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第1話 プロローグ

新しい小説をスタートさせました。



「13番、3000! 他にはいませんか?」


 体育館ほどの広さがあるステージ上では男性が番号と数字を読み上げる。

 男性の顔はハッキリと見えないが犬顔と言うより犬そのものだ。


「……」


 そしてステージ中央には1人の少女が何も言わずに立っている。

 魔法による照明効果なのかとても綺麗に見えた。


「3500!」

「3800!」


 薄暗い会場からは大勢の人の叫ぶ声が聞こえてくる。

 次に僕もあのステージに立たされると思うと恐怖で体が震えてきた。


「他にはいませんか? このエルフはフォロロ森林で発見され捕獲されました。まだ男を知らない少女のエルフ()()を手に入れるなら今しかございません!」


 進行役の男性がそう言ってエルフの少女の体を隠す黒い外套(がいとう)()ぎ取ると薄い布1枚だけを身に付けた裸体が会場にいる人たちに(さら)される。



「「「おおぉぉーーっ!」」」



 その途端、会場内が大きく沸き上がる。

 ステージの横で待機させられている僕にもその声が聞こえる。

 そして客たちからは様々な感想が飛び交っていた。


「エルフとは聞いておったが少女とは!」

「美しい……」


 薄絹のような布越しからでも伝わる少女の柔肌と見えそうで見えないシルエットに思わずごくりと唾を飲み込む音が会場から聞こえる。


「くっ……!」


 エルフの少女は自分を見つめる好色家の視線に耐え切れず顔を背けた。

 本当はこの場から逃げ出したいのに禍々(まがまが)しい首輪がそれを許さない。


「そのエルフは本当に男を知らないのか?」


 客の中の1人が進行役の男性に質問を投げかける。

 その質問がそんなに大事なことなのか?


「おい、お客様が質問しているがどうなんだ?」

「……はい。経験はまだありません」


 首輪の呪いにも似た力に逆らえず悔しそうに答えるエルフの少女。

 その後も下卑(げび)た質問が続き真っ赤な顔をしながらも答えていく。


(見ていられないな……)


 僕は耳に入ってくる情報を遮断する。

 下品な質問が終わるとまた数字が読み上げられた。


「4500!」

「本日最高額が出ました! 他にはいませんか?」


 しばらくステージ上から進行役の男性が会場を見渡すが次の声は上がらない。


「29番、落札です! おめでとうございます」


 そう言って木槌を叩く音が会場に響く。


「「おぉーーっ!」」


 落札の声にホッとする客へ周囲から惜しみない拍手が贈られる。

 その隣ではエルフの体を舐め回すように見つめる男性が29番の客と握手を交わす姿が見えた。

 エルフの少女は改めて黒い外套を被せられてステージ横へはけていく。



 ――闇の奴隷市場



 この異世界には奴隷制度が存在していた。

 一般奴隷、戦闘奴隷、性奴隷、犯罪奴隷の4種類があるが犯罪奴隷以外には最低限の保証があり、雇い主には寝床や食事を与える義務が発生する。

 そして雇い主が故意に奴隷を殺害すれば自身が犯罪奴隷に落とされてしまう。

 このような奴隷は通常、国が管理している奴隷商館で法的に売買される。


 けれど中には違法な経緯で集められた奴隷たちが売買される場所があった。

 もちろん保証なんてものは無く生かすも殺すも雇い主の自由。

 過去には珍しい種族と言うだけで購入直後に殺害されてそのまま剥製(はくせい)にされた事件もあったらしい。


 ここは心に潜む闇が暴かれる場所。

 闇の奴隷市場で奴隷を欲しがる奴に(ろく)な者はいない。



 ――スッ。



 次の商品を準備のため会場から照明が消える。

 もちろん次の商品になるのは――。


「いくぞ、ガキ?」


 僕は男性に連れられて暗闇に包まれたステージへと歩いて行く。


(神様、こんな話は聞いてませんよ?)


最後までお読みいただきありがとうございます。

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