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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第二章
38/60

暗躍

「今年は活きの良い子が入っているかしらぁー?」


第一病院の屋上で煙草を吸いながら景色を眺めている男。

空条伊吹くうじょういぶきはこの時期を大変好んでいる。


「空条さん、ほんとあなたお手柔らかにしてもらわないと悪影響で新人が辞めてしまいますからね。お願いしますよ。ただでさえ職員が少ないんだから。」


隣にもう一人の男。

東海林もまた煙草を吸っていた。


「あらぁ?あなたに言われる筋合いはないわ。」


空条はムッとした表情で言い返す。

事実空条の影響で辞めてしまう職員もいるが別の意味で東海林の影響も負けてはいない。


「そういえば遅くなったけれどまだ言っていなかったわね。ご結婚おめでとう。」


空条は思い出したように東海林に伝える。

東海林は去年婚約をしたばかりである。


「これはこれはありがとうございます。空条さんに言われるなんて光栄ですね。」


東海林は吸っていた煙草を携帯用の灰皿に入れると畏まってお礼を伝えた。

再び、空条の表情が歪む。

東海林は不敵な笑みを浮かべていた。

暫くその場を沈黙が支配する。

ふぅー、、

煙草の煙をゆっくり吐いた空条が先に口を開く。


「ねぇ、東海林さん。」


空条は東海林の顔を見ずに声をかける。


「はい?」


反対に東海林は空条をジッと見つめた。


「向上心があるっていうのは良いことだと思うけれどね。この先は私の管轄に入ってこないでほしいわ。」


東海林とは目線は合わせないものの、空条の表情は硬いものだった。

東海林は右手を首の後ろに回すと俯いて笑みを浮かべる。


「お言葉ですがね空条さん。貴方に直接迷惑をかけた覚えは無いんですよ。まぁ、部下の方はたまにレンタルさせてもらうかもしれませんがね。」


空条の表情は硬いままだった。


「自分の尻は自分で拭くから大丈夫ですよ。これだけでかい病院だ。辞職したり人事異動なんてしょっちゅうな事ですし。」


東海林は続けざまに言い放った。


「尻なんて下品な事言わないで!」


空条は口を尖らせて答える。

その様子を見る東海林は右手で額を抑えて声を出して笑った。


「嫌だなぁ、モノの例えっつうもんでしょう?まぁ、今のところ俺は順調ですし満足してますよ。婚約もできましたしね。女性、良いっすよ?では・・」


東海林はそう言うと、勝手に話を切り上げて屋上を後にする。

空条はその後姿を目で追うと扉が閉まるまでの生末を黙って見送った。


ガチャン、、

扉が閉まる。

再び静寂が生まれる。

先程と違うのはそこに空条一人だけということだ。


「ふん。乙女を一人残して行っちゃうなんて。それにしても・・ほんっと、曲者ねぇ。食えない男。・・この病院大丈夫かしら・・」


空条は短くなった煙草を携帯灰皿へ納めると、暫くその場所を離れなかった。

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