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RPG風の世界で、色々みなさん頑張ってる物語

Dragon smith  -”呪われました”の3作目-

作者: 茶屋ノ壽

 巨大な両手です。指の数は、双方とも5本、皮膚は黒い鱗に覆われて、先端には同じく黒い鋭い爪が付いています。その両手の間には、豆粒のような大きさの黒い”水晶”が浮かんでいます。そしてその”水晶”の周囲に、淡い黒の文様が、浮かび、”水晶”を包みます。

 ポン、という気の抜けるような音とともに、その”水晶”が煙の中へ消え、代わりに”金属の塊”がそこに現れます。

 パリッと音がします。”金属の塊”に紫色の雷が走り、まとわりつきます。そして、ぐにぐにとその姿が変わっていきます。瞬く間にそれは、一丁の”拳銃”へと変化しました。

「おおっ、すごいですね、師匠!」可愛らしい女の子の声がします。

「うん、”鍛冶屋”の親父さんの腕は、いつ見ても素晴らしいな」隣に腕組みをして立つ、少女に師匠と呼ばれた、小柄な青年も感心したように言います。

「いやーそれほどでもないですよ」謙遜した声は彼等の遥か上方から聞こえてきます。その声は、少女と師匠が見上げて、彼等の身長の20倍以上、上にある、大きな、鋭い牙の生えた、これまた黒い口から響いていました。そう、この”鍛冶屋”の親父さんはドラゴン(Dragon)の人なのでした。

 名前は”ヤミ”さんと言います。今年で10万と38歳で、現在、一緒に卵を温めてくれる、可愛らしいお嫁さんを募集しているそうです。


 少女の名前はシルフィと言います。とある”呪い”にかかって、色々あって死にかけたところを、師匠の青年、名前はビリーと言います、に拾われて、弟子になりました。今は、ビリー師匠の本拠地である”お山”で”銃”の修行中です。

 今回、”お山”に住む”鍛冶屋”のヤミさんに、彼女用の”拳銃”など装備一式を作ってもらおうということになって、訪れたのでした。シルフィは最初にヤミさんとあった時、その大きさにびっくりしましたが、すぐに慣れてしまいました。(彼女の神経がずぶといというのもありますが、いわゆる”大物”には既に慣れているのです……ビリーと一緒の”狩り”で)

 ”鍛冶屋”さん本人の性格もおとなしくて気さくなお兄さんというところでしたので、シルフィさんとヤミさんは、少し彼の声の音量に、気をつける程度の問題があるくらいで、楽しく会話する仲になりました。


「最初は、とうとう私を差し置いて、嫁さんを連れてきたのかと、殺気立ったけどね」とヤミさん

「ははは、子供は趣味じゃないな、というか、顔にもう一つアナ増やすか、あぁ~!」ねめつけるビリーさんです

「……ええと、ふつつか者ですがよろしくお願いします?」見た目10歳くらいの少女の、シルフィが首をかしげながら言います

「犯罪だな」

「いや、シルフィそれ挨拶が違うからな、それからヤミ、あとで表に出ろ」


「払いはいつも通りでいいな?」ビリーはヤミに言います。ヤミは巨体をひねり、住居と仕事場を兼ねている巨大な洞窟の奥へ、長い尻尾を宙で振りながら、二足歩行で歩き出します。その巨体にしては、驚くほど音がしません。

「おう、在庫を確認するが、”水晶”はかなり減っていたから助かる。特に高いレベルの”怪物”のが少なくなっていたからな。ビリーが旅にでるとこうなるから困るんだ」洞窟の壁は、自然なものに手を加えて作ったような、平なものです。そして、その、壁や天井自体が光源となって、周囲を照らしています。

「ヤミさん自身では”狩り”をなさらないのですか?」シルフィが尋ねます。

「出来ないことはないんだが……この身体だと”怪物”を”狩る”時に地形が変わってしまうのですよ、お嬢さん」確かに、全高が平均的な人の20倍以上、全長が、長い尻尾を含めて、150歩を越える巨体で、”怪物”を”狩る”となると、これはまあ、大惨事を引き起こしかねません。

「はっ、これだから太っちょは!」笑っているのはビリーです。

「私はデブじゃない!ちょっと長く生きて、ずっと成長しているだけだ!」阿吽の呼吸で返事をしているヤミさんです。


***


「さて、防具の方も作っておくかな?」色とりどりの水晶を作業台がわりの岩舞台に置いたドラゴンの鍛冶屋のヤミさんは言いました。

「よろしくお願いします」ぺこりと同じく岩舞台の上にちょこんと立つ、”呪われ娘”のシルフィさんです。

「女の子だから、可愛いほうがいいよね」と言いながらヤミさんは、”怪物”が倒された時に手に入る各種”水晶”を、”スキル(skill)”という特殊な能力で素材に変化させていきます。それは妙に迫力のある”皮”や、聖なるという感じの、真っ白い”布”であったり、奇麗に七色に光る”糸”であったりしました。続いて、それらの素材が光り輝く宙に浮かぶ文様に包まれます、防具を作成するための”スキル”です。

 その光りの文様は、次第に複雑さを増していき、 素材と、少女を包み込んでいきます。ひときわ光りを増し、完全に少女の身体が光りに包まれます、そして、光りがいくつかの部品に別れ、少女の華奢な身体にまとわりつきます。

 光りが消えると、そこには……


 短い丈のスカートです。下着が見えそうで見えない計算された、あざとさを感じます。

 淡いピンクを基調とした、フリル満載のシャツ、ちなみに少女の白いお腹とおへそが見えます。

 薄い胸をフリルで増量し、しかし申し訳程度に胸を隠すようなデザインのベストです。

 銀色の髪の毛を上の方でまとめて、うなじを見せる感じで、大きなリボンでまとめています。

 ハートをモチーフとした飾りが付いたチョーカーが細い首に巻かれています。

 なぜだか、うっすら化粧すらしているようです。


「どうでしょう?」岩舞台に置いてある全身が写せる鏡で少女に姿を確認させます、同時に軽快な機会音(パシャパシャという音です)とともに、閃光が大胆な格好になった少女に浴びせられています。どうやら、映像を記録する”スキル”かもしくは”道具(item)”を使用しているようです。


 轟音、とともに大きなドラゴンの顔に強めの魔法の弾丸が打ち込まれます。

「たいがいにせんと、撃つぞこら!」大ぶりの”拳銃”を片手にビリー青年がいいます。銃口からは煙が上がっています。

「撃ってから言ったね!痛いんだぞそれ!」”レベル”の高い”怪物”でも、消し飛ばされるほどの弾丸を受けて、痛いくらいで済んでいるドラゴンのヤミさんは、頭をふりながらビリーの方を見ます。

 そこには、怒りの表情で、次弾に大きな魔力を充填しているビリーさんがいました。

「ちょっと、それはシャレにならないから!」

「いっぺん消え去ってみるか?この××野郎!」汚い言葉ですね。

「師匠……、ちょっと恥ずかしいです」ぺたりと座る、露出過多の少女、角度的に色々ヤバい絵面ですが、危ないところは見えない匠?の衣装です。

 パシャパシャとドラゴンの鍛冶屋さんの、映像記録装置が全方位から、フル稼働しました。

 そして、そんなシルフィさんを見た、ビリーの顔が赤くなります。

「……やっぱり君、ロリコン(幼女趣味)?」そんなビリーさんを見た、ヤミさんがぶやきます


 次の瞬間、広めの洞窟では、無言で撃ち放たれる弾丸の山を、必死になって防ぐ巨体のドラゴンさんがいました。


 衣装……じゃなかったですね、防具は結局その後、作り直されました。青い染料で染められて、各所にポケットがあり、鋲打された長いズボン(デザインはジーンズです)に、白い長袖のシャツ、茶色い革製のベストに、幅広の帽子テンガロンハットです。師匠とお揃いの防具で、シルフィも満足そうです。

「レベルの高い”水晶”からの素材を使用しているから、かなりの防御力……生命障壁の減少単位もかなり低くなっています。自動的に汚れの洗浄と、少々の傷なら時間で修復するように細工もしてあるからね。だけど一応予備として、あと2着ほど作っておきました。微妙にデザインは変えてあるから、気分で着替えてみるのもいいね」と、説明してくれます。

「では、支払いは、いつものこれで」ざらざらと、高レベルの”水晶”を袋から出してみせるビリーさんです。

「毎度ありがとう御座います」おそらくニコニコと笑いながら、受け取るヤミさん。見えない腕で宙に”水晶”を浮かして、収納箱へと入れていきます。

「それにしても、たいがい大量の”水晶”を消費しているようだけど、何をいつも作っているんだ?」ビリーさんが不思議そうに尋ねます。

「秘密だよ、ってほどでもないんだけどね?知りたい?」

「いや別に……、ただ、素材で言えば、城が建つくらいの量を作れるほど、俺からだけでも受け取っていて、まだ足りないというのが、気になるというか、不安?な感じなだけだな、なんというか、ろくでもないことをしているのではないか?という……」

「ぐふふ、じゃあ、今日は、可愛いお客さんもいるし、サービスで見せてあげるよ、最近私が何をつくっているのか!」

 あー、なんか嫌な予感がするなーと思いながら、ビリーはうなずきます。シルフィさんは、少しわくわくしているようです。


***


 ドラゴンの巨体、その頭にビリーとシルフィは乗せられて、移動します。地下深くへ、傾斜にそって行きました。鍋一杯の水がお湯になるほどの時間が経ち、たどり着いたのは、広大な地下空間の上辺部です。ちょうど、広い洞窟を見下ろすような位置に三人は立ちました。

 明かりをつけるね、とヤミさんは言い、何事か動作をします。すると、薄暗かった広大な地下空間が光りに照らされます。そこには、


 巨大な建造物が、鎮座していました。といいますか、構造物というよりは、ちょっとした大きさの都市が、広大な地下空間に広がっています。


「全長は、人が普通に歩いて、半日はかかるほど、全幅はその半分から、3分の2、動力は”波動エンジン”が、17機、完全循環型で、密閉も完璧な、大宇宙船、”竜の箱船号”(名称は仮)だよ!すごいだろう!!」自信満々で紹介するドラゴンの鍛冶屋の、ヤミさんです。

「あー、予想していたより頭痛い」ビリーは、しかし爆笑しながら言っています

 シルフィさんはほえーという、顔をしています。純粋に驚き、そのドラゴンさんの、作成能力に賞賛の眼差しを向けています。

「というか、なんだその”宇宙船”というのは?」ビリーさんが尋ねます。

「つまりこれは、空を飛び、星の海を航海する船さ!」胸をはるヤミさんです。

「私の持っている”道具(item)”の”異世界映像映写機”で見た、映像にインスパイアされましたのですよ。ここ100年くらいはこれをコツコツ作っているんだ。特にあの映像作品で見た、”波動エンジン”には、かなり心を動かされてねー。全力で再現してみました!」たぶん超いい笑顔なんだろうなーという表情で話すヤミさんです。

「すごいです、これ空を飛びますか!」シルフィさんは感動の声を上げます。そして、ゆっくりと周囲を見渡します。

「そうだよ、すごいでしょう。完成まではもう少しだけど、エンジンの試運転は完了していて、今は低出力で回しているところなんだ。構造体としては完成しているから、もう少しで空を飛ばせるよ、そのときには是非に招待致しましょう」嬉々として語るヤミさんです。

 シルフィさんは、その話しを聞きながら今度は天井を見上げます。そして、”大宇宙船”へとまた視線を向けます。で首をかしげてドラゴンの鍛冶屋さんへ、尋ねました。

「ええと、どうやってこのお船、お外にだすのでしょう?」


 ヤミさんが固まりました。は虫類っぽい巨体全身に、嫌な汗をだらだらと流します。

 次に頭を抱えました。

 どうやら、どうやって、外にだすのかは、考えていなかったようです。

 ビリーは指をさして笑っています。

 シルフィさんはよくわからなくて、ニコニコと笑っています。


 世界は、どうやらまだ平和なようです

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