烈火(新)②
(くそったれ!どこまでも人をゴミ扱いしやがって!)
俺は親父の一件で怒髪天だった。
(これからは親父だけでなくあの忌々しい女にさえ蔑まされて生きていくのかぁ)
そう考えるだけで虫唾が走る。
しかも今回のヤマはかなりでかい。
ボロが出ることはないだろうが危ない橋を渡るのは今後の俺の為にならない。
(真っ先に親父を殺っちまうか、、)
そう考えたが、外堀を固めて堅牢でいる親父を殺るのは賢明ではない。
(東海林の名もあるわけだ。使えるものが増えたのだから手下に出来るカードが増えたようなもの。そうだ手が無くなったのなら、手を探せばいい。)
五里霧中だった俺はようやく糸口を見つける。
「医事長、お疲れ様です。」
俺は数日ぶりに職場へと顔を出した。
医事課には情報の精通した女が多い為聞き出せば割と病院の酸いも甘いも手に入りやすい。
このポジションは俺にとってメリットも大きく気に入っている。
さらに医事課は病院の個人情報が一挙に検索することが出来る唯一の場所。
他の部署はいくら同じ病院であっても迂闊に調べることが出来ない。
セキュリティーの万全もこの病院の一つの売りになっているからだ。
(新卒の人間も多く入ってきているわけだし、お気に入りを探すのも手だな。)
手下は何人いても良いが厳選しないと飼い主を噛んできやがるから注意が必要だ。
(そうだな、今は頭の良い奴を見つけるか。)
俺はパソコンを開き情報を検索した。
「えっー?じゃあ、真白ちゃん当摩先生のお知り合いなんだー?羨ましい!」
医事課の休憩室から声が聞こえる。
見ると交代で休憩を取っている数人の医事課の人間が昼食を楽しんでいるようだ。
(ちっ、、声が駄々洩れだっつうの。)
折角考えが纏まり始め行動に移した矢先に出鼻を挫かれた俺は苛立った。
「当摩先生って言えばさあイケメンでチョー頭が良いんでしょう?いいなぁ、私もお知り合いになりたいわぁ!」
(男の話か。どいつもこいつも異性の話ばかりで、他に話題はないのかねぇ。)
あまり興味のないジャンルの為聞こえる声など無視しようと思ったが少々気になるキーワードが出てきた為俺は聞き耳を立てる。
「当摩先生って第二病院よね。あーあんまり接点ないなぁ。いっそ異動希望出しちゃおうかなぁ。」
(第二病院か、、選択肢には無かったな、、)
同じ系列の病院しかも同じ敷地内にありながら酷い確執があるため滅多に交流はない。
せいぜい、新入職員が一堂に顔合わせする初めての朝礼位ではないだろうか。
初めての朝礼は全体朝礼として年に一度第一病院で行う。
(、、よし、善は急げというしな。)
俺は休憩所に向かい声をかけた。
「あー、休憩中すまない。白雪さんはここかな?」
俺は白々しく呼び出す。
中から返事が聞こえ白雪がやってくる。
「休憩中、呼んですまないね。食事は済んでいる?」
俺は気を使った。
「あっ・・はい。もう食事は済んでいます。何か御用ですか?」
突然の来訪に驚きと不安が入り混じった表情をしている。
表情の強張りからすると押しに弱いのだろう。
(こいつなら聞き出せそうだな。)
俺は瞬時にその人となりを確認すると品定めを完了した。
そして適当に口実を作り数分後に医事長室に来るように伝える。
俺は医事長室で待機した。
トントン、、
程なくしてノックの音が聞こえる。
「入ってください。」
俺は白雪を通すと、席に座らせた。
白雪は緊張しているようにも、怯えているようにも見える。
ここで委縮され言葉が出辛くなってしまうのも困るので場を緊張から解き放つ。
「白雪さんの事で呼び出したんじゃないので気にしないでくれ。それに俺は呼び出してまでミスを咎めたり叱ったりはしないから。」
そう伝えるとようやく当人の緊張は和らぐ。
「聞きたいのだが、第二病院に当摩っていう先生がいることは知っているかい?」
俺は単刀直入に聞いてみる。
「はい。存じてます。」
「答えられたらでいいんだけれど、知っているのはプライベートな関係でってことかな?」
さらに込み入った話を聞いてみる。
「いえ・・たんなる同期・・です。私が勝手に尊敬している先生です。それに当摩先生は既婚者ですし・・。」
(なるほど、違うのか。ならば俺が接点を持ったとしてもそこまで白雪には影響がなさそうだな。)
プライベートな関係ではないことを聞けただけ収穫はあった。
俺は白雪の当摩という男に持っている念や感想にあたかも自分も知っているふりをして同調し誘導しながら情報収集し終える。
接触してみるのも良さそうだ。
(あとは食いつくエサが何かを知ることが出来れば、、)
俺は適当に医事課の業務を熟すと本当の業務へと戻った。




