大地(新)③
これだけ巨大で威厳のある強い病院。
統制力も相当なものだろう。
とは言え一枚岩を目指すには病院関係者の人数に対してそれ相応の数が働かないとこの限りではないはず。
箝口令が引ける人間は一人でない。
僕は中庭に移動し外から病院の建物を眺め思った。
諜報活動をするなどもやはやスパイ行為そのものだ。
映画ともなれば殆ど筋書きは決まっている訳で上手く立ち回れるものだが現実はどうだろうか。
(台本の無い世の中の事象はどれだけ脚色され我々を洗脳しているのだろうか、、)
考え込むとつい広範囲に渡って考えを及ぼしてしまう。
「すみません!お待たせしました。」
タッタッタッタッ、、
小走りに白雪が中庭へと来る。
(初日からこんなことじゃ良くないな。焦り過ぎは禁物だ。)
「いや、大丈夫だよ。」
僕は気持ちを切り替えた。
「あの・・先程は失礼でしたでしょうか。つい当摩さんの名札が見えたような気がして舞い上がって声をかけてしまって・・。」
(名札、、そういえば名札を皆しているはず。白雪は、、)
「あっ!私、名札の名前、漢字違っていて。それでこれから修正しなきゃいけないんでまだ持っていないんです。」
白雪は名札が無いことを気にした僕を察して僕が指摘する前に弁明した。
(それにしてもこれから一緒に仕事する職員の名前を間違えるなんてケアレスミスにも程があるだろう。)
大病院だからといって優秀な人材が揃うわけではなさそうだ。
「そうなんだ。それは災難だね。ところで僕に何か用だったの。舞い上がるって、芸能人じゃあるまいし。」
理由を聞いてみることにする。
すると白雪の目が真ん丸になり少し興奮気味に答えた。
「えっ!だって当摩さんて瀧川医科大学きっての秀才学生って専らの評判だったじゃないですか。私、瀧川医科大学の隣に併設している専門学校で医療事務関係の勉強していた学生だったんです。その時に評判は兼ねがね聞いていたのでつい・・」
(医療事務か、、そして第一病院、、なるほど。それにしても秀才学生とは。初耳だな。)
具体的な話どの様に伝わっていたのかは定かではないが噂というのは尾びれ背びれがついていくものだ。
事実首席での卒業だったが、併設とはいえ他校にまで影響が著しいとは凶報でしかない。
「論文とか公開されていたものを読ませて頂いたりしたんです。あの・・学校内だけれど表彰されていたもの。本当に凄いなぁって思って・・」
(一般公開していた作品か。教授に言われてそんなこともしたな。)
教授の是非という発言に一種のポイント稼ぎとして公開を了承したが今、自責の念に駆られる。
「ありがとう。ただ、僕はそんな大それた人間じゃないよ。論文も教授の発言や影響が大きいし。
ところで白雪さんは第一病院のどの部署なの?」
僕は確証を得る為聞いた。
これだけ陶酔していれば問題ないだろう。
「はい!私、第一病院医事課に配属されました。当摩さんは第二病院なんですよね。」
(やはり第一病院医事課か、、良い部署だ、、)
映画さながらのツキの巡りあわせに僕はニヤリと笑った。




