星波月⑥
私の提案で食事の後は大地兄さんのホームパーティー用の洋服を買う為ウインドウショッピング。
友達同士のパーティーに友達の家族も参加したことがあって、友達のお父さんのドレスコード姿も見たことがある。
(大地兄さんが着たらきっと素敵なんだろうなぁ、、今日、叶うんだ。)
「無理して合わせなくてもいいよ。行きたいところ他にあるんじゃないか。」
いつものように大地兄さんは気を使ってくれる。
けれど、本当にこれはしたい事。
「ううん。私も自分の服見れるし。それに知っているの。どんなパーティーでもぴったりの服。」
いつもなら洋服は好きなサイトで手軽に買っちゃうけれど。
洋服は手に入れることが出来ても、この時間はインターネットで手に入れることが出来ない。
私は大地兄さんにスマートカジュアルな服装をチョイスする。
チェックのシャツに黒のベスト。
ジャケットは深めの紺色。ズボンは白。
(うん、完璧!)
試着室から出た大地兄さんは益々格好が良い。
周りの女の子がチラチラ見ているのだから間違いない。
(でも、魅力なのは服ではなく大地兄さんだけれどね。)
「月、流石にネクタイとかは要らないかな。」
(私も要らないと思うなぁ、、)
でも我儘を言ってみる。
「してみて!!」
大地兄さんが知らないことをいいことにさらにエスカレートしてしまう。
ネクタイを締めた大地兄さんはさらに格好が良い。
見惚れて好機を逃す前に私はもう一つしたいことを叶える。
「ネクタイが少し曲がっているかな?」
大地兄さんの着こなしは完璧。
(でも、、)
そう言うと、私は大地兄さんの手からネクタイを強引に奪い取り調節した。
(まるで大地兄さんの奥さんになったみたい。)
間近で見る大地兄さんの顔。
(我儘を言って良かったなぁ。)
嬉しさのあまり調節しているフリをしている事を忘れてしまう。
「月?」
他の女性に盗られてしまうのかもしれない。
そう思うと、嫌で嫌で仕方がなくなる。
「・・月?」
手に力が籠ってしまう。
(どうせ奪われてしまうのなら、、強引にでも私のものに、、誰の手も届かない所に、、)
「んんん!?・・づぎ!?」
(あっ!しまった!!)
いつの間にかネクタイを握っていた手に力が籠り、大地兄さんの首を絞めてしまっていた。
私は咄嗟にネクタイを持つ手を離す。
ゴホッ、、ゴホッ、、
大地兄さんはネクタイを緩めると円背になり真っ赤な顔をして咳をした。
「ご・・ご・・ごめんなさい!!あ、、あたしったら、、」
私は大地兄さんの背中を摩り、ごめんなさいと言い続ける。
私の顔はみるみる青ざめ、表情が歪み、涙袋に涙が溜まってしまう。
そんな取り乱す私を見ると、呼吸を整えた大地兄さんは笑顔で私の頭に手を置いて軽く撫でてくれる。
「もう、、大丈夫。少し驚いただけだよ。ネクタイの加減は他人のじゃ分かり辛いかもね。月は力が強いなぁ。」
やっぱり優しい。
私のどうしようもない過ちも責めてはこない。
むしろ私を庇ってくれる。
(いっそ、責めてくれれば楽になれるのに。)
大地兄さんの首にはくっきりと私の重い想いが残ってしまった。
本当に反省はしている。
けれどちょびっとだけ嬉しさが残ってしまう。
(私との時間に他の女性の事を話すのが悪いんだからね、、)
人なんて本当に勝手なもの。
自分可愛さに自分の犯した過ちさえも正当化してしまう。
お詫びに私は今、女子の中で流行っているお菓子を手土産にと無理やり大地兄さんに手渡す。
(残念ながら私の奢りで!大地兄さんの気持ちなんて届けてほしくはなかったから、、)
最後の最後まで私は自分の性根が歪んでしまっているだなぁと気がつかされてしまう。
それでもこの人の為なら何でもしたい。
私に気持ちを寄せてくれるなら手段は選ばない。
(こんな事を知られたら私、、大地兄さんから嫌われるだろうなぁ。)
帰路。
私は大地兄さんに好みの女性のタイプを聞いてみる。
言葉遣いが丁寧で、おしとやかな人。
私にとってはとても高い高い目標だ。
「もし・・もし頑張って大地兄さんの理想の女性になれたら・・」
「なれたら?」
私はそれ以上は言えなかった。
言えば涙が止まらなくなってしまうから。
私はグッと気持ちを堪える。
(頑張るから、頑張る力、頂戴。)
私は大地兄さんの腕を掴んでグッと体に引き寄せた。
大地兄さんは笑顔で何も言わず、私を家まで送ってくれた。
(この先、どんな苦しくて辛いことがあっても、、たとえ彼方が私の隣にいなくても、、)
彼方さえいればそれだけでいい。
(やっぱり太陽兄さんのお土産、忘れちゃった。)




