星波大地①
父の葬式が終わりひと段落がついた。
今までの生活。
つまり父1人子3人の生活は当然変化してしまう。
常識で考えても子3人だけの生活など到底現実的ではない。
父は医師だがビジネスよりも信念を優先するような、医師の鏡のような存在だったので先立つものなど殆ど残してはいかなかった。
(渡る親戚は鬼ばかりにならなきゃいいが、、)
一同は葬式会場を後にし別室へと移動する。
僕ら3兄妹がどうなるかと当然話さなければならない。
いつ誰が話始めるのかと戦々恐々とした面持ちの親戚一同に僕は嫌気がさしていた。
改まった空気の中やはりその空気をさらにややこしくしたのは兄さんだった。
「二人ともまだ未成年だから成人まで俺が二人を面倒見る!」
(いや、、あんたもまだ未成年だろ、、)
心の中でつっこみを入れるが自信満々のいつも通りの兄に僕の心は少々和らぐ。
あっけにとられている親戚がすぐに落胆した表情に変わるのは時間の問題だった。
「大地お兄ちゃん・・一緒にいられるよね・・」
不安そうな顔をした月が小声で呟いた。
僕の服の袖を掴むその手は微かに震えている。
結局話し合いの結果2組の家族に白羽の矢が立った。
1組は多少ならば経済的な余力のある家族。
夫婦ともに子供好きだが子供はいない。
親戚の中では一番の良識人であり常識人である。
何よりその家族は父の弟の家族なので名前を気にする必要がないのだ。
2組目も夫婦。
しかし二人とも高齢で僕よりも年上の入退院を繰り返す娘が1人いる。
現在住んでいる場所からも遠く、医療費がかかっている為経済的にはギリギリになる可能性が高い。
本命は1組目だろう。
しかしなぜ2組目が浮かんでしまったのか。
やはり突然子供が3人。
しかもまだまだ生活費や学費がかかる訳だ。
3兄妹全員面倒見るのはいささか難しい。
1組目の家族は3人をと提案してくれている。
しかし相当な覚悟が必要なことは子供の僕でも理解できる。
1組目の家族の奥さんの表情が少々曇り気味だ。
(気丈に隠そうとしているよな、、)
経済的に余裕はある。
子供が好き。
だがやはり人には人の事情があり、勢いなどという力だけでは決めきれないことはいくらでもある。
大人になれば大人になるほど、現実への理解が深まり保守的になっていくものだ。
僕は提案をした。
兄さん、月を1組目の家族に。
そして僕は2組目の家族に。
2組目の方の事情も考慮していくつかの条件も付けることにした。
「会えなくなるわけじゃない。」
もう堪えきれないと言わんばかりの想いと、いつものように代替になろうとしようとする兄さんの言葉を遮り僕は提案した。
結果は、声を殺しながら泣く月と歯を噛み締めて俯いている兄さんを置き去りにして決定した。
僕の提案通りになったのだ。