大地(新)⑨
僕は今、空条の家にいる。
脅されて付き合っているわけでも、本当にステディーになったわけでもない。
あれ以来空条は僕に協力することで合意しているからだ。
最も現在置かれている僕の状態は、先日の東海林の件もあり非常に身動きの取りづらいものになってしまう。
今までのように資料室に行くのも会社のサーバーからの情報検索も難しいだろう。
その為、予め空条に指示を伝え収集してもらっており結果を安全な場所に報告してもらう会場に空条の家を選んだのだ。
(本当に安全なのだろうか、、)
僕は別の意味で安全なのか提案された際は疑ったが選択肢はあまりなく一旦は了解をした。
「当摩せんせぇい、待ったぁ?」
(いちいち変な声だすなよ。)
きっと僕はこの男の奇妙な発言の数々に慣れることはないだろう。
もはや生理的に受け付けないのだと思う。
空条は紅茶に疎い僕でさえも高いだろうと感じさせるとても芳醇な香りのする紅茶を見るからに高そうなカップに入れて持ってくる。
さらに付け合わせのお茶菓子も高級品のような気がする。
「うふふ、、奮発したのぉー!いつもじゃないのよぉー!特にこの紅茶特別製法だから飲んでみてぇ!」
このままだと空条のうんちくに永遠と付き合わされ、いつまでたっても本題にたどり着けないような気がしてならない。
「・・報告してくれ。」
僕は確かに美味しい紅茶を一口飲むと空条を急かした。
僕の空気を察した空条は何か言いたそうな表情をするも紅茶を一口飲むとプリントアウトした資料を僕に渡してくる。
「見ながらでいいから聞いてちょうだい。まず事件当日の情報についてね。あなたの言う通りもうサーバーへのアクセスは出来なくなっていたわ。もしかしたらもう情報も削除されているかも。」
(やはり思った通りか。それで確実になった事は空条と資料室で出会ったあの時まで東海林は俺の存在を知らなかったということになる。)
「なのですべてプリントアウトしておいたわ。それが今あなたに渡した資料ね。データでもあるから安心して!っていうかその部分の情報はサーバー毎コピーしちゃったわけなのぉー、うふふ。」
(相変わらずえげつないことをする人だな、、)
僕が指示したこと以上の事をしている空条に引き気味になる。
しかし、その思い切りは今の僕にとってはとてもありがたい事でもある。
「他にも関連しているだろう情報を検索していたのよ。そうしたらあなたが見ていたページ以外にも情報が幾つか見つかったわ。順を追って説明するわね。」
順を追う。
どれほどの歪な鎖が絡まっているのだろう。
「星波先生が担当していた出雲砂羽さんについてね。実は出雲砂羽さんの入院した直後の担当は星波先生じゃなくて石火矢副院長なの。あっ!当時はね。」
(石火矢副院長。東海林の親父か。)
「その時の情報を見て。」
資料(1)12月10日 出雲砂羽 15歳 女性 B型(RH-)
内視鏡での検査画像だろうか。
なんとも言えないが急性胃粘膜病変とも考えられる画像。
その他医療情報を確認すると他に異常を疑う必要はないだろう。
後は痛みの具合で治療方向が変わってくるんじゃないだろうか。
「あなたの言いたいこと分かるわ。でも次の情報を見て。」
資料(2)12月16日 出雲砂羽 15歳 女性 B型(RH-)
重症とも考えられる画像の数々。
本当に同一人物なのだろうか。
精密検査をしなくては分からないこともあるがこれはかなり危険な気がする。
(この短期間でなぜこんなに悪くなっている?おかしい。普通じゃ考えられない。)
「そう、不自然極まりないわよね。でも実は別の資料の中にこんな画像が入っていたの。」
別資料(1)12月10日 出雲砂羽 15歳 女性 B型(RH-)
先ほどとはいかないものの重症とも考えられる画像が映っている。
他医療情報も気になる部分が多い。
(これは、、すぐに精密な検査が必要だったじゃないか。ん?資料(1)、別資料(1)の日付が同じ?)
「やっぱり偶然にしちゃ可笑しいわよねぇ。そこで資料(1)に改ざんされたような跡を発見したの。削除や変更をする前のデータがあるからそれを見てみて。まずは削除ね。」
削除箇所は。
(12月12日に削除している。12月2日霧雨中学3年女子健康診断時本人の訴えにより当医療機関受診を進め内視鏡検査。健康診断結果報告書には診断時報告された内容と別日検査と記載。霧雨中学校3年Bクラス56番の健康診断情報に紐づける。)
「ここからが正直申し上げにくいのだけれど・・次は変更ね。その内視鏡検査された霧雨中学校3年女子の情報は別紙の霧雨中学校の名簿を見てもらってもわかるから・・」
変更箇所は。
(12月13日に変更している。本当は12月6日の画像。実際に記載されていた日よりも前だ。ん?・・名前・・が出雲砂羽の前が星波・・つき・・)
「星波・・月・・だと・・名簿は?」
(その年のBクラス56番?霧雨中学校3年女子のBクラス56番は、、月、、)
空条は何も言わなかった。
いや何も言えなかったのだろう。
父さんは出雲さんを助けるために尽力を尽くしていた。
しかし、石火矢達の策略によって情報を改ざんされ騙されていた。
しかもその情報は実の娘のもの。
(なんて皮肉な、、)
「こんな時に御免なさいねぇ・・まだあるの。いい?」
「ああ・・」
僕は力なく答えた。
「しっかりして当摩先生!・・これは決定的な証拠よ。危険だけれど石火矢院長のIDでシステムに入りメールを調べちゃったの。・・その一番怪しい人だから。その中の資料も手元に入っている。」
12月17日 絵巻へ
ようやく念願叶った。しかも理想の展開でだ。星波宇宙は自害したぞ。
恐らく出雲と娘が重なりたいそう入れ込んでいたのだろう。
相当ショックが大きかったようだ。
データの改ざんはリスクがあるが、警察もマスコミも俺の力でなんとか出来るから心配はいらない。
虹太郎の件については時間の問題だろう。
しかし、念には念を入れて第二病院へと転院を考えている。君の言った通り星波に過度なプレッシャーを与え、虹太郎の状態を伝えたことがとどめだったかもしれないな。
しかし、何度考えても笑えるな。
まさか実の娘の情報を見て判断しているなど夢にも思わなかっただろうな。
運も味方しているようだ。
ほとぼりが冷めたら一緒になろう。
ついでに言うと、東海林の名についても相談がある。
今度話そう。
雷炎




