運命
「大地兄さん・・。」
血の染まった手をした月が僕の前に立っている。
「月さ・・ん、なんで・・どう・・して。」
背中に致命傷を負い倒れている鳴海が月の存在に気づき声を絞り出す。
「鳴海京介、最後に月に謝れ。」
「兄さん!・・いいの・・。」
月は鳴海からの謝罪を拒否する。
「兄さん・・私・・駄目だった・・。」
月は涙を流しているようだった。
「月・・。」
「兄さん・・私ね。最後まで星波大地さんを忘れることが出来なかった。」
僕は鳴海の血で汚れた月の手を取り天から注ぐその雫でゆっくり拭う。
「これ・・京介さんが私たちの家から取ってしまったお父さんの手紙です。」
再び綺麗になった月の手から僕は手紙を受け取る。
{家族へ}
そう書いてある。
確かに僕の父、星波宇宙の字だった。
「星波大地さん、元の月に戻ってもいい?」
月が僕から一歩距離を取る。
「ああ・・もういいよ。」
僕は微笑み、静かに答えた。
「星波大地さん、今度会ったら、心も体もあなたのものにしてくれますか?」
月はそこにいるのに。
もう霞んで消えてしまいそうな。
とても儚いとても美しい女性がそこにはいた。
「ああ、約束する。」
月は天使の様な微笑みで僕の言葉を受け取った。
「お勤めに行ってきますね。」
そう言って一礼すると僕の前を去っていった。




