二十七
三日後、マルドゥラは他部隊の男二人と共に任務に就くことになった。普通では有り得ない。おそらくは嫌がらせだろう。しかも、こちらは訓練という名の拷問である。
「准将が絡んでいるな」
「え?」
「マルドゥラを抹殺するつもりかもしれん」
その場にいた全員が凍りつく。
「通常では有り得ない任務だ。しかも隊を離れるなど有り得ない。……こちらは別件の訓練で動けないし、どうしたものか」
悠長に出来るものではない。しかも、マルドゥラとは連絡が取れないのだ。ベティ少尉に連絡を頼もうとしても、あえて時間がずらされ会えないのだ。
「任務地と内容を詳しく調べます」
「イーユン、頼む。あとは巨体に変な仕掛けをされていないことを祈るしかない」
「……されても、大丈夫です。ブラックボックスが……」
「そこに仕掛けをされたら?」
それを言われてしまえば、どうしようもない。
そして過酷な訓練が幕を開けた。
「くっそぉ。マルドゥラと話が出来ないじゃんか」
わめくメイナードをトーマスは一瞥した。
「そのつもりなんだから、仕方がない……あんまりやりたくないことするけど、どうする?」
「何だよ」
「壁、よじ登って、あのグライダーで飛ぶ」
メイナードが絶句したのが分かった。マルドゥラの任務内容は分かった。あとはどうやって防ぐかという段階だが、階級ごとの部屋では密談すら難しい。
「……やる。あの時マルドゥラが助けてくれなかったら、俺は死んでた。マルドゥラがいたから、俺は卒業できた」
「なら話は早い。行くぞ」
外に誰もいないことを確認しつつ、窓を開ける。普段であれば、マルドゥラがやる仕事だ。なにぶん、あの目のよさは半端ない。
「トーマス、行くぞ」
「何やつ!!」
「やべ! 見つかった」
「上に行くしかないだろ!!」
衛兵の怒声に二人揃って驚いたが、すぐに気を取り直した。
「ちょ……あなたたち! 何やって……」
気がついたリディア准尉も無視……と思ったが身体が反射的に動いた。気がついたら、リディア准尉に蹴りを入れて沈めていた。
「何やってんだよ、トーマス」
「悪い。日頃の恨みが……」
「分からなくはないけど、今やることじゃないだろ?」
普段呆れるのはトーマスの役目だが、今回ばかりは逆だった。
「どうせやるなら、俺の分も入れとけよ」
そっちか……。
「遅いわよ!」
壁伝いに何とか屋上までたどり着いた二人に、聞き覚えのある女性の怒鳴り声が聞こえた。
「全く、世話の焼ける部下たちね。さっさと行く! こちらは私たちで何とかするから」
「ベティ少尉! 感謝します」
「感謝よりもマルドゥラ准尉を連れて帰って来なさい! ただでさえ女気のない部隊の女の子なんだから!」
言うなり、銃を乱発させていた。
「メイナード、行くぞ!」
「おうよ!」
二人はグライダーでふわりと浮かび上がった。




