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微妙につながりのある話

乙女とマッチョとヴェル○ース○リジナル

マッチョに投げ落とされる話(http://ncode.syosetu.com/n5215bv/)、召喚の間の番人(http://ncode.syosetu.com/n0885by/) と微妙にリンクしてます。

私が彼に出会ったのは雷鳴轟く嵐の夜…のようなドラマティックな日ではなく、冬の寒さも和らぎだした麗らかな春先のことでした。

当時私は16歳、そろそろ結婚を意識してもよい年頃ではあったが、私はまだ少女の気分で実家の花屋の手伝いをしながら毎日をのどかに暮らしていました。

その日私はポリーシャという薄紫の花をとりに草原へと出かけました。

花は家にある畑や温室の他、街の外に出て野草をとってくることも多かったのです。

ポリーシャは特別目立つ花ではないのですが、淡い色と同じく匂いも薄いのでブーケにする時にはとても重宝いたします…と、まぁそんなことはさておき、私はそこで“彼”と出会ったのです。


花畑でうずくまってウォンウォンと泣いている男に。


ポリーシャ咲き乱れる草原のどまんなかで、たくましく鍛えられた体を隠すことなく晒した半裸の男がウォンウォン泣いている…。

その姿をみた瞬間、私の胸は否応なく高鳴りました。

…いえ、実際そのような光景を目にしたら、誰の心臓だってドキドキと鼓動を高めるに違いありません。

しかし私は…。花も恥じらう16だった私にとってはそれは恋の高鳴りに違いありませんでした。

そう、私は一瞬で…それこそ雷に打たれたように恋に落とされてしまったのです。

私の目はまるで魚眼レンズのように彼だけが大きくはっきりと見え、その他が急激にぼやけて曖昧になっていきました。


私が近寄ると、うずくまっていた彼はゆっくりと顔を上げました。

彼は一言でいうならばとても大きな人でした。

日に良くやけた健康的な肌。その下には隆々とした筋肉がついており、それを誇るかのように上半身には何も身につけず、下半身には黒い大胆すぎるブーメランパンツ。足には白いヒモつきの薄っぺらい黒長靴を履いていました。

そしてなによりも特徴的なのはその頭です。

鍛えあげられた体の上、私の腰よりも太そうな首に支えられた頭には真っ黒なマスクをつけていたのです。

マスクには口からアゴにかけては穴があいておりましたが、ほかはぴっちりと頭に張り付いていて顔立ちなどはわかりません。

目の周りも白いメッシュになっていて、彼からは外が見えるようですが、私からは彼の目は見ることはできませんでした。

しかし…初恋すらまだだった私にとって、そんなことは物の数ではありません。

私にとって彼はまさに運命でした。


それから私は一体どうしたでしょう。

恥ずかしながら正確には覚えておりません。本当に私ときたら取り乱してしまっていたのです。

ただ、花を摘むためにもっていたかごを放り出し、彼の手をとってともに花屋の実家に飛んで帰ったのは覚えています。

黒いマスクに上半身裸、ブーメランパンツに黒い長靴の筋肉隆々の大男は、田舎ではさぞ目立ったことと思います。

今でも当時のことを思い出して「どこの山男をひろってきたのかとおもったよ」とか「ばーちゃんが、人間の皮を被ったクマが出た…と腰を抜かしてた」とか言われたりもします。

…と、そんなこんなで、私は彼を実家へと連れて行きました。

私の実家は何度かいいましたが花屋です。父と母、それから新婚の兄夫婦が手伝ってくれています。

私が彼を連れかえった時には4人が全員揃っていました。

彼らは一様に私を…いえ、彼を見て作業をしていた手をとめ、口をあんぐりと開けました。

母は剪定バサミを落として、父は中腰でバケツを持ち上げようとした格好のまま、兄はトルキアの花をバラバラと落としながら、義理の姉は兄から花を受け取ろうとした姿勢のまま…。

その間の抜けた家族の姿を見て、ひどく腹立たしい気持ちになったのを覚えています。

私は『彼』に私の家族は阿呆だとは思われたくなかったのです。

私は動きを止めた家族を睨んだ後、慌てて彼の様子を窺いました。…しかし、不安に思う必要など全くなかったのです。

なぜなら彼はとても広い心の持ち主でしたので、間の抜けた家族にも動揺する様子をみせずまっすぐに立っていたのですから。

そんな彼に私がますますのめり込んでいったのは言うまでもありません。

私は自分の頬にポッと火が灯るのを感じました。


その後の展開は…いえ、その後の展開"も"非常に早かったように思います。

私は家族に向かい彼と結婚を宣言すると、いまだぼんやりと突っ立っているだけの四人を放っておいて近所の人や同じく近所に住む親戚達に結婚の報告をし、そして翌日にはさっさと式をあげ、その日の夜には昨年身罷った祖父母の家を二人の愛の巣として移り住んだのです。


若い性の暴走とでもいいましょうか。

ふふふ。

初めての恋は甘く、唐突で、そして情熱的で…

こんな素晴らしい恋ができた私は、きっと世界でも特別な存在なのではないかと感じました。


今では私も素敵な旦那様と可愛い三人の息子を持つお母さん。

私が彼らに季節ごとに作ってあげるのはもちろんマスクとブーメランパンツ。

なぜなら彼らもまた私にとっての特別な存在だからです。

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