芸人の仕事が無くてゲームで遊んでばかりだった僕を舐めるなよ。
「次は魔法やスキルだな。詳しく調べれば何かわかるか」
【 創造 】
組み合わせることで様々な物を創造できる。
「えっ、それだけ?」
持っている中で1番使えると思ったのに組み合わせが必要だとは。
先に他のスキルを確認するか。
【 鑑定 】
人や物を鑑定することができる。
【 収納 】
時間停止のうえに収納個数やサイズに制限なし。
「えっと……」
最後はギフトと書かれた項目だ。
せめて何か期待できる物をお願いします!
【 女神の加護 】
女神の声を聞くことにより加護を授かることができる。
「……」
アラミオン様は僕にこの世界で生活しろと言っていた。
それなのに生活で使えそうな魔法やスキル、食料さえ見当たらない。
「こんな状態で僕にどうしろと?」
情報量の少なさに思わず頭を抱えた。
色々な知識を総動員して何とかしたいけれど無理ゲー過ぎない?
頭を冷やすために部屋の隅にあった湧き水を覗き込む。
「……誰だ、この子供は?」
水面に映っていたのは黒い髪に黒い瞳の女の子。
元の世界なら間違いなくトップアイドルかモデルで大成功している。
僕が変な顔をすると水面の彼女も同じような顔をしていた。
「まさか、これって僕か!?」
由井光旺の面影がどこにも残っていない。
可愛い少女のように見えるけれど下半身には……男だったはず。
この後どうしようか悩んでいると部屋の外から話し声が聞こえる。
慌てて隠れようとするが小さな部屋にはそんな場所は無かった。
そして部屋の扉が開いて何者かが入って来る。
「……お前は誰だっ!?」
アラミオン様、ゲームオーバーが近いです。
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