十一
「とりあえず、戦闘機の他に巨体の操縦も君たちの任務だ」
もう、こうなったら気を取り直して座学に集中するしかない。
「巨体は四つに分別される。トーマス、答えたまえ」
「はい。標準タイプ、地下潜行型タイプ、潜水タイプ、飛行タイプの四つです」
「その通り。では、この中で一番操縦が難しいのは?」
続けざまに質問する。
「えっと……飛行、タイプですか?」
「違う、メイナード」
「潜水タイプでしょうか?」
「違う、マルドゥラ」
「地下潜行型タイプでしょうか?」
「違う!」
こいつら、絶対自分が苦手としているやつを言ってやがる!
「ベティ少尉」
「答えは、標準タイプ。通称『人型巨体』。三種全ての簡単な機能を備えている、基本型。これがしっかり操縦できないと、他のは無理」
「正解」
確か、孤児院の座学でもやっているはずだ。そしてベティ少尉の答えこそ、孤児院で教える「模範解答」である。
「あなたたち、一応三種の汎用型は仮想空間で乗っていたでしょうけど、実践は違うわよ。とりあえず、メイン、サブ、レーダー、どれをやられても致命傷になりかねないの。……マルドゥラ曹長? 不満がおありな様だけど、レーダーくらいしっかり使って頂戴ね」
「とりあえず午後からオスカー、アーロン両大尉とビル中尉に頼んである。ペイント弾による模擬試合だ。見届け役は小生とベティ少尉」
とりあえず、本気でその精神構造を叩き潰す! 今回はメインカメラ等は壊れないが。
「イーユン中佐、失礼します」
そこへ、オスカー、アーロン、ビルの三人が入ってきた。
「今日のところは仮想空間へ変更になりました。互いに三機の有人巨体と十数機の無人巨体、それから二十機の無人戦闘機。指示は三人それぞれが出せます。それで一時(約二時間)互いに戦闘をする、そして残機が多い方が勝ち。勿論全滅、もしくは指揮官機が撃墜された場合強制終了となります」
「……オスカー大尉」
ベティの肩が震えていた。
「どうしてそうなるんですかっ! お話が違うじゃ……」
「ダレル大佐のやり方らしい」
何か、わけがあるとみた。
『で、どうする?』
トーマスが二人に訊ねた。
『この間のように、カメラとか潰されるのかしら?』
『それも懸念しておいた方がよさそうな方々だな』
何か、引っかかる。
『これは僕の想像だ。おそらくこちらの連携を崩したいんじゃないか? あとはレーダー等による敵索と、味方への指示と援護』
『なるほど……さすが座学一位』
メイナードが茶化したように褒めてきた。
『敵と味方の区別ってつくのかしら?』
『つかないと、戦闘できない……で、どうなんですか?ベティ少尉』
『……あなたたち、本当に腹が立つわね。リディア准尉があなたたちに突っかかる気持ちもよく分かったわ。トーマス曹長の言う通り、敵味方分かるようになっているわ。あ、ちなみにあなたたちの会話は、帝国軍の名の下に誓ってあちらには聞こえてないから。
そうね……ここからは一時回線を双方共に開きます。オスカー大尉、アーロン大尉、ビル中尉、あなた方とその味方機は全て“青”です。そして、トーマス、メイナード、マルドゥラ、あなた方とその味方機全て“赤”よ。ここで回線を閉じます。
分かったわね? 私からは以上。あとは勝手にやりなさい』
模擬試合開始である。
『で、どうする?』
『赤とか青とか言ってたけど、腕の腕章がそうなだけよ』
トーマスの問いに、マルドゥラが呆れたように言ってきた。
『その状態で敵味方を区別してやれってこと? 無茶苦茶だ』
『レーダーでも味方機は簡易で分かるようになってる……これ、絶対嫌がらせだよ』
『トーマス、いつもの通りいきましょう』
『賛成!』
トーマスは思わずメイナードと一緒に叫んだ。
当然、こちらの負けで終わった。
指揮を誰にするか、それは最初に出てくる問題だが、トーマスたちはそれぞれが動き、適当に指示をしていた。それが敗因ではあるが、半刻もオスカー組に対抗できたのもそれが要因と言えた。
互いが互いの弱点を補う、そんなことが孤児院組で初めてなされたのだ。
「オスカー大尉、どうした?」
「いえ……あの三人の考えも最もかな、と」
その答えにベティ少尉が不思議そうな顔をしていた。
「イーユン中佐にそれぞれが苦手な巨体を挙げていたでしょう? あれが三人の正解なのだろうなと。基礎は恐ろしいほどに出来ています。おそらく自分たち三人とも標準型で一対一でやったのなら、どう転ぶか分かりません。明日からでも汎用型巨体の操縦訓練に入れます」
このあと、ザガリー少将から恐ろしい話を聞く。あの三人は標準型操縦はここ数年でもトップクラスだと。方法に驚いた。あえて脱落、もしくは補習組に入る。そして訓練用巨体の掃除を率先してやり、その後孤児院組が嫌がる「開発部」へ手伝いに行くのだ。向こうとしては、一介の兵士見習いとはいえ意見が聞けるため、喜んで開発機に乗せていたらしい。
これは本日、開発部の責任者から直接聞いた話として持ってきた。「最近あの可愛い三人組見かけませんけど、落ちこぼれてるんなら、開発部にくださいよ。本当に操縦桿握らせたら、そこら辺の兵士じゃ話になりません」とまで言われたらしい。勿論、戦闘機等も操縦していたというから驚きだったらしい。
「さすがの私も開いた口が塞がらないね。……本当の意味での『規格外』だよ」
「自分たちは五年前からです」
そう言うのは、トーマスだ。
「マルドゥラに誘われました。『補習組にまわれ』って。で、開発部に連れて行ってもらいました。なぜそんなことをしているのか、理由は教えてもらえませんでした」
マルドゥラは命令されても「答えられません」としか言わなかった。ここに「適当な場所」と答えた理由があるのかもしれない。




