三十七
武器輸出関連はあっさりと終わったらしい。おそらくはこちらの機密が欲しかったのだろうが、最初から「最高機密は外す」のを条件にしたせいだろう。そのかわり、その夜の舞踏会にトーマスが指名され出る羽目になった。どうやらエメラダ王女をエスコートして欲しいらしい。
「この顔でやれって言われても……」
「諦めるんだね。何かあってもいいように一人多めに人数を出していたが、それが裏目に出た」
セシル殿下も王家控え室よりも第二特別特殊部隊の控え室の方が気楽と見え、ちょくちょく訪れる。
「おそらくはトーマス准尉の事を知りたいのでは?」
「私もその可能性を否定しない。……エメラルドの瞳だから、向こうは警戒しているだけだろうね」
この瞳の色でからかわれたりもしたが、厄介ごとに巻き込まれると思わなかった。
その日の舞踏会も何とか終了させた。もう、帰りたい。
向こうに名前を教えていないのがせめてもの救いか。
シャン・グリロ帝国側も、エメラダ王女をトーマスがエスコートしたのが面白くなかったらしく、いちゃもんをつけられた。エメラダ王女側も黙っておらず、「皇太子殿下のお子様を連れてきていただけていれば、わたくしとてそんなことをせずに済みましたのに。この方以外わたくしと年齢の合う方がいらっしゃいませんもの」とさらっと言ってのけた。そこまで年齢差を気にすることか? とは思ったが口に出さないでおいた。正直顔に包帯を巻いているので、お偉い様方が気味悪がっていていたたまれない。
「年齢差なんて言われたら、色んなところで年齢離れている人が多いんだけどね」
ただの言い訳だといわんばかりに、セシル殿下が呟いていた。
「実際、バークス公国の皇太子とエメラダ王女も二十歳以上歳が離れておりますね」
ダレル大佐も呆れたように同意してきた。
現、バークス公国国主は色呆け爺と揶揄されている。側室の数はかなり多いらしい。逆に言えば、エメラダ第五王女は「どうでもいい」存在なのだろう。だからこそ人身御供としてシャン・グリロ帝国に渡すのだ。
「とりあえず軍宰相には君たちの事は話しておいた。戻り次第結果が出るんじゃないかな?」
話って……直属の部下にすること? それとも……もっと深いことなのか。
「あ、勿論私の直属の部隊にするってことだよ」
しれっと返された。




