ふざけるなよ馬鹿野郎
お初にお目にかかります。木ノ咲 青と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
目を開けた。
目の前には見たことのない色彩の人たちが見える。
なにか話しているようだが、うるさい音を発しているようにしか聞こえない。
うるさい。彼はどこだろうか。
周りの雑音を無視して横を見る。
しかしそこには彼がいない。
……いない?彼がいないとはどういうことだ。なんで彼がいないんだ。さっきまで横にいただろうに。
辺りを見回す。
キョロキョロと見回していると視界の端に白い束、誰かの白い髪の毛が首を動かす速度に合わせて視界に入る。
老人のような白、しかし若々しさが滲み出るような綺麗な髪。
それが視界の両端に顔にかかる近さで見えている。
まるで自分から生えているかのような近さで。
……そんな、そんなはずはない。自分の髪は黒だ。
彼がいつも褒めてくれる黒く短めの髪。
視界に写っている髪が自分の髪のはずがない。
そう思い、自分の頭に手を伸ばす。
髪の根元からゆっくりと。
さらりとした感触が手に伝わる。
……ああ、なんてことだ。
意識が遠のく。よくある言葉だけで実際には遠のいていないのとは違い、本当に意識が遠のく。
倒れこむ寸前に見えた自分の髪。
白く、長い髪、だった。
この度はお手に取っていただき誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。