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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第二章
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大地(新)⑦

暗中模索の中ここまでやってきた。

リスクを最低限に抑え手掛かりとなろう証拠を最大限に獲得してきたはずだ。


(もう一歩、もう一歩なんだよ。父さん。)


熱く痺れている下半身を、氷のように冷たいシーツで覆うと僕は天井を見上げる。

横には空条がうつ伏せになって息を切らしている。

僕は情報や協力を頂く代わりに身体を提供した。

空条が望んだ取引。

僕にとっては朝駆けの駄賃のようなもので何の感慨もなければ軽微な出来事だ。


「はぁ、はぁ、あなた。惚れそうよ・・。」


(いや、それは困る。)


そう言いたかったのだが、今ご機嫌を損なわれても困るので黙っておく。

出来れば後腐れある関係だけは避けたいものだ。

何しろ取引をしたものの、それは書面上ではなく口頭の上での話だからだ。


(空中戦だけは勘弁だな、、)


「ふふふっ・・そう気張らなくても大丈夫よ。オカマは嘘、つかないの。」


どんな定義だろう。

確証なんてないだろうに。


「律儀なんだな。」


僕は空条を褒めた。


「あぁん、クールぅー。男らしいわぁ。本当、星波先生とは違った男らしさが会って魅力的!。遺伝かしら?研究してみたいわぁ。」


(勝手にしてくれ、、それよりも。)


「そろそろ俺に教えてくれないか?」


僕は空条に答えを催促する。

空条は僕の表情を見て察すると、すっと起き上がる。

ベッドに腰を掛け自前の煙草に火を付けると、まるでスイッチを切り替えるかのように表情を変え話し始めた。


「昔話から始めるわね。星波先生は私にとってすっごくすっごく偉大な先生だったわ。正直何度もアプローチしたけれど全然構ってくれなかったわ。本当に優しい優秀な先生。・・先生が亡くなる少し前から医療検査管理室の職員に気になる行動があってね。」


「気になる行動?」


僕は重要であろう部分を深堀させるためオウム返しをする。

空条は煙草の煙をふぅ、、と吹く。


「私は医事課の人間でもあり、医療検査管理室の人間でもあるのよ。もう知っているでしょうけど。」


(知っている。白雪のIDから情報は大まかに把握できている。たしか医療検査管理室所長なはずだ。)


「情報の管理は私の十八番。これでも記憶力が高いほうだからほとんどの患者さんの情報を網羅しているわ。でも特にその患者さんの情報は特殊でね。よく覚えているの。あなたRH-知っているわよね?」


(RH、血液型抗原のことか。血液型抗原(C・c・D・E・eなど)の中でD抗原がある場合RH+、ない場合RH-になる。)


「血液型抗原のことですよね。」


「そうなの。仮にAさんとでも言っておこうかしら。当時Aさん15歳中学校3年生、血液型B型血液型抗原RH-。」


「B型RH-も1000人に一人位だった気がする。」


(RH-は白人の中でも日本人という人種になると極端に割合が少なくなるはず。)


「そうなのよ。中々のレアキャラなの。ええと・・霧雨中学の女子生徒だったかしら。ぱっと見ただけだったから確実な事は言えないけれど数値など気になる点は無いデータだったと思うわ。その子のデータが持ち出されてしまったのよ。気になる行動をした職員にね。今はもう退職してしまっているのだけれど。」


(霧雨中学、、月の中学校も確か霧雨中学だったな、、まぁ偶然だとは思うが。)


「それと父さんの死に何の関係が?」


僕は質問をする。


「仮説の中で話をするのは好きじゃないのだけれど・・実は星波先生が執刀した日にお亡くなりになった女の子もB型RH-、年齢も15歳だったのよね。」


(何!?どういう偶然なんだ?持ち出された情報が当日亡くなった人と同じ情報とは、、もしや、、)


「そう、情報をすり替える為に持ち出したって考えが妥当じゃない?その・・裏付けるつもりはないのだけれど、私が執刀後の星波先生にステーションですれ違った時{何故気付かなかった、何故こうなった}ってしきりに呟いていたのよ。」


(気付かなかった?こうなった?、、情報のすり替えを気付けず!?嵌められた!?)


「嵌められたっ・・てことなのか!?」


僕は全身の血が煮えたぎるような感覚を覚えた。

もし真実ならやっていることは組織ぐるみの犯罪だ。

いや、犯罪などは法の物差しで裁けばいい。

僕は父さんにそんな惨い仕打ちをさせ精神を追い詰め握り潰し殺した人間がやはりいた事実に理解を超える。


「な・・なぜ!?そこまで気付いていたのに・・お前は問い詰めなかったんだぁ!!」


僕は我を忘れてしまう。

もはや、理性では制御できない位心身は沸騰し過ぎていた。

空条の乱れた服を掴むと強引に引き寄せ、何かが乗り移った僕の表情を空条に晒す。


「うぅ・・苦しい・・わ・・。」


空条の顔が歪む。

僕は咄嗟に手を放し我に返った。


「す・・すまない!つい興奮してしまった・・。本当に申し訳ない。」


僕自身驚いていた。

まさかこれ程までに自分の中に野生が存在するなどとは。

空条に頭を下げ、自分の行動が起こしてしまった過ちに対して誠心誠意謝罪を繰り返す。


ゴホッゴホッ、、

空条は咳き込んでいたが、少しずつ呼吸を安定させていった。


「・・いいのよ。気が済むまでいいのよ。結局私だってあなたの言う通り見て見ぬふりをしてきたのだから。・・一つ言い訳をするとね、私が所長になったのは最近なの。当時の所長は石火矢烈火。ちなみに石火矢烈火の現在の名は東海林ね。医事長になっているわ。・・私もあの人いえ、あの人達には逆らえないのよ。」


(東海林・・)

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