四十四
バークス公国から戻って一ヶ月以上月日は流れた。書物を漁り、訓練をしてテスト飛行をする。正直いつ休みなの? と思うくらいの忙しさである。
休みらしい休みはとして考えられているのが実は「会議」だったりする。第二特別特殊部隊の宿舎、もしくは開発室で週に一度行われる会議だ。時間も二刻位で終わってしまうのが、難点である。
「今月の予定は、バークス公国ヴェルツレン前侯爵が非公式にいらっしゃる」
さらりとセシル殿下が言う。
「訪問予定は一週間。その間に一度エルグス共和国へ足を運ばれるそうだ。クリスティ嬢の墓参りもしたいとの事だ」
「そこに行くのに、私たち第二特別特殊部隊が護衛することになった。ヴェルツレン前侯爵のご要望でね。公国王宮襲撃事件時の動きを考慮してと言われたけど、どこまで本気にしていいかは分からない」
「あとは開発室の見学と『孤児院』の見学、それから城下町見学をご要望されている」
ダレル大佐、セシル殿下、イーユン中佐が次々に発する言葉は、そこにいる全員を凍らせるには十分すぎた。
「我々を危険視しているという事でしょうか?」
「オスカー大尉、私もそう思っている。だって、トーマス准尉のことは知らないはずだし」
他国にまで危険視されるとは思っても見なかった。
「また包帯巻いた方がいいですよね?」
「その方がいい」
トーマスの顔は満場一致で「包帯巻き(別名ミイラ)」に決まった。
「でも、トーマスだけっていうのもおかしいよね」
メイナードのこの一言で、ベティ中尉以下全員ミイラになった。




