暴かれた闇
石火矢院長が森理事長に呼び出される。
「森が直々に呼び出してくるとは。儂もとうとう理事長の承認かぁ?だとすれば手間が省けるわ。」
石火矢は今後のビジョンを考えるとニヤついた。
理事長室の階にエレベーターが止まり理事長室まで横柄な態度で歩き出す。
理事長室のドアの前で立ち止まると、ノックをせずにドア越しに声をかける。
「お呼びですかな理事長。」
石火矢は精一杯の尊敬語を述べると森の言葉を待たずにドアを開ける。
「どうぞ、お座りください。」
森は表情を変えず石火矢に座るよう伝える。
石火矢はドカッ、、と音を立て指定した場所に腰を下ろた。
「どんな要件ですか理事長。」
石火矢は笑みを浮かべながら森に質問をした。
「石火矢院長。お忙しい中ご足労いただきありがとうございます。実は石火矢院長にお伝えしたいことがありましてお呼びしました。」
石火矢は森の言葉にさらに笑みを零す。
(とうとうかぁ、正規の方法ではこいつは首を縦に振らないと踏んでいたが、圧力でも掛ったか?いずれにしても結果オーライだな。)
石火矢は森の言葉を今か今かと待ち構えた。
「その前に二、三質問してからでもよろしいでしょうか?」
(森がもったいぶるとはな。まぁ、いい。)
「いいですよ。どうぞ、どうぞ。」
石火矢は勝ち誇った顔で森の質問に答える姿勢を見せた。
「お亡くなりになられた東海林虹太郎さん。埼玉県の県議員をされておられた方です。当時石火矢院長あなたが主治医でしたよね。」
「ああ、そうです。残念でしたね、お亡くなりになられて・・まだお若いのに。星波さんの力も及ばず。まぁ、それでも長く生きられたのではないでしょうか。手術時は難しい状態だったと聞いていたのでね。」
石火矢は饒舌に話す。
「そうですか。当時で考えると主治医が副院長の石火矢先生、執刀は星波先生なんですね。東海林さんの治療の件で誰かご相談した方などいらっしゃいますか?」
一瞬石火矢の表情が曇る。
「・・いえ。特には。東海林さんのご家族、特に奥様に儂は善福の信頼を頂いておりましたので・・理事長、何が仰いたいのか意図がわかりません。どういう事です?そんな昔話。」
石火矢は口調を荒くして森に質問をする。
森は引き出しから封筒と画像の写真を取り出すと石火矢に手渡た。
「なんです?これは?」
無造作に封筒から手紙を取り出すと読み始める。
読み進める石火矢の顔から血の気が見る見るうちに引いてくる。
もう手紙を読み終える頃には写真など見ることが出来ないほど覇気を失っていた。
そこにいるのは年齢相応かそれ以上の初老の男だった。
「石火矢雷炎院長。お伝えしますね。」
石火矢は動揺を隠せず、蒼白な顔で森を見つめた。
「石火矢雷炎院長。あなたは東海林虹太郎さんの故意による不法医療行為及び出雲砂羽さん殺害の首謀者として疑いがある為警察にその身柄をお引渡しします。」
(、、何!?何を言っているのだ?、、警察?俺が捕まるのか?)
森の言葉に理解するまで時間が要する。
そして沈黙の時間の中で表情を歪ませた石火矢は森の言葉を噛み砕くと反論し始める。
「な・・何を根拠にそんなこと言っているのだぁ!儂がいつそんなことをしたと思っている!?こ・・こんな手紙や写真だけで・・そんなでっち上げを偉そうに言うなぁぁ!!」
血相を変え言葉を荒げ豹変する。
森はそんな石火矢を他所に淡々と話を続ける。
「お渡しした物の内容はご理解されましたね。それは東海林虹太郎さん直筆のお手紙と星波先生が執刀するもっと前からの画像です。東海林虹太郎さんから亡くなられる数日前、私に直接お渡ししていただきました。東海林絵巻さんと共謀されあなたがたに殺される事を知っていながらそれでも石火矢さんと奥様を信じ、満身創痍の中、全身全霊戦い抜いた一人の男性の戦歴です。」
森の雄弁な言葉に石火矢は怖気づいてしまう。
「ふっ・・で、なんだっけ?もう一人・・出雲なんとかっていう人?首謀者だとか言ってるがあんた、証拠もなく言っているようならば名誉棄損で逆に訴えるぞ!」
石火矢はもう森を名前で呼ぶことすら出来なかった。
冷や汗はさらに流れ続けた。
トントン、、
理事長室の扉がノックされる。
「どうぞ。」
森はノックの主に許可をする。
何が起きているか飲み込むことが出来ない石火矢は流れに飲まれるしか出来なかった。
理事長室にもう一人。
入ってきたのは空条だった。
(空条!?)
予想しない顔に石火矢は驚く。
空条は森に会釈をすると話始める。
「出雲砂羽さん殺害の真相は私からお話させていただきます。」
空条は当摩に渡した資料と同じものを石火矢と森の間に隔たれているテーブルへ置いた。
鳴海医師を利用した不法医療行為、情報の改ざんの首謀。
そして東海林絵巻に宛てた手紙を公開する。
石火矢は一目見るだけで頭を抱え一言も喋ることはなかった。




