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推理紀行~大和の光陰~

作者: 目賀見勝利

---推理小説「大和の光陰」に寄せて---


小説の巻頭にある『月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり』

は、松尾芭蕉の「奥の細道」序文にある文言である。


私が奈良県の明日香あすか村を訪れたのは、2016年9月26日であった。

その目的は推理小説「大和の光陰」に登場する『石舞台』が『甘樫の丘』から見えるかどうかであった。地図上では視認できる直線上にあるが、小高い丘や樹木の陰になって石舞台が見えない可能性もあったので、現地確認することがこの小旅行の目的の一つであった。

そして、もう一つはキトラ古墳を現地で感じることであった。

『キトラ古墳・四神の館』が開館したばかりの時期でもあった。


近鉄の飛鳥駅前でレンタルバイク(50CCバイク)を借り、

石舞台⇒甘樫の丘⇒飛鳥坐あすかにいます神社⇒安倍文殊院⇒大神おおみわ神社⇒キトラ古墳

を一日で巡った《急ぎ旅》であった。


甘樫丘の展望台から石舞台上の南側4分の3は見えたが、北側4分の1は樹木の陰で見えなかった。

また、石舞台の南端からは甘樫丘の展望台がはっきり見えた。

小説での事件の発生は旅行前に書き上げていたので、内容修正が必要なくなり「ホッ」とした記憶がある。


ところで、甘樫丘には飛鳥時代に天皇を差し置いて国家を専横した蘇我馬子、蘇我蝦夷、蘇我入鹿たちが住む蘇我一族の館邸があった。

645年、乙巳いっしの変で中大兄皇子と藤原(中臣)鎌足の謀略によって蘇我入鹿が暗殺され、蘇我蝦夷も死んで、蘇我一族の館邸はなくなった。その跡地が何に使われたかは不明である。

一方、考古学において『石舞台』は蘇我馬子の墳墓とされるが、『宇宙にいる神様と通信する祭檀』であると謂う霊能者の説もある。『石舞台』は平安時代に発見された時から土が盛られておらず、ひつぎも存在しなかったのがその理由とされている。今となっては、真偽の証拠物品が発見される可能性もないので、どちらの説が正しいのかは不明である。

中大兄皇子が天智天皇となり、その死後、天武天皇が陰陽寮と云う政府機関を設けて、天文観測を行う「占星台」という建築物を何処かに造ったが場所が判明していない。甘樫丘の頂上(現在の甘樫丘展望台)からは地平線が眺められるので天体観測には最適な場所であることを、今回の小旅行で私は確認してきた。

安倍文殊院の境内に平安時代の陰陽寮天文博士『安倍晴明』が星座観測をしたという小高い丘場所があったが、京都(平安京)に居る『安倍晴明』が飛鳥京跡地で天体観測するのにも疑問があるが・・・。


さて、冒頭の文言であるが、

松尾芭蕉は、李白の詩『春夜、桃李の園に宴するの序』の一節にある「それ、天地は万物の逆旅にして、光陰は百代の過客なり。」より『百代』と『過客』の文字を引用したと思われます。

「天地は万物の逆旅」は空間の広がりを表し、「光陰は百代の過客」は時間の経過を表しています。

「空間の広がり」の文言は、空海が唐より持ち帰った『真言密教』の世界観においては「胎蔵界曼荼羅たいぞうかいまんだら」が表す宇宙空間の世界であり、中心にある核から四方八方周辺に向かってエネルギーが放射される絵図が描かれている。「時間の経過」の文言は「金剛界曼荼羅こんごうかいまんだら」の表すところの過去から未来に繋がる時間世界を表現したものであり3×3の9個に仕切られた世界観が右下から反時計まわりに8個進んでから中心の9個目の世界観に到達する絵図が描かれている。

そして、2つの曼荼羅は交差するのです。宇宙空間(胎蔵界曼荼羅)は光陰(金剛界曼荼羅)を逆旅(反時計まわり)して百代(永遠につづく)の過客となるのです。

この「春夜桃李園宴序」と云う詩は李白と云う詩人の発想の創大さをうかがわせます。

「過客」とは永遠に続く「旅人」を意味している。そして「過客」は様々な姿を演じる「旅人」なのである。


松尾芭蕉は「奥の細道」の序文で時間は旅人であると述べることによって、「奥の細道」とは、過去から未来に向かう人間を含む自然界の移り変わりを俳句で表現するために江戸から東北を経て北陸に旅したのであると言いたかったのであろう。


推理小説『大和の光陰』に続く次回作の『咸陽の四鴻啼しこうてい』において、大和朝廷の陰陽師たちが書き残した『須佐乃王復活伝説』を過去から現代にかけて展開させることを考えています。そして、どのようなミステリーになるのだろうか・・・?

                              

        2017年9月23日(秋分の日)  

            目賀見 勝利  

               記



参考文献;

ブラタモリ『高野山と空海』 NHK総合TV 2017年9月16日放送

神から人類への啓示  藤原大士  日新報道 1992年3月 発行 


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