当摩大地⑤
決して躊躇していた訳ではない。
機会は伺っていた。
しかし、そのタイミングはまるで初めから決まっていた運命のように訪れる。
進路問題など、今後の将来が決まってくる高校3年の春。
僕は羽衣環と同じクラスになった。
それだけでも偶然と呼べる出来事だが、さらに偶然が舞い込む。
学級委員長と副学級委員長。
そして隣の席。
もはや偶然ではなく必然なのだろうか。
学級委員長の選出とは大概クラスの中で秀でたもの、特に学力の高さを筆頭に決まる。
これに関しては、学年で1位、2位のメンツなのだから統計学的には高い確率なのだろう。
しかし席まで隣とは。
ちなみに副学級委員長の決定は自薦だが、学級委員長の決定は他薦だ。
僕は勉学に勤しんできた自分に多少は利益が生じたのだと感じた。
「同じクラスになっただけじゃなく、お隣様で同じ委員会だね!これからよろしくね!」
噂通りの明るい表情で挨拶をしてくる。
「よろしく。」
僕は笑顔で答えた。
3年になっての初の中間テスト 297/1
内容もほぼ満点に近い。
学力は高い水準をキープしている。
「ねぇ。大地君はどこに住んでいるの?」
委員会の仕事を熟す為、放課後二人で残っていると唐突な質問をしてきた。
(名字ではなく名前!?)
いつの間にか羽衣からの呼ばれる方が下の名前に変わっていた。
「月夜野という所。僕は電車通いなんだ。ここからちょっと遠くてね。急行を使ってもドアtoドアで2時間近くかかるかな。」
羽衣はとても驚いた表情をしていた。
社会人でもこの距離は遠い。
それが高校生ともなれば驚くのも無理はない。
「引っ越さないのー?」
最もな意見だ。
しかし、事情があるのでその辺は適当に答えておく。
「そういえば大地君はもう進路決めた?私はすっごく迷っていてさぁ。」
まるで見合いだ。
色々と聞いてくるのはいささか面倒であるが仕方がない。
「迷っているってやりたい事が多くて迷っているの?」
「そう!そうなの!あっ!私のお父さんは医者なのね。それでずっと医者になれーって言われているんだけれど最近は法律に興味があって。それで弁護士なんかいいなぁって思っていて・・」
羽衣の動きはコミカルに変わる。
落ち着きがない。
しかし流石は良家の娘である。
元々の実力も高いが理想も高い。
「ほうほう・・」
僕は適当に相槌をする。
「そうそう。それでお父さんと喧嘩・・って!ちがーう!私の事はいいの。大地君はどうなの?」
(いや、自分の事を言いたかったんだろうが。別に止めなくても良かったのだが、、)
「僕は医学部を目指しているんだ。」
「あーやっぱり!そうだと思った!大地君、頭が良いもんねぇ。」
(、、なら聞くんじゃない。それに羽衣とは1番違いなのだから大差ないだろうに、、)
しかし、自分からペラペラお喋りをしてくれる性格ならば、返って好都合かもしれない。
「あっ!そうだ!来週の日曜日、家でホームパーティーをするの。同級生も結構くるよ。私の友達も。・・お父さんもいるんだけれど良かったら来ない?色々話を聞けるんじゃないかと思って!」
(面白い。そう来なくちゃな。)
僕は快く誘いを受けた。




