ヒロインというのは天然でかつあざといで決まるという話
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「はあ・・・はあ・・・やべ。マジやべ」
あたしこと美馬 静香は遅刻寸前に追いつめられていた。
一限の授業は数学の渡部。遅刻するとマジめんどい。
説教だけじゃ飽き足らずレポートの提出もやらされる。
「遅刻だよ。マジで・・・」
朝は食パンだけを咥え、一生懸命に走るが学校は未だ見えてこない。
今日はホント最悪。
「そこまでよ。美馬さん!」
「はあ?」
あたしの前に現れたのは同級生の江口 流子だった。
江口の口にはなぜかフランスパンが咥えられていた。
江口・・・食べにくいしょ・・・それ。
「私こそ・・・私こそが真のヒロインよ!」
はあ?何言ってんし、マジ意味わかんないし。
「邪魔だし。通せし」
あたしが勢いよく蹴り上げると江口は見事な運動神経で攻撃をさけた。
地味に運動神経があるので少し驚いた。
「縞パン・・・だと・・・」
ちゃっかりとあたしの下着の色を当てられる。
恥ずかしいと顔に熱が上がるのを感じながら、
「ちょ!?どこみてんだ!」
「あり得ない。この私の戦闘力を遥かに上回る縞パンだと。ヒロイン力は彼女の方が強いというのか」
フランスパンを咥えながら意味不明なことを言う江口。
これ、分かんないのあたしだけ?
「ふっ。ならば、私も本気を出すとしよう」
何か本気でめんどくさくなってきたし。
「とりあえず、遅刻するから通させてもらうし」
あたしは強行突破で突き進む。
すると、横から人の気配がした。と同時にそこから手が伸びてくる。
「待つっす」
あたしは何とか反応良く、さけることに成功した。
なんなのよ。もう。
今度現れたのは同じく同級生の柴田 楓だった。
「楓!?手出しは無用と言ったはずです」
棒読み100パーセントの口振りで江口は言う。絶対待ってたよね、あんた。
「いいえ。お姉さま。楓は逃げないッス。一緒に戦うっす」
あんたら姉妹じゃないし。
いいから、学校に行かせろし。
「お姉さま。楓の口を見てくださいっす」
「おお。楓。その武器は・・・」
柴田が口に咥えていたのはフランスパン。
フランスパンはフランスパンでもそれはガーリックトースト。
この人らはフランスパンの化身か何かか?
「くらえ、美馬さん」
と柴田はガーリックトーストで殴りつけてくる。
援護のように後ろからも江口がフランスパンで攻撃。
「食べ物で遊んじゃいけないって両親から教わらなかったの?あんた達は」
「二人はキュアキュアだからいいんです」
「そうっすそうっす」
一体何の説明だかあたしには理解できない。
いや、もう理解もしたくなかった。ホントにマジで。
「このままじゃ、冗談にならないし」
そろそろヤバい時間帯に突入しそう。
走っても、間に合わなくなりそうだった。
あたしは何かなんかないもんかとキョロキョロと見渡す。そこには同級生の如月 剛がいた。
誰かの力を借りるなんてあたしにとっては癪だったが、今は事情が事情だ。
「おい、如月。聞こえてるか。少し手伝ってくれ」
あたしの声は届いたそうでこちらへ振り向く。
そして、一言。
「ふひ・・・ふひひ・・・ふひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」
駄目だこりゃ。
柴田だけでなく江口でさえも唖然としている。
だがこれはチャンスだ。
「よしっ」
あたしは江口と柴田の間を通り抜け、走り出す。
「しまった」
「抜かれたっす」
あたしはようやく、学校に向かうことができる。
助かっ・・・。
キーンコーンカーンコーン。
一限の始まりのチャイムが聞こえた。
あたしの頭の中真っ白。
「良かったね。仲間だよ美馬さん」
「一緒に遅刻っす」
「ふひひ・・・」
とあたしの周りに三人が集まる。そして、
「お、おまえらああああああああああぁぁぁあああああぁぁああああ!!!」
この後、あたしを含め四人は渡部の説教をうけ、レポート提出の命が下った。
パンの方はあたしが無理やり江口に全部食わせた。
今日はホントに最悪な日だった。ノイローゼになりそう。
次回は最終回になる予定です。




