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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第一章
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星波月③

結局、病院にお父さんはいなかった。

病院内を手分けして探し、鳴海さんは虱潰しに関係者の人達に聞きまわった。

タクシーに乗っている時に、二人のお兄ちゃんにメールを打っておいたがまだ返信はない。


ここまでくると、鳴海さんの言葉を一瞬でも怪しんでしまった自分がとても愚かに感じてしまう。

殊の外一刻を争う事態だったのだと感じる。

鳴海さんの聞き取りでは数人がお父さんが病院から出ていく姿を見たようだ。

上着を着ていたものの、下は白衣のまま。

そして生気の抜けきった表情だったとのことだ。


(そんな深刻な状態に見えたのなら止めてよ!!)


やり場のない苛立ちを心の中で叫ぶもぶつけられる立場じゃない。

少しでも躊躇した自分にも責任がある。


「すまない。病院関係者には先生から目を離さないで様子をみて下さいと言っておいたのだけれど、行くところがあると言い残して強引に出ていかれたようだ。」


鳴海さんにも勿論責任などない。

むしろ感謝しなければならない。


(どうすればいいの、、)


考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

なのに気持ちだけが逸る。

私の心と身体はバラバラになる寸前だった。


私はお父さんが横になっていたという部屋の近くの待合室に砕けるように座った。

私の携帯電話の発信履歴はすぐにお父さんの携帯番号とメールでいっぱいになる。

もちろん折り返しの電話やメールなどない。


(行くところ、、家!?)


トゥルルルル、、

私の携帯電話が鳴った。

聞きなれた音なのに、これほどまでに待ちわびた音があるだろうか。


「もしもし、月か!?」

咄嗟にとってしまい誰からの着信か見ていなかったのだが、受話器越しの相手は誰よりも私を落ち着かせてくれる声だった。


(大地お兄ちゃん、、)


「すぐに返事できなくて悪かった。父さんの様子はどう?」


私は今にも泣きそうな気持を押し殺すと、震える声で懸命に事の顛末を話した。


「わかった。病院を出たっていう目撃があるんだね。その行くところというのが検討つかないけれど僕のほうが自宅に近いから、一旦自宅から見て回るよ。月は父さんが万が一だけれど病院に戻ってくる可能性も否定できないし、探し疲れているだろうからそこで少し休んで待機して。もし自宅に居なかったら、自宅から病院までの父さんの通勤する動線を追ってみる。そして病院で合流しよう。

場合によっては僕から警察にも連絡する。月は携帯電話の残量に気を付けて。マナーモードになってはいないと思うけど、電源が切れてしまっては父さんからの返事も月への連絡もできなくなってしまうから。」


聞いているだけでとても安心する声。

こんな状況でも落ち着いて話してくれる。

そしていつもいつも私を気遣ってくれる。


お父さんも心配。

だけど不安で心がいっぱい。


(大地お兄ちゃんに会いたい、、)


私はこんな時まで我儘を言ってしまう。


「・・わかった。それじゃあ、僕の携帯の電話番号を鳴海さんに伝えて。関係者の方にも教えてよいことを伝えて。月、道中は考え事をしないこと。父さんは見つかるから大丈夫。」


電話を切ると私はすぐに大地お兄ちゃんの言いつけを守った。

鳴海さんにお礼と事情を伝えると快く快諾してくれた。

病院で待機し、お父さんがもし戻ってきたら連絡してくれるとのことだ。

時と場合によっては連絡先が多いほうが良いということで私は兄妹3人の連絡先を伝え病院を後にする。


これから先、辛い現実が待つ場所へ行くために。


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