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境界線の上  作者: 神無 乃愛
境界線の上
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『……これ、いい機体じゃんか!』

『当然だ、軍の機体だぞ? 俺らがいた孤児院とは違う』

 男二人の馬鹿げた会話。

『やっぱり軍最高か? メイナード』

『当然だ、皇帝陛下と軍あっての……うわっ!?』

『どうした!? メイナード!』

『右方向からの正確な砲撃。私のメインカメラも一瞬でやられた』

 冷静な少女の声が入ってきた。

『僕のも……だ。くそっ! 上から戦闘機まできやがる。ただの仮想空間(ヴァーチャル)じゃない!!』

『大丈……うわっ! 俺もだ!! しかもレーダーまで!』

『……レーダーなんてあった?』

『あったよ!! すっごく高性能なやつ! どうしよう!!』

 とぼけたマルドゥラとメイナードの慌てた声。

『サブカメラだけかよ……。マルドゥラ……、僕が囮になる。戦闘機の位置を全部把握して! そして僕らに教えて!!』

『勿論。上空旋回中のは全てトーマスが撃っちゃって。メイナードは落ち着いたら、東側から言っていくから』

『大丈夫! もう、落ち着いてる』

 すぐさま、二人へマルドゥラが指示しながら己も撃っていく音が聞こえた。

『レーダーがやられて助かったわ。あったら、ピコン、ピコンとうるさいもの』

『それは、マルドゥラだけ!』

 男二人の声がはもっていた。

『他に味方巨体(コア)も戦闘機もなくて助かったな』

『トーマスに同意したかないけど、同意。なんせ、マルドゥラの<()>だけでいけるからね』

『向こうもおかしいと思ってくるはずだ。そこからが勝負だ!』

『トーマス! あれが向こうの指示機のはずよ! 集中砲撃お願い!』

『おっしゃぁ! いっけぇぇぇ!!』

 すぐさま、自分が上空に上がったときだと気がついた。

『メイナード! 北側からも来るわ!! 西側からも!!』

『まじかよ!? とんだ茶番だ!』

 トーマスの怒り狂った声。そして、激しい銃撃戦。

 全部倒し終わるまでに二歩(にぶ)弱。最後に残った機体がメイナード機だった。

「ここまで連携をあっさり取られると、感心するしかありませんな。ザカリー閣下の教え方が変わられたのですか?」

「いや、変わっていない。あの三人だけが特殊だよ」

 やれやれ、そういった感じでザガリー少将が話す。

「まぁ、強いて言えば指示に従わせるのは楽ですな。誰かとのコンビネーションも取りやすい」

 ダレル大佐が自嘲気味に呟いた。

「……それを知らしめるための洗礼なんですが……」

 オスカーの台詞は洗礼に関わった人物たちの代弁でもあった。

「いい経験だと思うしかない。少人数の特殊任務にもってこいの三人だ。これで特化型巨体(コア)をオールBランクまで上げればいい」

「それには、大問題があるんだよ。ダレル」

 ポディシブに何事も捉えようとするダレル大佐に、ザガリー少将が水を差した。

「マルドゥラだが、あの子はレーダーと相性がすこぶる悪い。飛行型は余裕でAランクを取れるだろうが、地下潜行型はどうあがいてもDランクだ」

「……は?」

 地下潜行型においてトップクラスのパイロット、アーロンがあんぐりと口をあけていた。

「そのあたりも含めて、五年前は脱落組だったんだがね。トーマス、メイナードと組むようになってから、可視できる範囲でならレーダーも使えるようになった」

 あまりにもありえなすぎる。

「トーマスも命中確率が上がり、メイナードも射撃速度に満足いく結果を出せるようになった。だから、今年三人とも卒業にありつけたわけだ」

「……異端児……」

 ビルの呟きが、全てを物語っていた。


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