スカウト
すぐさま、訓練用仮想空間が開いた。
立会いはセシル国王陛下とデール=アッカー、「ツヴァイのデン」にシェムだった。
勿論、元「第二特別特殊部隊」のメンバーも見学に来た。
勝敗は既に決している、そうマルドゥラは思った。
「で、俺たちの勝敗は?」
「それを今聞くの? オスカー」
「気になるさ。俺たちは別件の賭けをしてたんだから」
「……試合的には『赤』の勝利……でもあなたには負けたわ。あの時あなたが庇わなかったら、『GAME OVER』にはならなくても、数弾被弾したもの」
「ドゥラが乗ってる機体が危ないって分かった瞬間、思わず動いた」
「だから私があなたに負けたって思ってるんじゃない」
「そこ! 痴話喧嘩はあとにしろや。久しぶりにダレル准将の雄姿が見れるんだ」
ビルが呆れたように突っ込みを入れてきた。
「最後まで残っていた自分からすれば、どっちもどっちだ。引き分けでいいだろうが」
そう言ってきたのはアーロンだった。
だが、アーロンの言葉はある意味当たっている。だから、今回は「引き分け」でいいだろう。オスカーと二人、それで納得は出来た。
問題は……今見ているダレルとイーサスの試合だ。
見る間でもない。それくらいダレルは強い。だが、イーサスは諦めないだろう。
それは、皆が知ってしまっているだろう。
イーサス側の無人機体はほとんど残っていない。総てダレルの指示で、ダレル側の無人機体が撃破したのだ。ダレル側で撃たれたのは数えるほどだ。そして完全に撃破されたのはほんの数機。それだけでも力は歴然としている。
『ちっくしょう!』
イーサスが叫んでいる声が聞こえた。
『ここからは一対一でやろうか』
ダレルの声が軽快に響いた。
ダレル側の無人機体の動きが止まった。そして、本当にダレル対イーサスの一騎打ちでの戦いとなった。
たん!
たたん!
双方共に軽快に銃を撃つ音がホールにこだました。
ダレルが最初追い詰められているように見えたが、どう見てもおかしい。おそらくは罠だ。
それが分かるのは、ダレルの下で動いたことがあるからかもしれない。
一瞬で立場が逆転した。
ダレルがイーサスの背後を取ったのだ。
そして、銃を数撃。
試合は、それであっけなく終了した。
「マルドゥラの言ったとおり、指揮官、もしくは副官として申し分の無い男だ」
降りてくるなり、ダレルは楽しそうに言った。
「ただ、若さゆえに詰めが甘い。そして経験が無い。だが、それを上回る精神力がある。
来月より一個隊を君に任せよう。指揮力を存分にあげてくれ」
「何故だ!?」
悔しそうにイーサスが怒鳴った。
「経験の差、だろうね。常に私は人不足の中で指揮をしてきた。だからこそ、どんな方今日でも『負けない』指揮が出来るようになった。
イーサス、それからシェム。戦において『負け』の反対は『勝ち』ではない。逃げることも必要だ。いかに部隊を温存し、『負けずに戦う』かが大事だ。『勝ち』にこだわるな」
「お前くらいだ、ダレル。そんなアドバイスが出てくんのは」
ツヴァイの言葉にダレルは苦笑していた。
「そうかな? だが、これが鉄則だと思えばいい。そうすれば君たちは私以上の指揮官になれる」
オスカーたち三人衆はともかく、メイナードとマルドゥラ……特にマルドゥラにそれを説けない。次代を担う指揮官にこの二人が加われば、頼もしい限りだ。
思わずダレルは楽しそうに笑った。
だから、こう言うものは悪くは無いと。




