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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第二章
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大地(新)⑧

休み希望を出していたのだがどうしても外せない業務が出来てしまう。

僕は休みを返上して出勤した。

どうも今日は朝からトラブル続きだ。

休みを削られ、環には仕事のストレスをぶつけられ、自宅から駅まで使用していた自転車を盗難される始末。

おまけに未使用だったから良かったものの注射針が飛び出しており指に刺さってしまう。

泣きっ面に蜂日とはこういうことを言うのか。

フッ、、と自分で思ったことに対して鼻で笑う。

当てつけであることは分かっている。

偶然僕に不利益なことが続いただけだ。


(この分だと午後は非番になれるな。今から、環に連絡、、しても忙しいだろうな。やはり僕一人で行くか。)


外せない業務は午前中で片付き、これから帰ろうと身支度をしていた時同僚から声をかけられる。

尋ね人が来たとのことのだ。

しかもその尋ね人はどういうわけか第二病院屋上に待機しているとだけ伝え去ったらしい。


(あぁ、、今日は本当に最悪な日だな、、)


僕は屋上へと向かった。


屋上のドア開けると鈍よりとした雲に覆われ今にも泣きだしそうな空が目に入ってくる。

今日は曇りのち雨だ。

屋上の真ん中に煙草を吸っている男性を見つける。

見覚えのある顔だった。


「ここは禁煙ですよ。」


僕は東海林に注意する。

東海林は煙草の煙を吐き出すと携帯の灰皿を取り出し煙草を中へ収納した。


「親父さん、元気にしているかぁ。」


一瞬で僕の感情は最高潮になる。

少しでも油断しようものならば再び本能は理性を超えてしまうだろう。

挑発であることは知っている。

そして同時に相手はまだ探りだということも。


東海林は僕の表情を見るや不敵な顔でさらに続けた。


「そうか、そうか。悪い事を言った。あんたの中の親父さん元気にしているか、が正しかったな。」


(宣戦布告ってことか。)


「急に人を呼びつけておいて何なんですか。せめて名前くらい聞かせて貰わないと。俺の名前は当摩大地です。あなたは第一病院の東海林烈火さんでよろしいんですか?」


冷静にまずは事実確認を行う必要がある。

東海林はチッ、、と舌打ちをすると答えた。


「面倒だなぁ。あんた・・親父さんにそっくりだな。」


再度挑発してくる。

しっかりした答えが聞けなかったのだが、返答の内容からして合っているのだろう。


「当摩さんだっけ、今は?全くよくやってくれたぜ。まさか名前を変えてくるとはね。しかも第二病院に潜り込むとは用意周到なこったね。恐れ入る。」


やはり東海林は最近知ったようだ。

どういう経緯かは想像できないが、恐らく僕の目的も把握しているだろう。

情報は粗方調べ尽くした後で良かったのだが。


(これなら遠慮することはないだろう、、)


「東海林さん。俺の父、星波宇宙の事で何か知っているんですか。」


「さぁね。執刀して帰ったと思ったら自殺したんだろう?他人の事なんざその程度しか知らねぇよ。それともなんだ?俺の事を疑っているとでも言うのか?警察も介入して適正な対応の元、過去の出来事になったって言うのによぉ。」


(よくもまぁ、ベラベラと口が回るな。俺が関与していますって言っているようなものだぞ。これだけ詰めが甘そうな男が一人で行うには荷が重いだろう。やはり複数か。)


「いえ、別に。父と同僚だった名医の方々にはお話を頂けたんですけど、医師とは違った職種の方々には話をあまり聞いてないもので。」


そして僕はニコリと笑う。

すると見る見るうちに東海林の表情が変わる。


(ここまで餌に食らいつくとは、、言ってみるものだ。)


「貴様ぁ、単なるペーペーの医者風情が誰に口きいていると思っているんだぁぁ!」


(やはりキーワードはこれか。と言うことはこの男を扱うことが出来る人間は極少人数に限られる。)


僕は感情むき出しの男を前に冷静を徹する。

腸が煮えくり返っているのはこちらも同じこと。

しかしこいつのゲームに乗っかってしまっては本当のゲームオーバーになってしまう。


(今この男に聞いても時間の無駄だな。もう充分情報は掴めた。)


「東海林さん。もう用が済みました?済んだなら俺は戻ります。」



僕は引き返そうと背をむけた瞬間、背後から悪魔の声が木霊する。


「いいかぁ!よく聞いておけ、当摩!そんな態度をとってただで済むと思うなよ。あっーはっはっ!」


東海林の怒り狂う声が聞こえる。


(こちらこそただでは済まさせはしないからな。この男諸共病院の闇を剥がしてくれる。)


狂気に満ちたその笑い声を僕は頭の中で何度も思い返し報復を進める。

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