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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第二章
55/60

大地(新)⑫

悲しみに囚われ動きを止めてしまってはここまでやってきたすべてが水の泡になってしまう。

このところ毎日空条から連絡があるということは僕が殺されたと何らかの形で知ったのだろう。

まずは冷静に。

一つ一つ対処していかなくてはならない。


(まずは無断欠勤の言い訳からだな。)


どうにかして空条と接触する必要がある。


(なんとかならないものか、、そうだ。)


多少のリスクは致し方がない。

後は場所。

個室で、声が漏れる心配がない。

病院関係者が来なさそうなそんな都合の良い所。


(あった!)


カラオケ店。

そういえば僕は一人では入ったことがないな。

環や職場の友人とならあるが。

僕のイメージからも連想させ辛く、こんな真昼間だからこそ丁度良いだろう。

僕は第一病院から一番近い公衆電話に行く。

そして小さく千切った紙を床に置き受話器を上げる。


(空条は感がいい。機転も効く上頭の回転も速い。そこに賭けてみよう。)


僕は病院近くの公衆電話から空条の電話番号にかける。

非通知になるのは間違いない。

トゥルルルル、、トゥルルルル、、トゥルルルル、、ガチャッ、、

僕はコールを数回鳴らし受話器を置く。

僕は公衆電話を出て所定の場所へと移動をした。


「いらっしゃいませー!お一人ですかー?」


(いちいち語尾を伸ばすなよ。)


緊張感が解けるといつもの調子に戻ってしまう。

しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。


「一人で。」


「ご利用時間はどうなされますかー?」


(ご利用時間。どの位待つか読めないな。正直言うと気付かない可能性だってある。今からだと、、)


「6時間位か。」


「6時間ですとフリータイムの料金の方がお安くなりますけどいかがですかー?飲み放題も付きますよー。追加料金でアルコールも飲み放題となりますー。」


(真昼間から飲むかよ。・・いや飲むか環は。フリータイムか。)


「じゃあ、フリータイムでお願いします。アルコールはいらない。もしかしたら連れが合流するかもしれないので・・空条で入っているって伝えてください。」


この際仕方がない。

最善の方法でカウンターへ依頼する。


「畏まりましたー。機種は何になさいますぅー?現在はジョイとダムが空いていますー。」


(女医?気道確保困難症例の管理技術(DAM)?・・んなわけないな。)


「ダムで。」


「畏まりましたー。では66番のお部屋までどうぞー。」


僕はドリンクバーで麦茶を入れると部屋に入る。

麦茶は利尿作用が比較的少ない飲み物だ。

僕は今後の事を整理しながら来るかわからない空条を待つ。


ガチャッ!!


「当摩先生!!」


(ああ、、早いな。)


僕は空条を払いのけて扉を閉める。

空条は涙を浮かべて僕を見ている。


(1抱きついてくる、2大声で叫ぶ、3大声で泣く、4その他)


そのどれもが今の僕には必要ない。


「空条さん、悪いが感動的な再会は後に、、。」


「大地さぁぁんー!!」


マイクのスイッチなど入っていなのに声は大音量で響く。

空条は大人げなく人に抱きつき、大声で僕の名前を叫んでは泣いた。


(4その他(全部)か、、カラオケ店で良かった。)


僕の選択肢は間違っていなかったらしい。

空条の落ち着きを待って、僕は空条から聞いた内容と僕の身に起きた出来事を擦り合わせた。


「そう・・お兄さんが・・。当摩先生がカラオケ店なんかに入ってフリータイムなんかを選択してサイバーDAMで、{大丈夫だった安心して快気祝いだヤッホー}・・なんて考えるはずないもんねぇ。」


空条は天井を見上げながら話す。


「そもそも僕は怪我も病気もしていたわけではない。後少し内容がわからないが・・とにかく僕の考えを汲み取ってこの場所に辿り着いてくれたことに感謝するよ。」


そう言うと空条はまた涙を流した。


「分かるわよ。その位。感が鋭いんだから私。」


(男の感な、、)


「病院には当摩先生がしばらくお休みすることは伝えてあるから安心して。」


「助かる。」


流石だ。

話が早くて助かる。


「空条さん。今更だとは思うのだが、こんなに俺に協力して貰っていて病院では大丈夫なのか?」


空条はふぅ、、とため息をついて話し始める。


「あいつらの一味として思われているのよ。私もね。あの病院にしがみ付いていないと駄目な人間だから。」


空条はどさくさに紛れて僕の麦茶を口にすると再度話始める。


「私の妹が、入院しているの。あの病院に。難病でね。あの病院に何から何までお世話になっているのよ。」


(成程。言い方を悪くすれば人質か。)


実にあの親子らしいやり方だ。

どこまでも性根が腐っているというか。

間違ったやり方とはいえ敵ながら天晴な人間だ。


「でもね。もういいのよ。他人を陥れてまで、黙って見過ごすまで平気になるくらい人間落ちちゃったらもう心を失った人間と一緒よ。心の無い人間なんて生きる価値なんてないと思う。そう気づいたのよ、当摩先生にあってね。」


ここまで空条の協力がなければ来れなかったであろう。

僕からしても感謝しきれない。


「妹さんの件。約束は出来ないが何とか取り計らってもらうことが出来るかもしれない。僕も出来る事があったら協力しよう。」


空条は涙を流して感謝を声に出す。


「すべての材料、人物は揃った。空条さん、最後にもう一つだけ頼みたいことがある。」


空条は涙を拭くと頷いた。

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