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境界線の上  作者: 神無 乃愛
境界線の上

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27/74

二十七


 三日後、マルドゥラは他部隊の男二人と共に任務に就くことになった。普通では有り得ない。おそらくは嫌がらせだろう。しかも、こちらは訓練という名の拷問である。

「准将が絡んでいるな」

「え?」

「マルドゥラを抹殺するつもりかもしれん」

 その場にいた全員が凍りつく。

「通常では有り得ない任務だ。しかも隊を離れるなど有り得ない。……こちらは別件の訓練で動けないし、どうしたものか」

 悠長に出来るものではない。しかも、マルドゥラとは連絡が取れないのだ。ベティ少尉に連絡を頼もうとしても、あえて時間がずらされ会えないのだ。

「任務地と内容を詳しく調べます」

「イーユン、頼む。あとは巨体(コア)に変な仕掛けをされていないことを祈るしかない」

「……されても、大丈夫です。ブラックボックスが……」

「そこに仕掛けをされたら?」

 それを言われてしまえば、どうしようもない。


 そして過酷な訓練が幕を開けた。



「くっそぉ。マルドゥラと話が出来ないじゃんか」

 わめくメイナードをトーマスは一瞥した。

「そのつもりなんだから、仕方がない……あんまりやりたくないことするけど、どうする?」

「何だよ」

「壁、よじ登って、あのグライダーで飛ぶ」

 メイナードが絶句したのが分かった。マルドゥラの任務内容は分かった。あとはどうやって防ぐかという段階だが、階級ごとの部屋では密談すら難しい。

「……やる。あの時マルドゥラが助けてくれなかったら、俺は死んでた。マルドゥラがいたから、俺は卒業できた」

「なら話は早い。行くぞ」

 外に誰もいないことを確認しつつ、窓を開ける。普段であれば、マルドゥラがやる仕事だ。なにぶん、あの目のよさは半端ない。

「トーマス、行くぞ」

「何やつ!!」

「やべ! 見つかった」

「上に行くしかないだろ!!」

 衛兵の怒声に二人揃って驚いたが、すぐに気を取り直した。

「ちょ……あなたたち! 何やって……」

 気がついたリディア准尉も無視……と思ったが身体が反射的に動いた。気がついたら、リディア准尉に蹴りを入れて沈めていた。

「何やってんだよ、トーマス」

「悪い。日頃の恨みが……」

「分からなくはないけど、今やることじゃないだろ?」

 普段呆れるのはトーマスの役目だが、今回ばかりは逆だった。

「どうせやるなら、俺の分も入れとけよ」

 そっちか……。

「遅いわよ!」

 壁伝いに何とか屋上までたどり着いた二人に、聞き覚えのある女性の怒鳴り声が聞こえた。

「全く、世話の焼ける部下たちね。さっさと行く! こちらは私たちで何とかするから」

「ベティ少尉! 感謝します」

「感謝よりもマルドゥラ准尉を連れて帰って来なさい! ただでさえ女気のない部隊の女の子なんだから!」

 言うなり、銃を乱発させていた。

「メイナード、行くぞ!」

「おうよ!」

 二人はグライダーでふわりと浮かび上がった。


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