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貫(つらぬく)  作者: 浮世離れ
第一章
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鳴海京介③

あくる日、私は一本の電話をした。

その日は星波教授の一周忌に近くなった日曜日だ。

神様はこんな私にこの糸を繋げてくれるだろうか。


トゥルルルル、、トゥルルルル、、ガチャッ、、


「はい、星波ですけど・・鳴海さんですか?」


月さんだ。

この電話番号は月さんの携帯に繋がる。

当たり前だがもうそれだけで緊張する。

しかし嫌な緊張ではない。

年甲斐もなく希うこの緊張は言うなれば心地よい。

久しぶりに聞く月さんの声はとても瑞々しく、日々の淀んだ心に潤いをもらえる。


「もしもし、お久しぶりです。鳴海です。突然電話してすみません。今、お時間大丈夫ですか?」


会って話をしている訳でもないのに一つ一つの言葉が堅苦しくなってしまう。

他愛もない会話なのだが、丁寧に言葉を選ぶ。


「はい、今日は学校がお休みなので大丈夫ですよ。」


(良かった。まずはファーストステップクリアしたようだ。)


「実は来週、星波、先生の一周忌だと思うのですが・・どこかでお邪魔させてお線香を上げさせてもらいたいと思いまして・・」


私は改まって、私の50%の意図を伝えた。


「そうですか。覚えていてくれてありがとうございます。私たち兄妹は家を処分してしまいまして、引越し先の今の家には仏間を設けることが出来なくて・・」


(そうだ、、月さんの家族は母親がもう他界しているのだった、、)


月さんの悲しみが聞こえる。

その声を聴くと私も胸が締め付けられる思いで一杯だった。


「そうでしたか、、ではせめてお墓参りだけでもさせてはいただけないでしょうか。」


このままでは引き下がれない。

尊敬している星波教授にお線香の一本でも上げさせてもらえない事には納まりがつかない。

そして、それ以上に月さんの状況が気になってしまう。


(悲しみを癒すことが出来れば、、いや癒せればなど考える方がおこがましい。少しでも力になれれば、、)


そう思うと私は居ても立っても居られなくなる。


「・・わかりました。ぜひお願いします。場所わかります?」


「あの・・良ければお時間は取らせないので、案内をお願いできませんか?私は平日でも休日でも構いません。平日でよければ月さん下校される時間に合わせて私が伺いますので、その・・案内を頂ければ幸いです。」


場所を聞いて行くことは出来るが私はその選択肢をとらなかった。

あまりにも露骨すぎるだろうか。

折角、接点が出来てきたところなのに、少々強引だったか。


「駅近でもないですし、学校からも少し距離ありますよ?時間大丈夫ですか?」


朝飯前の回答に私の心は綻んだ。

肩の力が抜ける。


「あっ!いや!良ければ私が車で送りますよ。天候が悪い可能性もありますし・・。」


言った後に思い出す。

そういえば来週から天気は下り坂になると天気予報で告知していた。


(苦し紛れに言ったつもりだったが、いつも何気なく見ているTVの内容がこうも役に立つとは。)


人生無駄が無いなんて綺麗事だと思っていた今までの自分に少し反省をする。


「その方が行きやすいかもしれないですね。私の下校時刻はだいたい15:00位なので来週の金曜日その時間に学校近くで待ち合わせでも大丈夫ですか?」


無論、私はYESの返答をした。

かくして私はまた一つ、この世界を美しく見ることができる目を養うことが出来た。

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