お酒と男には注意です!
眼が覚めると見知らぬ部屋にいた。
それに頭が痛い、昨日何かしたっけ?と頭をフル回転させる。そうだ、昨日飲み会でハメを外しすぎて酔っ払ってその後………記憶がない。
サーっと血の気が引いていくのがわかった。
あれ、まさかやっちゃった?またワンナイトしちゃった?
まて、体の節々に痛みはない、ってことはまだセーフだ。多分。
それよりここはどこなんだ?と頭を悩ませていたら声がかかった。
「おーい、西口大丈夫か?」
私はまた血の気が引いた。なんてったって私の片思いの相手の笹原だったからだ。おーう、なんてこったい。
「だ、大丈夫ー」
と返事すると、「そっか、ならよかった」と返される。
心臓の鼓動が早い。もちろん、きゃっ、彼の部屋で一晩過ごしちゃった!なんてものではない。
やらかしてしまった、やばいの方である。
また、笹原から声がかかる。
「西口ー、胃に優しいもん作ったから食べるか?」
なんて優しい笹原、こんな二日酔い女に優しいなんて惚れ直す。
とりあえず彼の元へ向かう。
美味しそうなご飯がテーブルの上に並べられている。私が作るご飯より美味しそうだ、こりゃ女子力ですら負けた。
なんだこのチートやろうと思うが、仕方ないここは彼に従おう。
彼の元に行くと、大丈夫か?水飲むか?ご飯食べれる?と優しく聞いてくる。
私はいたたまれなくなってくるが、とりあえず笹原の作ったご飯を食べた。
感想はやはり私の作る料理より美味しかった。
食事が終わり片付けなど手伝おうにも寝てていいよ、と優しく断られてしまう。
片思い相手の家で自分で作るより美味しいご飯を食べて片付けでさえ任せてもらえず、さらには襲われてもいない。女として見られていないと思った私は急用があるとか言って逃げた。
翌日ーー
気まずいが流石に昨日の今日で笹原に会わないだろうと思っていました。
しかし、運命の神様よ。なぜあなたはこんなに私に厳しいのですか。
大学についた途端、笹原と即エンカウントとはどういうことかね?
私はとりあえず回れ右をして来た道を戻ろうとした、が彼が許すはずもなく捕まった。
「これ、忘れ物」
そう言われてしまえば振り返らないという選択肢はなくなる。むしろまた迷惑をかけてしまった。嫌われてしまう、という思いの方が強かった。
仕方なしに忘れ物を受け取るが、見たこともないものだった。
可愛らしいクローバーのチャームがついたネックレスだったのだ。これ、わしのもんやない。
これだからイケメンは、と思ったり思わなかったり。嘘、思いました。
とりあえず私はネックレスの持ち主を探そうと躍起になったが、一週間経っても誰も出てこず。仕方がないので本人に返した。
「笹原、これ私のじゃないから。多分違う子のだと思うんだ。だからさ、返すよ。」
そういうと彼は少し寂しそうな悲しそうな顔をして、そっか、と一言だけ残して去っていった。
なぜ悲しそうな表情をするのかわからなかった。恥ずかしかったのかな?なんて思っちゃったりしちゃったり。
その一週間後、私はまた飲み会に参加した。
今回は飲みすぎないようにと、気をつけたつもりだったが私はまた同じ過ちを繰り返した。
そう、目を覚ましたらまた笹原の家にいたのである。
やっちまったよーう。
今度こそごめんよー。という思いで軽く身支度を整える。次は絶対に酒を飲まないと心に誓って。
「笹原、二回もごめんね?今度から酒は飲まないって誓うから」
「西口、もう起きてきて大丈夫なのか?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう」
「そっか、ならいいんだ」
ニコッと微笑んだ彼はとてもかっこよくて眩しかった。何ですか、その微笑みは!朝から私を殺す気か!
そういえば、と前回から思っていたことをぶつけてみる。
「あ、あのさ、笹原?なんで私のことこんなに世話してくれるの?」
「え?だって西口のこと好きだから」
は?すき?あ、ライクの方か。納得納得。失恋確定かよ。
「ライクの方じゃなくってラブの方だよ」
まて、笹原が私のことを好きになるはずがない。こんな酒癖の悪い女が好きなわけないだろう、きっとこれはドッキリなんだ、うん、そうに違いない。
1人で納得しようと現実逃避をしていた私の唇に温かいものがあたった。
ん?あたった?
焦点を合わせると笹原のドアップが目の前にあった。
は?嘘?なにこれ?夢?そうだきっと夢に違いない。
そう思い込もうとした。
しかし笹原が私の腕を固定して深いキスを落としていく。
息が続かない、そう思った時に解放された。
「俺の本気度わかった?」
なんて言われてしまえば壊れたおもちゃのようにカクカクとうなづくことしかできない。
色っぽい顔でこちらを見られてしまえば顔のすべての熱が集中する。心臓もいつもの倍以上に動いている。
これは、やばい。笹原という沼に堕ちてゆく。
離れなければ。
そう思っても彼は離さない。私の腕を掴みベッドの上に組み敷く。
「ねぇ、西口。君の返事は?まだ俺聞かされてないよ?それなのに俺から逃げるの?」
やばい、彼は惚れてはいけない類の人だったか。
「ねぇ、早く教えてよ」
と熱い吐息とともに耳元に囁いた。
彼の目には情欲の炎がちらついている。
でも、私も彼に惚れている。それにこんなに求められているんだ。それはそれは女としてはとても嬉しい。
「じゃあ、答えるから解放して?」
と少し甘えた声で言う。逃げない?と問う彼に大丈夫だからと微笑む。うへぇ、恥ずかしい。
組み敷かれた形から解放された私は彼の首元に腕を伸ばす。そして彼と同じように耳元で
「私もあなたが好きよ?」
と頑張って吐息いっぱいで囁く。こういうことをしたことがないから小っ恥ずかしいのだ。
彼の顔が見えるように少し移動すると、驚きと歓喜が混じった顔で私を見ていた。
「よかった」
その一言でさえも嬉しい。彼の目が私だけに向いているのも嬉しい。こんなに重い女だったか、とさえ思ってしまう。
そのままの体勢じゃきつかったのでベッドの上に座る。
「ねぇ、笹原はいつから私のことが好きなの?」
うーん、そうだなぁと少し悩んだ後に
「大学の入学式の時に一目惚れしたから大体三年弱くらいかな?」
「そうなんだ」
「うん、後実はさ」
と何やら言いにくそうにごにょごにょとしている。なんだなんだ言ってみろよ、と少し茶化すとじゃあ言うね?怒んないでね?と首を傾げてお願いされる。可愛すぎかよ。なんなんだよ。
「実はさ、前回と今回の飲み会さ、俺がお前のこと酔い潰したんだ」
「は?」
「うん、そんな反応になるよね。前回はこのまま持ち帰ってヤっちゃえば既成事実とかでそのまんま付き合ってくれるんじゃねぇかなって思ってたんだ。だけど心までちゃんと俺色に染めたかったからやめたんだよ」
な、俺って優しいだろ。と言われても、まさか酔わされてたとは。まて、じゃあ今回はなんだ?私は度数低めを飲んでたぞ?
「今回は俺が度数高めのと交換してたんだよ」
わーお、怖ぇ。
「また、介抱とかしたら俺が付け入る隙ができるんじゃって思ってさ」
確信犯ですか、さいですか。
「だからね、俺と恋人になったんだから飲み会には参加しないでね?俺みたいなやつが出ないとも限らないし。それに、俺以外に目移りしないでね?俺、何しちゃうかわかんないから」
あ、やっぱりあかんやつや。危ないやつや。でも惚れた弱み、そんなとこすら愛おしいと思ってしまう。
そこまで言うからに合わせて少し大人ぶって
「なら笹原も目移りしないでね?私だけを見てて?」
とか言ってみたけど、うわ、めちゃんこ恥ずかしい。
「当たり前じゃないか、由美。俺たちはもう恋人なんだから名前で呼んで?」
「は、は、隼人」
「ん?なに?」
自分で呼ばせたくせに、ていうか、めちゃくちゃ恥ずかしい。なんなんだこの羞恥プレイは!!
酒だ!誰か酒を持ってこい!忘れるためには酒だー!!
と、さっき誓ったばかりの飲まない宣言をすぐに破ろうとした。
しかし笹原によってお酒および飲み会に参加禁止令が出された。
それを破るたびに1週間彼の家に監禁された。
そこまでしなくていいでしょー?!!!
酒を飲ませろー!!
ネックレスは首輪代わりにあげようとしたけどあげ方がわからなくて忘れ物ってことにしようとしたら結局返されてしまったって感じです。
その後これ首輪の代わりな?なんて言われながらお揃いのネックレスと指輪を主人公ちゃんは笹原から貰います。